2008年01月04日
『外国人労働者受け入れは日本をダメにする』
小野 五郎著 2008年1月8日発行 1000円(税込)
外国人労働者受け入れは日本をダメにする (Yosensha Paperbacks 34)
タイトルが内容をそのまま表しています。雑誌『ウェッジ』に載せられた内容が加筆されてペーパーバックになったもののようです。
著者は外国人労働者受け入れに対しては否定的ですが、頭ごなしに否定しているだけではありません。
著者が言いたいのは、外国人労働者受け入れには、それなりの覚悟と準備が必要であるということです。しかしながら、現在の日本の状況ではとりあえず少子高齢化により不足する労働力を補うという短期的な視点しかないため、移民を受け入れるための覚悟と準備ができていないため「日本をダメにする」となります。
労働力不足を解消するために移民を受け入れるよりもまずするべきことは、産業構造の改革による労働生産性の向上であるということです。古い産業構造を維持するために移民を受け入れるのは、温存するべきでない産業を延命させるという、経済発展とは逆の流れとなります。
途上国への製造業の移転が行われるようになってしばらく経ちますが、これは日本の一部を外国に広げてそこに外国人労働者を囲い込んでいるということになります。直接目に入らないところで外国人と競争しているということですが、目に見えるところで同じ状況が展開すると、たしかに問題になりそうです。
移民受け入れの是非についての結論を本書だけで出すことはできませんが、議論を尽くすべきであるという本書の主張には賛同せざるを得ません。移民についてのコストやリスクについて事前の綿密な考察が必要です。
結局のところ問題の本質は、議論を尽くさずに目先のメリットだけに基づいて話を進めてしまうというところにあります。古く非効率的な産業構造を維持するという意味では、移民問題は公共投資と似ていますが、非可逆性が強いため、より慎重かつ長期的に扱うべき問題であると思われます。
トラックバックURL
この記事へのコメント
たしかに世界全体で考えると、また新たな視野が広がってきそうです。移民問題のコストベネフィットの計算が難しいのは、人の心理などの定量化しにくい要素が大きく関係するからかもしれません。