2007年06月
2007年06月30日
『ウォールストリートのスノーマン』
ダン・レインゴールド/ジェニファー・レインゴールド著
坂本 美智子訳 2007年6月22日発行 2310円(税込み)
ウォールストリートのスノーマン―トップアナリストが見た虚像と現実
しばらく前にご紹介すると書いた本ですが、内容が濃くボリュームがあるため、読了するのにしばらく時間がかかってしまいました。
出版社はオープンナレッジという会社で、出版事業についてはまだ多くの書籍を出していませんが、以前ご紹介した『中国ビジネス開花記』や本書からすると、しっかりした内容のある本を厳選して翻訳出版する方針のようです。
著者は、14年間にわたり複数の金融機関において通信業界のアナリストとして活躍されていました。アナリストランキングでも、毎年のように上位だったようです。90年代の通信業界の成長期やインターネットバブル、ワールドコムの破綻の時期をはさむ時期に働いており、本書の内容はその頃のアナリストとしての視点から業界の事情について書かれています。
当時の通信業界のM&Aなどについて詳しく書かれており、急成長のためかなり無理がかかっていたということがわかるのですが、業界における資本市場の流れができていたということもわかり、ワールドコムの問題なども起こるべくして起こったということがわかります。
今後日本でも活発になってくると思われる、外資系企業の転職や給与の交渉の実際などについても詳しく書かれており、そちらの方が読み物としては面白いかもしれません。
本書に登場する人々はさまざまですが、みなに共通するのは、それぞれが個々人の利益を追求しているということです。この方式で資本市場が機能するのでしょうが、数年前のワールドコムの問題などを考えると、やはりベストの方法であるとは思われません。
問題を起こしながら修正していくということになるのでしょうが、やはり資本主義は根底で人間の欲望を肯定する制度であるため、人の欲望から生じる問題を完全になくそうと考えること自体に自己矛盾があるのかもしれません。
2007年06月29日
『伝説のホテルマン「おもてなし」の極意』
加藤 健二著 2007年5月25日 756円(税込)
アスキー新書の本です。著者は、東京ヒルトンホテル(現キャピトル東急ホテル)で40年間以上にわたり接客の仕事をされていた方です。
政治家、実業家、芸能人などさまざまな各界著名人とのホテル滞在時における交流のエピソードが、ホテルマンとしての守秘義務をおかさない程度に出てきます。ビートルズ、マイケル・ジャクソン、ビル・ゲイツ、竹下元総理などそうそうたる顔ぶれです。
外国人ビジネスマンに「あなたはマジシャンですか?」と言われたほど、サービスの融通を利かせていました。透析をしながら仕事をするなど、人生を掛けてるといっていいほどサービスに打ち込まれたようです。
著者の成功の理由としては、誠心誠意サービスに徹したと言うことはもちろんあると思うのですが、やはり、東京ヒルトンホテルという一流ホテルに、最初から就職されていたということがあるように思います。
一流ホテルはホテル側と利用客のあいだで、価値の高いやりとりが行われる場です。ホテル側が高い価値を提供すれば、利用客もそれに答えてくれます。2ヶ月分の給料に当たるチップをもらったエピソードなどからも、そのことがうかがえます。
読み進める中で、著者のサービス精神や心を込めた実際のサービスには感動させられました。
そして、それ以外に本書からわかることは、高い価値を潜在的に提供できるであろう力とやる気のある人は、能力を開花させて十分に発揮するためにも、自分自身を価値の高いやりとりが行われる場に置くことが大切であるということです。
2007年06月28日
『起業の条件』
折口 雅博著 1997年2月20日 1359円(税別)
コムスンの件で、最近世間を騒がせているグッドウィルグループ会長の折口雅博氏が、約10年前に書いた本です。この本が出版されたときは、グッドウィルが設立されて2年ほどしか経っておらず、売上げも40億円程度、株式の上場もされていませんでした。
本書は10年前の本ですが、時代的背景に関係した記述を除くと、古さを感じさせず、今でもじゅうぶん通用する内容です。著者の折口氏の非凡さを感じさせます。この頃本書を読んでいていたら、企業としてのグッドウィルに興味を持っていたかもしれません。
全体を通して、折口氏の半生の自伝を通して起業や経営の心構えを解説する内容になっています。2年前に以下の本も出版されましたが、より若い頃に書かれた本書の方に原点を感じます。
折口氏を特徴づける、一般の人と異なるエピソードとしては
- 少年時代に父親の会社が倒産して、つらい生活を送った
- 高校・大学と防衛関係の学校で学び、厳しい寮生活を送った
- 商社でのサラリーマン時代にジュリアナ東京をプロデュースした
- ジュリアナのプロデュースには成功したが報酬が得られなかった
などがありますが、このような経験から、なんとしても起業して、事業を大きくしたいという強い想いが湧き上がってきたのかもしれません。
ジュリアナをプロデュースしたエピソードを読むと、時代や物事の本質を見る目、企画力、実行力、人を巻き込む能力、プレゼン力、資金調達力、そしてなによりも物事を成し遂げようという執念において傑出していたものがあると思わされます。
本書で印象に残ったところをいくつか書きます。
「また、これは私の個人的な体験から生まれた思いなのだが、在宅介護ビジネスも展開していきたいと考えている。父が亡くなるまでの三ヶ月間、介護のために泊まり込んだ病院で、高齢者やその家族が抱える厳しい現実を目のあたりにした。日々、介護するなかで、その仕事がいかに重要で、かつ人々に求められているものであるかも分かった。近い将来、必ずや実現したいと考えている。」
「当然、店頭公開のあとは東証二部・一部上場を目指すが、それが実現したとしても私は満足しないだろう。年商が100億円になっても一千億円を目指し、一千億円を達成しても、その上を目指す。」
昨年のグッドウィルグループの連結売上高は1860億円程度であり、今年度は今回の一件がなければ、2500億円程度の売上げがあったと予想されます。
本書を読むと、現在の状態はすべて折口氏の心の中にあったようです。「反省する」「失敗から学ぶ」などということも、本書を読む限りは氏の心の中に根を下ろしているようなので、今回の件を解決した上で、将来の復活と発展に期待したいものです。
人の嫉妬には気を付けないといけないとも書かれています。最近の週刊誌の報道を見ると、氏がいかに派手な生活を送っていたかということが書かれていますが、我が国では創業して成功した場合、道徳的にならないと(少なくともそう見せないと)本当の意味で社会と調和しないようです。個人的には、年商100億程度の事業を成功させれば、数億程度は派手に遊んでもかまわないと思うのですが。
今回の一件で折口氏の評価は下がってしまいましたが、卓越した才能を持っていることは間違いありません。起業や会社の経営において、本書は学ぶべきところが多い本です。
2007年06月27日
『「時間の王様」VS「お金の王様」』
中島 孝志著 2007年7月1日 590円(税込)
まだ画像でのリンクは張れませんが、KKベストセラーズのワニ文庫の最新刊です。著者は経営コンサルタント、出版・映画プロデューサー、ジャーナリスト、作家などなどさまざまな肩書きを持つ「マルチ人間」です。仕事術などの本を数多く書かれています。
本書はどちらかというと、さまざまな著名人のエピソードを集めた二次的な本ですが、著者自身の話もある程度出てきます。時間をうまく活用して、仕事の効率を上げるという内容になっています。
単に効率を上げるだけでなく、時間をかけて集中して物事を行うことの必要性も書かれています。さまざまな著名人の例を挙げて、一万時間集中するとたいていのことはモノにできると述べられています。
一万時間というと、おおざっぱに言って、毎日3時間で10年、毎日10時間で3年となります。医者の場合も、医学部に入学するのに一万時間、医者になるのに一万時間、専門医になるのに一万時間くらいが目安かと思います。
