2007年02月26日

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『マネー革命―NHKスペシャル (2)』5

相田 洋、NHK取材班 茂田喜郎著 2007年2月20日発行 1070円(税抜き)

マネー革命―NHKスペシャル (2)

約1ヶ月前にこのブログで紹介した『マネー革命(1)』の第2巻です。1巻のテーマはヘッジファンドでしたが、今回のテーマは金融工学です。

江戸時代の大阪の堂島に世界初の先物市場があったというところから話が始まり、シカゴで世界初の金融市場ができた話につながっていきます。

その後、マーコビッツによるポートフォリオ理論の誕生のエピソードなどが続き、古代ギリシャの哲学者ターレスがオプション取引をしていたなどの話が出てきます。

本書の一番の読みどころは、たまたまLTCM(Long Term Capital Management)の絶頂期から破綻の時期にかけて取材と制作が行われたため、ロバート・マートンとマイロン・ショールズの二人のノーベル経済学賞受賞者に破綻前と後に直接インタビューしているところです。

また、オプションの理論価格を計算するブラック・ショールズ式を証明するために使った「伊藤の定理」を作った伊藤清博士に直接インタビューをしているところも興味深く読めました。自分の定理によって証明されたブラック・ショールズ理論が、ノーベル経済学賞を受賞したということを知らなかったエピソードなど、数学者だけあって脱俗的なインタビュー内容でした。伊藤清博士は昨年第1回ガウス賞を受賞されたことも記憶に新しいところです。

伊藤清博士は数学的な問題を解決するのが面白くて「伊藤の定理」を導き、ブラックもショールズもパズルを解く知的好奇心を動機としてブラック・ショールズ式を導きました。その結果、世界の金融市場は効率化されて大発展したわけです。

金融市場を効率化するための公式が、ある意味遊びといえるような知的遊戯から発生しているのは興味深いことです。他の科学の成果も多くの場合そうですが、偉大な科学的業績は科学者の知的好奇心から生まれています。

マーケットの効率化を促進した理論が、効率化と対極にある知的好奇心という「遊び」から生じているという認識は、今後のさまざまな分野における効率化を考える上で非常に重要であると思われます。

この本のもとになったNHKスペシャルも非常に良質な啓蒙的番組であると思います。番組で用いられているオプションを解説するために作られた、わずか5分のターレスのアニメを作るために3ヶ月もかけており、かなりの「ムダ」があったようです。

世の中効率化することがはやっていますが、効率化のためには「大いなるムダ」が必要なようです。



investmentbooks at 22:36│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--ファイナンス理論 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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