2006年12月22日
『自分の小さな「箱」から脱出する方法』
アービンジャーインスティチュート著
金森 重樹監修 冨永 星翻訳
2006年11月5日発行 1680円
5年ほど前に出版されて、絶版になっていた幻の名著のリニューアル版です。内容自体は同じですが、マーケティングで著名な金森重樹さん監修となっており、商品としてパワーアップしています。
この本を簡潔に要約すると「汝自身を知れ」ということにつきます。いきなりそのようにいわれても、「???」な方にとって、この本は人生を変える力を秘めているかもしれません。
内容は会社におけるビジネスパーソンを中心とした対話形式となっており、形式、内容ともに、ソクラテスの問答法にヒントを得ている印象を受けました。
ビジネスシーンが舞台となっているため、ビジネス書ということになっていますが、ジャンルを問わずためになる内容です。
自分自身で認識できない自我の内部と境界を「箱」に例えています。順序としては
- 箱の存在に気付く
- 自分が箱に入っていることを認識する
- 箱から出る
のようです。本書には以上のような点を軸に、具体例、陥りやすいピットフォールなどが具体的に述べられています。
この本を読んで箱から出たつもりになっていても、さらに箱があり、その箱の存在に気付かないということはよくありそうです。箱から出たときにも、さらに箱があるのではないかという「無知の知」をつねに意識できるようになったときに、本書の役割は終わったといえるでしょう。
一つ一つの箱から出たときは、禅でいうところの小悟、最終的に箱がなくなったときは、自分と自分以外の区別がなくなったときであり、禅でいうところの大悟でしょうか。
そのように読むと、本書は宗教的な本でもあります。読み方によっていろいろと解釈できる本です。