その他の専門職も、おそらく似たようなものでしょう。仕事を始めたら3年は続けた方がよいと言われますが、それくらい一つのことを職業していると、なんらかの専門的なスキルを身につけることができるからです。
以前に、このブログで何かを身につけるときに必要な本の冊数について書きましたが、考え方としては似ています。その時は質的にレベルを上げるためには、さらに10倍の冊数が必要と書きましたが、時間についても同じように言えると思います。
あくまで一応の目安ですが、千時間だと素人としては十分、一万時間だとそれでご飯が食べられる程度、十万時間だとその道の第一人者といった感じです。
時間をこなしていると質の向上は自然についてくると思いますし、時間を十分にかけないで質だけ追い求めるのは、かえって効率が悪いように思います。
一部しか紹介できませんでしたが、さまざまな視点から書かれており、本書を読むと自己啓発について自分なりにいろいろと考えるきっかけになります。
2007年06月26日
『なぜか「また行きたくなる」飲食店のつくり方』
大久保 一彦著 2007年7月6日 1260円(税込)
過去にブログで紹介させていただいた著者の方々の本が新しく出版されると、どうしても書店で自然に目が向かってしまいます。本書の著者の本は、最近別の本を紹介したばかりですが、あまり日をおかず新刊が出版されました。
著者は飲食店のコンサルタントをされています。いままでにも関連の著作が数多くあります。本書では、飲食店の経営における集客方法についても書かれていますが、さらに「店が継続すること」がメインテーマとなっています。
SEOが流行っているせいか、最近はいかに集客をするかという本がたくさん出版されています。一時的に数多く集客したとしても、本当に飽きがこない価値のあるものを提供し続けなければ、商売は長くは続きません。モテることと結婚生活が続くこととが別であることと同じです。
新規の顧客を開拓することと、固定客にリピートしてもらうことは車の両輪のごとく、どちらも重要です。ビジネスの性質にもよると思いますが、一般的にはリピーターをつくることがより重要であると思います。
本書でも今までの本と同様に、飲食店についての著者の現場における経験やコンサルタントとしての知恵が数多く述べられています。印象に残った見出しをいくつか書くと、
- 「なんか良さそう」を演出すれば目の前の通行人はお客になる
- ゆったりした第一印象が繰り返し来店を誘う
- 競合店の調査はやめる
- なにをしたらいいか悩んだら、目の前に見える人を喜ばせよ
- 「おいしい」と感じる言葉を使う商品は続かない
- お客さんを飽きさせないために店自らの進化が大切
- 飽きない店は「〜を食べた」ではなく「その店に行った」と思わせる
- なぜその店がいいのかは自分自身が持つ文化(価値観)が決める
- お客さんに貸しを作れ
見出しだけを書きましたが、本書では詳しく具体的に述べられています。飲食店の経営は、魅力的を高めて選んでもらうという点で、異性とのつきあいに通じるものがあります。
本書を読んでいると、著者の飲食店経営に対する愛情を感じることができます。やはり、好きなことを仕事にする方がよいようです。
2007年06月25日
『「心のDNA」の育て方』
石井 裕之著 2007年7月7日 1365円(税込)
「心のDNA」の育て方~夢と目標を実現する7つの心理セラピー(CD付)
まだアマゾンへのリンクが張ることができないので、タイトルだけになります。アマゾンでの情報をご覧になりたい方は、左の検索ボックスにタイトルの一部か著者名を入れていただくとたどり着けると思います。
昨日は苫米地氏の本を紹介しました。本書も昨日の本と同じく潜在意識を活用した自己啓発書であり、読者層も似ているのではないかと思います。あえて言うならば、昨日の苫米地氏の本は男性向け、今日の石井氏の本は女性向けとなります。
両者とも、過去には宗教的に表現されてきたことを十分に理解しながらも、いままでの著作では、抑え気味に表現してきています。現代は、人類の長い歴史において科学的・意識的な表現に重点が置かれている時代なので、一般向けの本では過度に宗教的な表現が抑えられる傾向にあります。
本書では、ドイツの神秘思想家であるシュタイナーについての話が、ほんの少しだけ出てきます。おそらく今後の著作では、もっと神秘的な内容が出てくるのではないかと予想します。
本書で著者が最も言いたいのは、自分の潜在意識を抑圧しないほうがよいということです。石井氏の本がよく売れるのは、氏の本が読者を抑圧から解放する働きがあるからです。
ものごとは何事もやってみないとその次に進めません。やった結果がうまくいかないとしても、自分で責任を取ってさらに次に進めばよいだけです。人の目を気にして、自分がやりたかったことをやらなくても、誰も責任を取ってくれません。
一般的には親の影響が最も強いことが多いですが、親は先に亡くなってしまいます。親は子供の人生の責任は、原理的に取りきれないようになっています。
本書は「何か」にしばられて、自分に素直に生きることができない人によい本です。
2007年06月24日
『頭の回転が50倍速くなる脳の作り方』
苫米地 英人著 2007年6月24日 1365円(税込)
頭の回転が50倍速くなる脳の作り方~「クリティカルエイジ」を克服する加速勉強法~
脳機能学者である苫米地英人氏の最新作です。
最近の氏の本は、わかりやすさと実用性に主眼が置かれているようですが、個人的には、以前に7年くらい前に出版された洗脳についての専門的な内容の本も面白かったように思います。仏教でいうと、以前の著作は上座部、最近の著作は大乗に喩えられます。
本書ではクリティカルエイジという言葉が出てきます。この言葉の意味は、「遺伝的に決まっているそれぞれの機能の発達の年齢」ということです。言語では8〜13歳くらいまでだそうです。中学生になってから英語を学んでも、母国語のように話せるようにならない理由です。
本書では「クリティカルエイジを克服する方法」が述べられています。ポイントとしては、日本語脳を活性化させることなく英語を学習することですが、具体的に方法が書かれています。氏の以前の著作にもあったように、「抽象度を上げる」ということが大切なようです。一部の方法としては、以前から「英語のシャワーを浴びる」などどいうことは言われていました。
個人的には、本書の方法であれば英語の学習効率は上がるとは思いますが、母国語と同じ感覚を得るのはさすがに難しいような気もします。
脳の能力を高めるためにリラックスすることが必要ですが、そのための身体的技法についても書かれています。本書では、英語から入っていますが、実はどんなことにおいても効率的に学習する際に必要とされる技法です。
今までの本にもあるように、「共感覚をつくる」「抽象度を上げる」ということが根本的に重要ですが、これらの技法は昔から武術や宗教の伝統的な技法として存在していたものです。一部の人たちしか知り得なかったこれらの方法を、現代科学のフィルターを通してわかりやすく表現していることに、本書の意義があります。
2007年06月23日
『株に強くなる投資指標の読み方』
日経マネー編 2007年6月15日 872円(税込)
画像はまだありませんが、日経文庫の最新刊です。日経文庫は「文庫」といっても、サイズは新書です。
本書は月刊誌である「日経マネー」編となっており、特定の個人によって書かれたものではないため、内容にクセがありません。株式投資における重要な投資指標について、一通り述べられています。
本書にある投資指標を具体的に挙げると、基本的なところでは、PER、PBR、配当利回り、自己資本比率、ROE、ROA、売上高経常利益率・売上高営業利益率、少し進んだものとしては、M&Aレシオ、EV/EBITDA、PEG、DEレシオとなります。
実際の企業の最近の具体的な数値を用いて解説されているため、投資指標を通じて、ある程度はM&Aや脱デフレなどの時代の流れをつかむことができます。
また、以下のような投資指標を使う心得についても述べられています。
- 常に最新の数値を把握する
