2007年02月08日
『バブルアゲイン』
伊藤 洋介著 2007年2月5日発行 1500円(税抜き)
著者は東京プリン(クリックすると演奏が始まります)の伊藤洋介さんです。1989年のバブルの頃にサラリーマン歌手「シャインズ」としてデビューし、活躍されていました。
著者はバブルの時代に就職活動され、今はなき山一証券で働かれていました。バブルの頃の証券会社といえば、不動産業界とならんでバブリーであった業界であり、本書では、エッセイ風にその頃のエピソードが語られています。
「ワンレンボディコン」、「ハウスマヌカン」、「24時間タタカエマスカ」いずれもバブルの時代をご存じの方は懐かしい響きのある言葉ですが、それぞれ本書でエッセイのテーマになっています。他に証券会社での給与明細、ボーナス、住宅手当、会社の購入などについて景気のよい話が出てきます。
私自身は、バブルの頃は大学生でした。景気の良さは、アルバイトの時給の高さなどくらいでしか直接的には恩恵を受けていなかったと思います。社会人は楽しそうでしたが、学生にはあまりお金は回ってきませんでした。当時は売り手市場のため、就職活動でフランス料理などの高級料理をあちこちでおごってもらったなどという話を聞く機会もあり、まさに本書にあるエピソードの通りでした。
本書は直接的な投資の勉強にはなりませんが、当時を知る方には懐かしく、知らない方は当時の雰囲気を知る意味で興味深く読めると思います。
当時は社会全体が躁状態でした。バブルの時期については、いつも躁状態が思い浮かびます。躁状態では、活動性の亢進、自我の肥大、多弁、注意散漫、多幸感、不眠などが症状として出てきますが、バブルの時代も日本全体に同様の状態があったような気がします。バブルは集団的な躁状態ともいえるかもしれません。
躁状態では、自分が調子よいという自覚はあるのですが、ほとんどの場合病気であるという病識はありません。本人は絶好調ですが、トラブルが増えて周りが困ることがよくあります。そのへんも似ているかもしれません。外国から見たら日本は困った存在であったことでしょう。
でも、躁状態の人は躁状態であることを楽しんでいることが多く、バブルについても、当時の日本では、じつは多くの人はその状態であることは楽しんでいたのかもしれません。当時は社会にウキウキするような雰囲気がありました。数年前にもITバブルがありましたが、ウキウキ感では比べものにならないような気がします。