2007年07月17日
『つながりすぎたグローバル経済』
バリー・C・リン著 岩木 貴子訳
2007年5月18日発行 1890円(税込)
オープンナレッジという新興出版社の本です。この出版社から出された本を、これまでにも2冊ほどご紹介しましたが、いずれもアメリカの視点から書かれた経済についての読みごたえのある本でした。本書についても、同様なことが言えます。
著者はニューアメリカ財団の上席研究員で、雑誌『グローバル・ビジネス』の編集責任者を7年間務めていたそうです。本書は、アメリカの国がいかにしてグローバリゼーションを展開したかについて、問題点を数多く指摘しながら、具体的な企業を数多く登場させて、現状についてやや批判的な視点から書かれています。
グローバリゼーションとは、要するにアメリカ企業の途上国へのアウトソーシングであると捉えています。株主の利益を最大化するために、市場原理に基づいてここ20年くらいで世界中に拡大しました。
著者によると、完全に市場原理に委ねてしまうと、リスクが大きくなり、株主が搾り取るだけ搾り取ったあとは抜け殻だけが残るので、もう少し計画的に市場をコントロールすることが必要であると説かれており、最後の方で具体的な処方箋も述べられています。
また、企業は誰のものかという議論もあり、株主至上主義はアメリカでも誰もが自明に思っていることではないようです。
本書ではしばしば日本経済について言及されており、二昔くらい前のアメリカでは、日本経済の存在感はかなりあったようです。ニューズウイークか何かの20年くらい前のアンケートで、ソ連の軍事力より日本の経済力の方が脅威であると感じていたアメリカ人の方が多かったという記事があったように思います。
本書を読むと、グローバリゼーションがアメリカの必死の生き残りをかけた国家的な政策であったことが分かります。自分よりも大きなものを目にすると、脅威のみを感じてしまいますが、みなそれなりに余裕がないということが真実に近いようです。