- 売り時も投資指標で考えてみる
- 数値を鵜呑みにせず一度は疑ってみる
- 高成長の中小型銘柄は指標の見方も異なる
日経新聞出版社から発行されているだけあり、日経新聞や日経会社情報の読み方についても簡単にふれられています。本書では、主旨からして、チャートの読み方などテクニカル面についての解説はありません。
本書は、親切な教科書のような内容です。実際のテストで成功するためには、教科書を読むだけではなく、問題演習や本番のテストを数多くこなすことが必要ですが、折に触れて教科書に立ち返ることにより、以前は気がつかなかった新たな理解が得られることがあります。
2007年06月22日
『格差社会の世渡り』
中野 雅至著 2007年6月21日 735円(税込)
ソフトバンク新書の最新刊です。著者はキャリア官僚を経て、現在は大学院の准教授をされています。
著者の本で、光文社ペーパーバックスの『高学歴ノーリターン』という本がありますが、本書でも学歴の相対的な価値の低下が主張されています。本書で、著者が学歴について述べたいことは以下の2点にまとめられています。
- 学歴の価値は所得よりも下位になった
- 学歴は所得の増加と結びつくかどうか疑問だ
学歴の価値が低下したのは、おそらく以前と比べて、所得に格差がつきやすい時代になったからでしょう。実力がない人でも学歴はあれば、以前はそれなりに出世することがありましたが、これからはそうもいかないということです。
時代が変わっても、差別化したいというヒトの根本的な心理傾向は変化ありません。以前は学歴獲得を目指していた、頭の良い人たちが所得獲得に流れることでしょう。
学歴にせよ所得にせよ、他者との差別化だけのために努力することは本質的にはむなしい作業です。本書は、人によってはアンチ学歴本と取られかねないと思いますが、この本で著者が本当に主張したいのは、本来手段であるものを目的とすることのむなしさです。
著者によると、今の時代に必要とされているのは、リスクを取る度胸とアピール力だそうです。時代が市場化されているので、確かにそうだと思います。
正社員の地位が上がったことについても書かれており、その中でも「勝ち組サラリーマン」は王者中の王者としています。勝ち組サラリーマンの条件として、
- 何が何でも出世するという執念がある
- 仕事に全く疲れないタフさがある
- アピールがうまい
を挙げています。この3つは、昔から組織における出世の条件だったように思います。最後に、日本社会については
- 政府は積極的に働く場所を作るべき
- 実績社会から実力社会への移行を明確にする
- 公のことを考える人間を育てる必要がある
を提案されています。微妙な舵取りが必要とされそうです。
本書は、よい大学に行けばよい人生が送れると考えている人が読むと、最も得るところが大きいと思いますが、自分が追求していることを否定されたように思い、受け入れにくく感じるかもしれません。でも、読んでいて受け入れにくいところは、その人にとって重要なことが多いと思います。
全体を通じて、学歴が著者の主張の中心軸になっているように思いますが、格差社会の処世術としても、十分に役立つ内容になっています。
2007年06月21日
『日本の値打ち』
アンドリュー・H・シップリー著 坂本 美智子訳
2007年7月10日発行 1700円(税抜)
書店に並ぶようになってまだ日が浅いため、画像はないようです。著者は、いくつかの外資系金融機関で「経済専門家」として勤務された経歴があり、日本での15年の滞在期間があります。日本の大学でも学ばれたことがあるようです。
著者によると、「投資先としての日本の今後はきわめて明るい」ということです。
- 国と企業が知的財産に力を入れるようになった
- 日本の金融が効率化されつつある
- 都市が再生されつつある
などが主な理由です。少子高齢化や財政問題についても触れられています、全体的に楽観的な論調です。
エピソード的に面白かった話として、明治政府が国家予算の三分の一を、わずか500人強の「お雇い外国人」に使っていたということです。明治初期の日本は、それくらい外国の技術の導入に熱心だったわけです。当時は今よりも危機感があったのでしょう。その代わり、雇われた外国人は任務が終わると、多くはそれぞれの国に帰っていき、日本と同化することはありませんでした。それが政府の方針でもあったようです。
ここ数年日本の資産が外国に安く買われていますが、その代わり日本は金融や企業買収の知識などを、実際の買収される体験を通して得ることができました。リップルウッドによる長銀の買収などが象徴的です。痛い思いをしないと、なかなかあまねく知識が伝わりません。
本書でも指摘されているように、莫大なお金を払ってノウハウを手に入れるという意味では、外資による最近の買収は、本質的には明治時代と似ているのかもしれません。外資が日本の株式や不動産などを安値のときに購入して得られた経済的利益は、今回も、国家予算の三分の一程度の価値は優にありそうです。
明治のときは、その後の日本の発展を考えると、十分に国家予算の三分の一の投資は回収できているように思われます。今回もかなり高くついていますが、回収できるとよいと思います。
本書の内容はやや楽観的なきらいがあり、日本人だといろいろと反論したくなるかもしれません。しかしながら、日本市場への資金の流入を考えると、外国で日本に詳しいと思われている著者による本書のような本が、英語圏で出版されて読まれるであろうところに意味があります。
2007年06月20日
『喫茶店で2時間もたない男とはつきあうな! 』
齋藤 孝/倉田真由美著 2007年5月23日 630円(税込)
しばらく固い本が続いたので、少し柔らかめの本にします。『だめんず・うぉ〜か〜』シリーズのくらたまさんと身体論やコミュニケーション技法の齋藤孝氏との対談です。3年前に出版された本が、最近文庫化され手に入れやすくなりました。
期待していたよりも面白い本でした。3年前に本屋でパラパラとながめた記憶はあるのですが、実際に買って読んでみないとわからないものです。主に女性の視点からの、恋愛における戦略や心構えが書かれています。
現代の日本は、恋愛においても戦略的に行動しないと、いい相手が見つからないということになりかねない時代状況です。恋愛においても格差が生じやすくなっているようです。お金では1000倍くらいの差はつきかねませんが、恋愛ではさすがにそんなには差がつきません。
一見恋愛の方が格差が少ないように思いますが、実はそうでもありません。なぜなら、1000倍お金を持っていても1000倍幸せというわけではないからです。一定以上のものがあれば、お金でも恋愛でもそこそこの幸せは得られますし、一定以上を越えてしまうと逆にいろいろとやっかいな面もあるかもしれません。
ただし、両者とも不足すると欠乏感により不幸と感じる場合が多くなります。そう考えると、お金も異性も個々の差がなくなるように配分すればよいようにも思いますが、国としての全体の力を考えると、少なくともお金に関してはそうもいかないようです。
お金は自分をふやしてくれる人のところに自然に集まりますが、ヒトも自分の分身を増やしてくれそうな異性のところに自然に集まる傾向があります。
ちょっと本書からそれてしまいましたが、内容としては、いかにしてよい出会いを作るか、いかにして恋愛関係を長続きさせるか、恋愛における会話力の重要性について書かれており、対話の形でわかりやすくまとめられている良書であると思います。。
2007年06月19日
『21世紀の国富論』
原 丈人著 2007年6月20日 1470円(税込み)
著者は考古学研究を志してアメリカに渡ったそうですが、その後、彼の地で光ファイバーのディスプレイメーカーを創業、会社を売却後、ベンチャーキャピタリストとして90年代に数多くの企業を成功に導かれたそうです。
現在はデフタ・パートナーズという事業持株会社で会長職にあり、ポストコンピューター時代の新産業を先導されているということです。
