2007年10月25日
『新しい株式投資論』
山崎 元著 2007年10月29日発行 756円(税込)
新しい株式投資論―「合理的へそ曲がり」のすすめ (PHP新書 488)
中国ネタが続きましたが、本来のテーマである書評に戻ります。
著者は金融機関を含めたさまざまな職場で働かれている方で、過去にファンドマネジャーもされています。転職についての本などもあります。
本書は株式投資の本を一通り目を通したという方が読むと、面白く読める本です。シニカルな語り口が目立ちますが、著者が株式投資や市場について思索を深めることを楽しんでいることが伝わってきます。
一般的な本に書かれているもっともらしい理論について、著者がさらに深く掘り下げて疑問を呈する内容になっています。高度なことがさらりと書かれており、うっかりすると重要なことを読み過ごしてしまいそうです。
著者によると、株式投資は努力で上達するものではなく、「センス」を身につける必要があるそうです。本書は「センス」についても述べられています。
金融をヒトの脳を分析することにより研究する、比較的新しい分野である「ニューロ・サイエンス」についても述べられています。脳との関係について考え始めると、投資の意思決定において人間の自由意志がどこまで働くのかということが一つの大きなテーマになると思います。
そもそも自由意志が、投資に限らず存在するかどうかということを脇に置くとしても、投資において実は自由意志が働いていないとすれば、ヒトの認知パターンを解析することが、投資で利益を上げる一つの方法となることでしょう。
個人的には暴落の局面で買いを入れるとリターンがよくなるのではないかと思っていますが、これは恐怖心によるものです。
同様にバブルの時に空売りを入れるのもよさそうですが、暴落の場合にある程度の下限があることに比べると、人間の楽観さについては青天井な場合があるので、暴落時に買いを入れるよりはリスクが大きくなります。
PERについてはいくら下がってもせいぜい5倍とかですが、上がる場合は利益が出ていない場合など、理論上は無限大まであり得ます。
もしも自分が専業でトレードをするならば、大きく下がったところで買いを入れるというスタンスをとることでしょう。