2007年05月13日
『ビジネスの“常識”を疑え!』
遠藤 功著 2007年5月2日発行 800円(税抜き)
著者は早稲田大学ビジネススクール教授であり、コンサルティングファームであるローランド・ベルガー日本法人会長でもあります。過去に、『見える化』、『現場力を鍛える』、『ねばちっこい経営』などの著作があり、それぞれ売れていたようです。
本書の内容はタイトルの通りで、ビジネスの特徴を、多面性、進化性、非再現性の3つにまとめています。これら3つの特徴があるため、過去の常識にとらわれていてはならないということになります。違う書き方ですが、以前紹介した木村剛氏の『頭が良い人は親指が太い』においても、本質的には同じことが言われています。
本書では、戦略、マーケティング、オペレーション、人材活用、マネジメントの5つの観点から全部で60の具体例が挙げられています。5つの観点のうち、印象に残ったものをそれぞれ一つずつ書くと、
- 敵対的買収は悪?
- 少子化で子供市場は縮小する?
- 非効率では儲からない?
- これからは転職でキャリアアップすべきである?
- 株式の持ち合いはよくない?
などがあります。最近よく言われていることについて、敢えて反対の視点から書かれているように感じるところもありますが、視点を変えると参考になることがあります。将棋のプロが、盤面を相手の方から見ることがあるのも、同じようなものかもしれません。
本書の最後に、常識の罠に陥らないための、5つのポイントが述べられています。
- 貪欲に勉強して、まずは常識を学ぶ
- 学んだ知識をベースにして、自分の頭で「考える」「判断する」ことを常に意識する
- 「二次、三次情報」ではなく、自分の五感で集めた「一次情報」を大切にする
- データは「事実の一部」にすぎないと認識する
- 自分の「主観」を最重視する
重要なのは、自分で判断するということですが、忘れてはならないのが、まずは常識を学ぶということです。将棋でも、「定跡は習って忘れよ」という格言があります。上達するには、まずは定跡を覚える必要があります。常識となるということは、過去にそれなりに根拠や有用性があったということです。
ビジネスにおいては、「よく見ると価値があるにもかかわらず人がほとんどいない場所」に自分を置き、人々が価値に気付いてわっと押し寄せるところから利益が生まれます。常識になっているところは、すでにたくさんの人が押し寄せたところです。そこではほとんど利幅は取れません。本質的に株式投資と同じです。