本書において、もっとも著者が書きたかったところは、著者の提唱されるPUC(Pervasive Ubiquitous Communications)のようです。PUCとは、使っていることを感じさせず(パーベイシブ)、どこにでも遍在し(ユビキタス)利用できるコミュニケーション機能ということのようです。
今までは人が機械に合わせていましたが、PUCでは機械が人に合わせてくれるため、使っているということを感じさせないとのことです。著者の持ち株会社は、1996年からPUCに特化した投資を行っているとのことです。
PUCがハードとしてはどのような形になるかはまだわからないそうですが、ソフトとハードが一体化することが特徴のようです。いままではソフトとハードを分離して、ソフトはアメリカで、ハードは途上国でということが世界の流れになっていましたが、その考え方も転換する必要があるということです。
著者の考えでは、日本がPUCをリードする可能性があるいうことで、著者はそうなることを目標に活動されているようです。本書の出版もその一環であると思われます。
ベンチャーキャピタル業界が長いだけに、具体的なファイナンスやガバナンスについて、理想的なあり方を提唱されています。ベンチャーや企業のあり方として、新しい革新的な価値を創造することをきわめて重視されています。
アメリカの会計などのあり方についての批判などもありますが、アメリカのベンチャー企業の中枢で働いていただけあり、説得性があります。お金持ちになったら幸せになれるという、アメリカンドリーム流の「幸福の定義」についても問題があるとのことです。著者は、職業柄数百人単位で億万長者を見てきたそうですが、100億円以上のお金をつくった人の中で本当の意味で幸せになった人はほとんどいないそうです。
今後の、日本のあり方についても具体的に数多くの提言があります。政府に関係した多くの委員もされているようで、日本の将来もまだまだ捨てたものではないと思わせます。
著者の考えているように時代が流れるかどうかはわかりませんが、これからの日本における投資の本質的な意味について考えたい方には、興味深く参考になる本であると思います。
2007年06月18日
『これからの5年・日本人が気付くべきこと』
小山 政彦著 2007年6月8日 1470円(税込み)
これからの5年・日本人が気付くべきこと―経済大変動への準備をすぐに始めよ
著者はコンサルタントであり、船井総研の代表取締役社長をされています。
本書では、村山節氏の文明法則史学に基づき、日本の近未来を予測されています。結論としては「2015年までに世界経済の中心が日本に移る」ということです。詳しい論拠は本書を参照していただくとよいのですが、石油と金の価格が暴落することにより、世界の金融資産の半分を握っている日本の資金力が脚光を浴びるようになるということのようです。
ちなみに100年後の世界の覇権はインドが制していると予測されてもいます。
また、現状の日本においては、アメリカ発の格差社会が日本でも広まりつつあると分析されており、結果の平等、機会の均等の解決策を提案されています。古来からの日本の精神についてもかなりの評価をされており、『国家の品格』の引用などもあります。
今までの著者の著作でも重視されている人の育成について、日本の伝統的な視点からの提案が書かれており、全体的にやや国粋主義的な印象を受けます。戦後の日本はアメリカナイズされていますが、近年その揺り戻しが来ているように思います。
他の国々でもグローバリゼーションの名でアメリカ化が進行しつつありましたが、日本がアメリカナイズされたようにはうまくはいかないようです。日本で成功したのは、戦争に負けたこと、古来から異文化を同化しやすい国民性であったことの2点があるためでしょう。
最後に、本書に書かれていた、船井幸雄氏の「口説きやすい女性の年齢を割り出す方程式」について書いておきます。
口説きやすい女性の年齢 = 自分の年齢 ÷ 2 + 7
例えば、男性が30歳であれば、口説きやすい女性の年齢は22歳です。いかがでしょうか?女性の方も、興味のある方は逆算してみて下さい。7を引いて2倍すればよいのですが、女性からすると必ずしも当てはまらない式かもしれません。とくに年齢が高くなるほど、男女間の感覚にギャップがあるように思います。
2007年06月17日
『ウォール街アナリスト物語』
アンディ・ケスラー著 柏野 零訳
2006年11月20日発行 1800円(税抜き)
昨年出版された本ですが、以前に紹介した、『シリコンバレー・ヘッジファンド運用記』がかなり読みごたえのある本でしたので、同じ著者が書いた本ということで購入しました。本書も興味深く読めましたが、本の面白さとしては、個人的には、『シリコンバレー〜』の方が上でした。
英語版では著者の本は、今までのところ4冊出版されているようです。上記の2冊が日本語で読めます。残りの2冊も内容がよいと思われるので、頑張って英語で読もうかと思っていましたが、幸いにも、以下の本は8月に発売される予定になっているようです。
オープンナレッジという出版社から出る予定のようです。オープンナレッジの本で、時代的にも本書と内容が重なる以下の本を現在読んでいる途中ですが(これはアンディ・ケスラーの本ではありません)、良書であるので、読み終わりしだい紹介させてもらいます。
ウォールストリートのスノーマン―トップアナリストが見た虚像と現実
アナリストが書いた本は、職業的なものもあると思うのですが、一般的に面白いものが多いと思います。
さて、もとの本の紹介に戻ります。著者のアンディ・ケスラーはヘッジファンドを運用する前には、モルガン・スタンレーなどで電子・半導体業界のアナリストをしていました。本書は、アナリスト時代の仕事や業界の様子について書かれています。
アナリストがいかにして業界を分析して、「Buy」「Overweight」などの投資判断を行うかなどが書かれています。レポートだけを読むとスマートにできていますが、本書を読むと、さまざまな利害関係や、人間関係などによりレポートが影響を受けているということがわかります。
純粋に株式投資をするのであれば、バフェットのように田舎に引っ込んで企業だけを見て投資した方がよいかもしれません。投資業界のまっただ中にいると、人間関係や洪水のような情報に飲み込まれて、冷静な投資判断ができないかもしれません。
著者はすでにアナリストの業界からは身を引いていることもあり、比較的詳しく内部事情が書かれています。後にスキャンダルに巻き込まれた人も含めて、さまざまな人物が実名で登場します。
株式投資を行う上で、証券会社などが出す投資情報に振り回されず、逆に利用するために、本書は参考になる本であると思います。
2007年06月16日
『ホワイトカラーは給料ドロボーか?』
門倉 貴史著 2007年6月20日 756円(税込み)
BRICsや地下経済など人間の欲望の原始的なエネルギーが渦巻く経済的テーマについて数多くの著作を次々と書かれている著者の最新作です。VISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)の株についての以下の本も最近出版されています。
本書では、ホワイトカラーを軸に、ホワイトカラーエグゼンプション、労働生産性、残業、給料、グローバリゼーションなどについて数々の具体的な統計数値の分析をもとに、現代日本の労働市場について話が展開されています。
一般的に考えられているのとは異なり、日本のホワイトカラーの労働生産性は必ずしも低くないということを、さまざまな数値を駆使して述べています。
ホワイトカラーエグゼンプションについては、著者の意見では、日本の労働市場の流動性はまだまだ高くないため(簡単に転職しにくい)、導入は早すぎるのではないかということです。単に制度を導入しただけでは、全体の労働生産性が必ずしも上がらないということを主張されています。
労働市場の流動性が高いと、能力のある人はより高い給料での職場に移ることができます。流動性が低い状態でホワイトカラーエグゼンプションを導入すると、もともと負荷がかかっていた一部の有能な人の負荷がさらに増えるのではないかということです。
