2007年12月25日
『子どもをナメるな』
中島 隆信著 2007年12月10日発行 735円(税込)
子どもをナメるな―賢い消費者をつくる教育 (ちくま新書 697)
経済学者による教育論です。「義務教育の目的は、賢い消費者をつくること」であると主張されています。「賢い消費者」とは、「自分の人生をどのように楽しめばよいか知っている人」だそうです。
確かに楽しむというのは人間の重要な能力です。どのような人が最も優れているかと考えると、いろいろと考え方はあると思いますが、楽しむ能力がある人かもしれません。
子どもには子どもの合理性があるため、モラルよりも損得によって導くような教育の方が望ましいという、人によっては感情的になってしまいそうな意見が述べられています。
感情的になってしまう人は合理的に、合理性を重視しすぎる人はモラルを強調するというようにバランスを取るのがよいかもしれません。合理性を教える際に最も問題となってくるのは、教える方が合理的に考えることができるかどうかということです。本当の意味で合理的に考えられる先生は少ないかもしれません。
それぞれの教科についても、個別に著者の意見が述べられています。
数学については確率の教育を重視するべきであるとのことですが、たしかにそうです。学校の勉強で最も日常生活において役立つのは確率・統計的な物事の考え方です。株式投資においても、ポートフォリオ理論を理解する場合など、統計的な考え方が必要です。
国語については、「聞く」「話す」ということの重要性を強調されています。個人的には、国語は文章を通じての論理的な読解力をつけること、本を読むことの楽しさを教えるのがよいと思います。
社会は平和の価値を教えることが重要であると書かれています。平和は重要であると思うのですが、相手があることなので、合理性を追求した場合戦争が必要という結論が出てくることもあるかもしれません。もちろん戦争がない方がよいとは思うのですが。
理科は自然の偉大さや恩恵、環境問題を中心にするとよいそうです。長生きすることに備えて、健康を維持することの重要性や方法についても教えてもらいたいところです。
英語は「聞く」ことに力を入れるべきだそうです。以前と比べるとだいぶん改善されたように思いますが、まだまだかもしれません。簡単な文章を数百個とことん覚えてしまうのもよいかもしれないと思います。
その他、体育、音楽、美術などについても著者の見解が書かれています。また、恋愛や結婚についても教育されるべきだそうです。どのように教えるかは難しいとは思うのですが、もう少し本質について考えてもよいかもしれません。
教育の最も重要な役割は、学ぶことの楽しさを教えること、わからないときはどのようにすればわかるようになるかという方法を教えることの二つの点にあると思います。
学校を卒業した後に、勉強はつらいものであると思ってしまう人の数が少なくないことを考えると、本来とは逆の役割を果たしているのかもしえません。