2007年12月05日
『成功の瞬間』
主藤 孝司著 2007年11月29日発行 1470円(税込)
著者は起業家大学を主宰されており、今までにも起業などに関するいくつかの著作があります。本書はサブタイトルにもあるように、ビジネスにおける直感、偶然、シンクロニシティなどについて、成功した起業家に対するアンケートやインタビューに基づきまとめられています。
アンケート結果では、予想されるように、直感や偶然などの重要性に対する肯定的な結果が得られているのですが、アンケートという調査方法の不十分性について、最初に著者自ら疑問を呈されています。
著者としてもかなり力を入れられた本のようであり、4年間かけて書かれたそうです。著者からすると、本書に取りあげられているテーマの存在と重要性は体験的に自明であり、なんとかその自明性を伝えようとされていますが、言葉の限界にもどかしさを感じているという印象を受けます。
事業の成長の段階ごとに必要とされることが明快に述べられています。起業には勉強は必要ないということが書かれています。
勉強が必要ないのは本書にあるように、あくまで直感やひらめきがとくに必要な最初の段階の時期のことです。事業の最初の段階で直感に従って行動することなく勉強だけしていてもダメということです。
偶然やシンクロニシティの存在についても、さまざまな実例とともに述べられています。また、運のよさの重要性についても、最後に強調されています。
偶然の反対は必然です。概念としては対になるものですが、実は同じものを別の観点から眺めているに過ぎないと思います。意識の領域では偶然ですが、無意識の領域では必然です。
言葉として矛盾があるかもしれませんが、無意識を意識的に捉えることができれば、偶然は必然であると思われることでしょう。捉え方は人によって異なるので、ある人によっては偶然に思えるものが、別の人には必然であると思われたりします。
無意識をほとんど意識化できない人にとって、世界は偶然ででたらめに満ちているように思われるかもしれませんが、無意識を意識化できる人にとっては世界は必然であり調和しているように感じられることでしょう。
著者が一番に言いたいのは、無意識を意識化しようということであると思われます。
本書に書かれている概念は、ビジネスについて述べられるとすぐには納得できない方もいるかもしれません。だからこそ本書の意義があると思うのですが、本書で説明されている、直感、ひらめき、偶然、シンクロニシティなどの感覚は、実は多くの人が恋愛において経験していることです。