株式市場においても流動性は非常に重要ですが、労働市場でも流動性は重要なようです。流動性は全体の価値を上げますが、格差も拡大させます。外資系の企業では賃金の格差が大きいですが、流動性も高いようです。すべての日本企業が外資系企業のように賃金格差が大きくなると、さらに格差が広がりそうです。
世界的に格差を許容して企業単位、国単位での労働生産性を上げようとする流れの中、今後の世界的な競争の中で生き残っていくために、日本だけが労働市場の流動性をそのままにするというわけにもいかなさそうです。そうなると、著者も述べているように、いかにして所得が低い人のセーフティネットを調整するかということが問題です。
そもそも人間の労働に価格をつけること自体についての問題もあると思いますが、価格をつけないと市場が非効率的になり、全体の生産性が下がってしまいます。価格をつけずに株をやりとりするのは、残念ながらきわめて困難です。
本書は、新書版で手軽に読めることもあり、これから我が国において議論が活発になると思われる、ホワイトカラーエグゼンプションを中心とした労働問題について考えるために、読んでおいて損はない本であると思います。
2007年06月15日
『売れないのは誰のせい?』
山本 直人著 2007年6月20日 714円(税込み)
売れないのは誰のせい?―最新マーケティング入門
新潮新書の最新刊です。著者は、博報堂で長年マーケティングの仕事をされていた方です。本書には現場で得られた知恵がふんだんに込められています。
著者は、マーケティングを「客の立場に立って知恵を使い続けること」と定義されています。自分の立場ではなく相手の立場です。また、「知恵を使い続ける」のところでは、「続ける」という部分が大切であると思います。なぜならば、常に客は変化し続けるからです。
著者によると、今までは日本では本格的な競争はなかったそうです。これからようやくマーケティングの考え方が、本当の意味で必要とされそうです。買い物という行為についても、今までは必要なものを得るためでしたが、これからは、買い物に人生観を投影するとようになるそうです。そのような点からも、ブランドの重要性について述べられています。
日本社会については、70年代の後半から80年頃に男女の役割や家庭の変化がはじまり、それが現在の消費活動に大きな影響を与えているということです。現代は、消費のターゲットが絞りにくくなっているため、広告の反応によって逆に消費者を捉える必要があるとしています。
テレビ広告やタレントを用いることについても、ご自身の経験をもとに適応などが書かれています。
最後に、「他者を知る」ということの重要性について繰り返されています。他者を知るということはいままでも大切でしたが、確かにこれからはさらに重要性が増しそうです。
全体的には、著者が大手広告代理店で仕事をされていたということもあり、大企業向けの内容になっていますが(中小企業はテレビ広告やタレントを使ったりはしないと思うので)、マーケティングの本質的な考え方が押さえられており、商売をする方であれば誰でも役に立つ内容になっていると思います。
2007年06月14日
『消える中間管理職』
鴨志田 晃著 2007年6月26日 780円(税込み)
創刊されて間もないアスキー新書の最新刊です。著者は、シンクタンク・ソフィアバンクのパートナーで、大学でも教えておられるようです。
我が国において、最近ホワイトカラーエグゼンプション導入の議論が活発になりつつあります。ホワイトカラーとはいままで曖昧な使われ方をしていましたが、ホワイトカラーエグゼンプションの議論が盛んになることにより、逆にホワイトカラーとは何かということについて、改めて考えられるようになるかもしれません。
本書では、アメリカの経営学者でコンサルタントでもあるロバート・E・ケリーが1985年に提唱した「ゴールドカラー」という概念が紹介されています。ケリーによると「ゴールドカラー」とは、「ブルーカラーでもホワイトカラーでもなく」「情報を知識に換え、知識を利益に換える」ことのできる「知識労働者」と定義されるようです。
今後は、結果を出せるか出せないかにより、ホワイトカラーがゴールドカラー的なホワイトカラーとブルーカラー的なホワイトカラー分化するため、ホワイトカラーも二極化しそうです。
ゴールドカラー成長のための「VITALITYの法則」が、終わりの方で述べられています。
- 働くビジョンを持つ(Vision)
- 学ぶ心を持つ(Intelligence)
- 結果にこだわる(Trust)
- 仮説を持つ(Assumption)
- まずは動く(Live)
- 知識を蓄える(Information)
- 頑健になる(Tough)
- 前向きに考える(Yes)
7の「頑健になる」が、まずは必要であると思います。1〜8まですべての条件をそろえるのは、ハードルが高そうです。また、1〜8それぞれの相関も高そうです。勝ち組の割合が少なくなるのも、致し方ないのかもしれません。
2007年06月13日
『消費社会から格差社会へ』
三浦 展/上野 千鶴子著 2007年4月30日 1400円(税抜き)
ベストセラーとなった『下流社会』の著者である三浦展氏とフェミニスト兼社会学者である上野千鶴子氏の対談です。
対談は3つのパートに分かれており、第一部は消費社会・格差社会論、第二部は団塊世代・団塊ジュニア・ポスト団塊ジュニア論、第三部は企業・個人史となっています。
第三部は業界の話が中心だったので、ちょっとついていくのが難しかったです。業界の人ならば面白く読むことができるのでしょう。
第一部で格差論は20年前からあったという話が出てきましたが、確かにその頃から格差はあったように思います。ただしその頃は、格差といっても資産の土地などのストックの差が主です。現在は、フローである稼ぐ力の差およびその結果としてのストックの格差であるため、昔よりも精神的にきつくなっていると思われます。
上野氏はフェミニストだけあって、「男女格差」について言及されています。男女間の格差は、ジェンダーに覆い隠されてわかりにくくなっているという主張です。男女間に格差があるかどうかは視点の問題です。フェミニストの視点からは、男女を同一の土俵で見るので格差はあるのでしょう。あるかないかという問題は、実はどのような立場に立つかという問題です。
第二部で再婚の話が出てきましたが、女性にとって重要なのは男性の収入、男性にとって重要なのは女性の若さだそうです。若い初婚者も同様の傾向はあると思うのですが、よりはっきりしているようです。また、離婚者で再婚願望がある男性は三分の二、女性の三分の二は再婚願望がないということです。現代は初婚年齢が上がってきていることもあり、初婚と再婚のときの異性に対する選択の価値基準が近くなってきているのかもしれません。
本書は、対談のため幅広い内容のトピックが次々と出てくることもあり、全体的な内容を短くまとめるのは難しいところです。投資やビジネスには直接は関係ありませんが、時代を読み解くためのヒントにはなると思います。星3つをつけましたが、業界に関心のある方であれば、星の数はさらにアップするかもしれません。
2007年06月12日
『日本より世界を見よ!株式投資再入門』
中原 圭介著 2007年6月27日 1600円(税抜き)
日本より世界を見よ!株式投資再入門―世界の動きから投資のタイミングを探り出す
『株の勝ち方はすべて外国人投資家が教えてくれる』などの株式投資に関する著作で知られる中原圭介氏の最新作です。しばらく前に、マンガ形式の共著で書かれた本を、このブログで紹介しました。
本書はタイトルから想像される内容とは少々異なり、どちらかというと、相場に望む際の心構えがテーマになっています。個人投資家が陥りやすい心理的なワナについて、具体的に丁寧に解説されています。
著者によると、相場で勝ち組になれるのは1割だけだそうです。勝ち組になるための条件として、
- 利益を欲張らず、慎重に慎重を重ねて売買すること
- トレンドを正確に把握し、臨機応変に対応すること
- 感情に流されず、冷静かつ客観的に状況判断すること
- 買っておごらず、負けは潔く認め、反省すること
という、シンプルな4つの条件を挙げています。一言で言うと心のコントロールですね。そして、さらに具体的に、12の必勝セオリーが書かれています。
- 心と買い付け能力に余裕を持たせる
- 相場は「不合理」なものであると認識する
- 情報は鵜呑みにせず、きちんと検証する
- 欲望を抑え、ほどほどで満足する
- むやみやたらと「大勝負」を仕掛けない
- 売った後の高値は気にしない
- 迷った時は「休むも相場」を決め込む
- 忙しいときはポジションを小さく
- 感情を捨て、機械的な取引に徹する
- 損切りは早めに、利食いはゆっくり
- トレンドを見きわめ、臨機応変に対応する
- 株式市場だけでなく、世の中の動きを知る
12の必勝セオリーもほとんどが心構えについてですね。
タイトルにある「日本より世界を見よ!」については、世界のマネーの流れ、具体的には、外国人投資家の売買の大きなトレンドに乗った方がよいということです。ここ数年の日本市場は、外国人投資家がトレンドを創り出しているということが背景にあります。
著者の投資手法をまとめると、「自分の心をコントロールしつつトレンドに乗る」ということになるかと思います。投資の期間としては、中期的な視点から書かれています。
ライブドアショック以降、日本市場のトレンドは転換しました。本書は相場に対する普遍的な心構えについて書かれていますが、この1年半トレンドを見失ってしまい株式投資であまり勝てていない人は、とくに本書により得るところが大きいと思います。
2007年06月11日
『右脳でわかる! 会計力トレーニング』
田中 靖浩著 2007年3月23日 800円(税抜き)
著者は外資系コンサルティング会社を経て、現在は公認会計士事務所を開業され幅広く活躍されています。会計に関する一般向けの分かりやすい本を過去に数多く出版されており、何冊かの本を読んで面白く勉強させてもらいました。
本書は出版されて少し経ちますが、本屋で目立つこともあり、気になっていた本でした。タイトルに「右脳でわかる!」とあるように、財務3表とその分析方法をイメージで捉えるためのトレーニングをする内容になっています。
本書が「右脳でわかる!」本とすると、昨日紹介した本は、「左脳でわかる!」本になります。本書と合わせて読むと、より理解が深まるかもしれません。
ビール会社、デパート、テレビ局などなど誰もが名前を知っている企業の実際の財務データが例に挙げられており、親しみが持てる構成になっています。
実際の決算書は数字が書かれており、最初は本書に書かれているように、イメージではすぐに理解できませんが、本書を読むと、数字からどのようなイメージを持てばよいかについての手がかりにできると思います。
大部分が見開きによるクイズ形式でのトレーニングになっていますが、個人的に印象に残ったポイントとしては、
- テレビ局は自己資本比率が高い
- 電機大手は剰余金が少なく、負債の比率が高い
- 異業種の比較は売上げより利益の方が望ましい
などがあります。全体的には、初級者〜中級者向けの内容に仕上がっています。
問題については、プロ野球、食品会社アパレルなどにについては、あまりよく業界のことを知らないため、正解できなかった問題もそこそこあり、自分の知識の偏りを再確認できました。
2007年06月10日
『財務3表一体理解法』
國貞 克則著 2007年5月30日 720円(税抜き)
朝日新書の最新刊です。本書の内容は、六本木ヒルズのビジネススクールであるアカデミーヒルズなどで人気講座となっているようです。ちなみに一日の受講料は、本書によると3万円だそうです。
発売されて、日が浅いですが、すでに版を何回か重ねています。不思議と印象に残りやすいタイトルです。タイトルの通り、財務3表である損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書をそれぞれ関連付けて、有機的に理解することを目標としています。
通常のビジネスにおいては、著者によると経理などの専門職でなければ、必ずしも簿記の知識は必要ないということで、本書ではなるべく簿記を解説することなく、財務3表を解説するように書かれており、実践で応用が利く重要なポイントのみに絞られています。
自分でビジネスを始めるということを想定して話が進んでいくため、本の流れに参加しやすい構成となっています。実際の講座をもとにしているだけあって、単に面白く読ませることを中心に書かれた類書とは一線を画しており、本質的な理解が得られるように解説されています。
退職給付会計、時価会計、減損会計、自社株買い、税効果会計、のれん、新株予約権などの近年重要性が高まっている概念についても触れられており、ビジネスのみならず、株式投資のためにも役立つ内容です。
ここ数年思うことは、確実に新書の質が上がってきているということです。次々と新しく創刊されており、出版社間の競争も激しくなってきているようですが、新書を買って読む人の数も拡大しているのでしょう。本好きの一読者としては、良質な本が安価にたくさん読めて、うれしい限りです。
2007年06月09日
『なぜ、その人に惹かれてしまうのか?』
森川 友義著 2007年5月31日 1500円(税抜き)
著者は政治学が御専門で、大学でも教鞭を執られています。進化政治学という新しいジャンルを提唱されていますが、恋愛学についても本格的に研究されており、恋愛学の我が国におけるパイオニアになりつつあります。
このブログでも、本著者の前作である『なぜ日本にはいい男がいないのか 21の理由』を、前に紹介させていただきました。今回の本では、以前の本に書かれていた生物学的なテーマが、より深く掘り下げられています。
サブタイトルに「ヒトとしての恋愛学入門」とあるように、生物としてのヒトの観点から恋愛における魅力について、世界中の恋愛学に関する論文を参照しながら、著者の研究や意見もまじえて書かれています。
本質的には高度な内容ですが、それぞれの章末にわかりやすいQ&Aや、自分のタイプを知る質問、本の終わりにまとめなどもあり、分かりやすく読ませる工夫が随所に見られます。
本格的な恋愛学の本は、翻訳ものは幾つかありますが、日本人により学術的な視点も踏まえて書かれた本は、本書以外にはほとんどないと思います。
本書の主題は生物としてのヒトの恋愛学ですが、さらに絞って五感がテーマとなっています。結論から言ってしまうと、優良な遺伝子を持っている、いわゆるモテる人は、視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚いずれにおいても快適さを与えられ、それぞれの要素間の相関が高いということのようです。
飲食店などでも、流行っているところは、内装、香り、味、音楽、接客、清掃などの要素がいずれも優れていることが多く、流行っていない店は、全体的に質が良くないということと似ています。
恋愛が自由になると、モテる人はよりモテて、モテない人はよりモテなくなるということが、本書の内容からもよく分かります。資本市場が自由になると、富める者がますます富みますが、恋愛においても同じような傾向にあるようです。
現状でモテていないヒトにとっては、本書の内容はややつらいと感じることがあるかもしれませんが、まずは事実を知ることは必要です。戦略もその上で練る方がよいと思います。
現代においては、社会が複雑化しているため、必ずしも生物としてのヒトの魅力だけで恋愛の結果が決まるわけではないので、さまざまな戦略の余地は残されています。本書からも、そのヒントは得られます。
男女ともに、モテる人、モテない人いずれにとっても、恋愛に関心のある方であれば、興味深く読める本です。
2007年06月08日
『働かないで年収5160万円稼ぐ方法』
川島 和正著 2007年5月11日 1300円(税抜き)
著者は、1年前までは「平凡なサラリーマン」をされていたということですが、現在は自宅のインターネットによるビジネスでほとんど働くことなく、月収500万円を稼いでいるそうです。本書では、その方法について、具体的に書かれています。
オークションで月30万、アフィリエイトで月100万、情報ビジネスで月300万、最終的には年収1億を、読者の目標としています。
本当にこのようなうまい話があるのでしょうか?
残念ながら、私自身は実践していませんので、自分の体験として正否を判定することはできません。オークションの30万円は、手間を考えるとそれなりに釣り合っているように思います。アフィリエイトの100万円は、難しそうですが、やり方によっては可能かもしれません。
ここで注目すべきは、手間がかからないやり方ほど収入が上がることです。ここのところで、通常とは逆の思考をしないといけません。ある程度以上稼ごうと思ったら、労働時間や手間を増やすことによって収入を上げるのではなく、別の考え方や発想が必要ということです。
本書を読むとわかりますが、著者の文章はいろいろな意味で洗練されています。本全体が、良質なビジネスレターとなっています。本書で学ぶべきは、具体的な内容よりも表面的な表現の背後にあり、人の心理に訴えかける書き方や構成です。
アメリカのゴールドラッシュの時に一番お金を稼いだのは、金を掘り当てた人ではなく、金を掘るための道具や服を売った人であるというのは有名な話ですが、インターネットのビジネスにおいても、確実に儲けている人は、ビジネスで稼ぐための道具や方法を売っている人です。
いままでのネットワークビジネスにおいては、比較的少数の人数で枝分かれをさせてネットワークを広げる必要がありましたが、インターネットの出現により、1回の枝分かれで、万単位の人々を直接の枝にすることができるようになりました。それだけ取り分も増えていると思うので、理屈の上では爆発的に稼ぐことは可能なはずです。
商売をしている方で、このような本を読まれたことがない人は、稼ぐ稼がないにかかわらず、ネット上で展開されていることを知るためにも、1冊は本書のような本を読んでおいた方がよいと思います。
2007年06月07日
『「ひきこもり国家」日本』
高城 剛著 2007年6月22日 700円(税抜き)
「ひきこもり国家」日本―なぜ日本はグローバル化の波に乗り遅れたのか
宝島社新書の最新刊です。
著者は、映像作家、DJ、ハイバーメディアクリエイターと多彩な肩書きがあります。六本木ヒルズのCM、ルイ・ヴィトンのアニメーション、ソニーのAIBOなどを起ち上げたり、数多くの国家プロジェクトの総合プロデューサーをしたり、数十社の顧問を務めたりと、八面六臂の御活躍です。
本書のテーマは、グローバル化の波に乗り遅れた日本についてです。著者の仕事は直接は経済と関係ありませんが、本書は著者が行った勉強会をまとめ上げたもので、年に200日以上はあちこち海外に旅行しているクリエイターとしてのグローバルな視点から、経済を軸にして、日本の現況について書かれています。
普段から経済書をよく読まれている方にとっては、知識としてはあまり新しいことは書かれていませんが、世界で活躍するクリエイターとしての新鮮な観点から、日本の経済状況を捉えているところに本書の特徴があります。
著者によると、現在、世界は「カクヘンモード」になっているとのことです。パチンコをやらない方にはわかりにくいかもしれませんが、「カクヘンモード」とは確率変動モードのことで、大当たりが生じやすくなっている状態ということです。日本はそのモードに入っておらず、取り残されているようです。
いくつ印象に残ったことを書きます。
- 新しいカースト制度が世界中で創生されつつある
- 国家のみならず、個人がグローバル化する必要がある
- プロならば、芸術性の前にまず収益を出す必要がある
- 世界の中での自分のポジションを知る必要がある
- 変わることよりも変わらないことの方が危ない
日本の現時点での価値はまだまだ低くはないと思いますが、将来の成長を含めて考えると、かなり低いようです。新興国はあまりお金がないけど子だくさんの家庭、日本はお金はあるけど非社交的で子供が少ない家庭ということになります。
いままでは、日本国内が均一化していることが発展の原動力になってきましたが、グローバリゼーションが進行している現代においては、逆に仇になってしまいそうです。日本が将来的に本当に復活した時には、日本のアイデンティティは今のものと全く異なっているものになっているかもしれません。
こころの病が本当の意味で回復した時には、今の自分が過去の自分と異なった自分になっているということがありますが、日本もそのようになるのでしょうか。
2007年06月06日
『行列ができる店はどこが違うのか』
大久保 一彦著 2007年6月10日 680円(税抜き)
ちくま新書の最新刊です。本書の画像はまだアマゾンでアップされていません。著者は飲食店チェーン店を数社転職後、「とんかつ新宿さぼてん」を多店舗化されたそうです。現在はフードコンサルタントをされています。
「さぼてん」では以前に、何回かトンカツを食べたことがあります。本書で、お客さんが薬を飲む時に、そのことを察して氷の入っていない水を用意するという話が出てきますが、食事をした時に、まさにそのサービスが目の前で展開されていました。
とんかつ弁当のデリカの店舗でもたまに、揚げ物の弁当を買うことがあるのですが、注文したものが売り切れてさらに待ち時間が長い時などは、味噌汁をつけてくれたりして、やはりサービスが充実していました。隅々の店舗まで浸透している、しっかりとしたノウハウが存在したということが、本書を読んでさらによくわかりました。
本書では、最初に人の行動の9割が無意識になされているということをテーマにして、具体的な戦略が語られます。自分が何かを買う時に、どうして意思決定をしたのか常に意識しておくと、商売のヒントにもなるように思います。
常識にこだわらないことの重要性についても書かれています。このことは、最近のビジネス書でよく出てくる話で、最近のビジネスのメインテーマといってよいほどです。以前の日本では、経済発展の大きな流れにいかに乗るかが勝負の分かれ目でしたが、最近は自分で小さな流れを作るために、いかに他との差を作り出すかがポイントになっているようです。
アルバイトなどの社員の教育方法についても具体的に書かれています。以前、「さぼてん」に入った時、「胡麻のすり方、ご存知ですか」と本書に書かれているように聞かれました。本書によると、これは常連客かどうかを見分けるための方法として使われているようです。
この本は具体的に面白く書かれていますが、自分が実際に何回か入った店についての再発見があったので、楽しめたということもありました。また「さぼてん」で食事をする機会があったら、現場を見てさらに楽しめると思います。
本書は主に飲食店の経営について書かれていますが、心構えや接客の方法など、他の業界の方が読まれても大いに得るところがあるでしょう。新書本だけに、値段もお手頃です。
2007年06月05日
『東京が駄目なら上海があるさ』
邱 永漢著 2007年6月4日発行 760円(税抜き)
50年以上も前から、株式投資、お金、商売のことについて文章を書かれている邱永漢さんの本です。すでに著作は400以上あるそうです。
本書は現在刊行中の「お金儲けシリーズ」全六冊の四冊目に当たります。シリーズといっても、複数の出版社から出ており、いまのところ全て新書版です。
ちなみにいままでの本書以外の3冊は、
- 『お金持ちになれる人』
- 『損をして覚える株式投資』
- 『起業の着眼点』
です。全て読みやすく書かれています。読みやすさが、著者の本の特徴の一つです。
本書はタイトルからイメージされる内容とは違い、上海についての話などはほとんど出てきません。日本と世界の経済の状況やお金の流れが、マクロの視点から、今後どのようになっているかということがテーマになっています。
印象に残った話をいくつか書くと、
- 地方の時代は終わった
- 昔からの家業は継がない方がよい
- 駄目なときは、まず場所を変えてみる
- 地元では成功できない
日本の地方は衰退傾向にあるので、そこでの仕事にしがみつかないようにということを、いろいろな角度から解説されています。根底にはグローバリゼーションにより、以前は地方に人手を求めていた企業が、外国に向かっているということがあるようです。
講演などで日本の津々浦々を回っておられるので、その時の現地の印象を参考にされているようです。ちなみに、地方で発展しているところは
- 全世界や日本全体の需要を満たす産業のあるところ
- 観光資源があり、しっかり手を入れているところ
- 地元の商店街が駄目になるような新しいビジネスがあるところ
だけだそうです。
今までのことにこだわらないこと、常識にとらわれないこと、時代の流れを読むこと、お金の集まるところに位置することなどの重要性を繰り返し指摘されています。
図書館や地方の温泉旅館、古本屋などに行くと、著者の昔の本を目にすることがあります。昔はどのようなことを書かれていたのか目を通したことがありますが、インフレの時代に即して、借金をして不動産を買うことなどを書かれていたような記憶があります。
少し前の本では、インターネットの商売については否定的でしたが、これについては読み間違えたと別の著書で書かれていました。読みが違ったことについても、ご自身で書かれているところに、かえって自信を感じます。
2007年06月04日
『これから食えなくなる魚』
小松 正之著 2007年5月30日発行 740円(税抜き)
まだアマゾンの画像でのリンクはできないようですが、本書は、幻冬舎新書の新刊です。著者は日本代表として、捕鯨、ワシントン条約、国連などの国際会議に日本代表として出席されているようです。
本書は星4つをつけましたが、魚に興味がない方はやや読むのがつらくなるかもしれません。魚に興味がある方は、うんちく的なことも書かれてあるので、面白く読めると思います。
世界的な水産資源への需要の高まりにより、海産物が不足しつつあるということについては、以前にも『日本の食卓からマグロが消える日』という本でも紹介しました。日本は海に囲まれている国であるため、魚は限りなくいるように錯覚してしまいますが、実はそんなことはないようです。
日本の漁業は倒産状態であるそうです。たしかに本書に書かれているとおり、スーパーの魚売り場や回転寿司では、輸入物が目立つようになりました。自給率も下がっているようです。漁業人口も激減し、半数は60代以上だそうです。将来の日本の高齢化を先取りしているようです。
このような状態になったのは、漁業について戦略がなかったからのようです。日本は、第二次産業の発展には力を入れていたようですが、一次産業と三次産業については、過去に保護しすぎてしまっているのかもしれません。
農業や漁業の第一次産業については、資源不足により、今後重要性が高まってくることが予想されます。市場があまり市場として整備されていないようなので、国としては、保護しすぎるよりも新規参入を促して、発展的な競争ができるような環境を整えた方がよいのかもしれません。
日本人が魚を食べなくなるということは、しばらくは考えにくいため、漁業には市場のあり方によってはビジネスチャンスがあるかもしれません。参入の障壁が高いにもかかわらず必要とされているものに関わる業界は、工夫をすれば利益が得られそうです。
にしん御殿やほたて御殿という言葉もあるように、もともと潜在的には大きく儲けるできることができる業界でもあるように思います。
2007年06月03日
『資本開国論』
野口 悠紀雄著 2007年5月31日発行 1800円(税抜き)
野口悠紀雄氏の新刊です。今まで部分的に書かれていたことが、体系立てて1冊の本にまとめられています。経済理論を駆使して論理的に書かれていますが、要点をかなり端折ってまとめると以下のようになります。
- 格差問題の原因はグローバリゼーションによる世界的な賃金の平準化
- 金融緩和・円安政策を続けても日本経済は回復しない
- 資本開国をおこない、産業構造を効率化する必要がある
- 日本は資産大国なので、資産の運用効率を上げるのがよい
財政赤字以外にも、年金の不足額が800兆円程度あるということです。企業で考えると、SPCによる負債の「とばし」と本質的には同じであるという印象を受けます。
他にも、法人税の減税は企業の投資を増やさず経営者や株主に富を移転させ格差を拡大させる、財政の再建には税制の改革が必要である、出生率を上げることは労働・年金問題の改善にはつながらない、小泉改革は古いタイプの産業を温存したなどの話があります。
要は、日本ではさまざまな点で効率化が必要とされているということです。
読んでいるうちに脳みそが汗をかいてしまいますが、噛みごたえのあるスルメを食べたような読後感がある本でした。
2007年06月02日
『世界バブル経済終わりの始まり』
松藤 民輔著 2007年6月5日発行 1500円(税抜き)
世界バブル経済終わりの始まり──実践・臆病者のための黄金の投資学
著者は、国内外の証券会社で数々の業績を上げ、金鉱山に投資する会社ジパングを設立されています。
以前に同じ著者の以下の本を紹介しました。根本にある主張は同様ですが、本書は、前著よりより一般向けに読みやすく、具体的に書かれています。
アメリカ経済終わりの始まり──脱ペーパーマネー経済時代の超資産運用論
著者の主張は明快で、以下のようになります。
- FRBの金利引き下げをきっかけとしたダウの暴落のはじまり
- ダウは暴落の前に暴騰する
- 金を中心とした実物経済が高騰する
以上のようになる理由は、本書に詳しく書かれていますが、主な原因としては、アメリカの不動産バブルの崩壊です。ダウの適正値を7000〜8000ドルとされています。暴落の前に、乱高下があるということです。
日本株についての考え方もはっきりしており、長期的には上昇し、5〜10万もあるとしていますが、中期的には、ダウの暴落に連られて下落するので、今は現金を蓄えておき、下がったところで購入すればよいとしています。
著者のいわれるとおりに世界の相場が展開するかどうかはわかりませんが、はっきりとポジションを取られているため、本当にそのような流れになると考えているということはわかります。
すでに1000億円相当の金山を保有されているそうです。ポジショントークも勘案する必要がありますが、信念に基づいて集中投資をしている方の主張は、興味深いです。
投資についての読み物として読むだけでも、非常に面白い本です。著者の世界の投資業界における具体的な経験や、資産運用や投資についての考え方が、わかりやすく書かれています。自分でいろいろと考えて投資をしている方には、考え方を学ぶ上でおすすめの本です。
2007年06月01日
『グーグル革命の衝撃』
NHK取材班著 2007年5月25日発行 1000円(税抜き)
今年の1月にNHKスペシャルで放映された内容が、書籍化されたものです。以前に、ベストセラー『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』を読まれた方であれば、新たな衝撃を受けることはないかもしれません。NHKの取材力により、グーグル本社で取材をして幹部にインタビューをしているところなどが、読みごたえのあるところです。
グーグルにより世界で情報のフラット化が起こりつつあるということがよくわかります。著作権や個人情報などの問題点についても、かなりのページを割いて取材されています。
ちょっと話がそれますが、相場のテクニカル分析でエリオットの波動理論があります。上昇トレンドの時は、第1波から第5波まであり、一般的に3段上げの形を取ります。ものごとが広まっていくときにも同じような形を取ることが多いように思います。グーグルで考えてみます。
まず、グーグルの革新性や価値を、インターネット業界の人が注目します。これが第1波で、比較的小さい上昇波です。
次に、マーケティングをしている企業の担当者や、知的好奇心がある人々に知られます。これが第3波です。SEOが話題になったり、『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』などの本が売れていた頃です。
現在は、3番目の上昇波である第5波の直前のあたりであると思われます。一般的に、ある事柄について、NHKが特集を組んで放映するようなときは、最後の上昇過程の直前であることが多いように思います。
株式投資だと、そろそろ売りを意識し始めないといけない時期に当たります。



























