2008年02月05日

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『個人投資家がマーケットで勝てない本当の理由』5

渡辺 信一著  2008年1月18日発行  1995円(税込)

個人投資家がマーケットで勝てない本当の理由―ファイナンス理論が証明する投資の真実

最近は日本の株式市場の状態がよくないので、本書はマーケティング的にはよいタイミングなのかもしれません。しかしながら、株式投資の本に興味を持つ人の絶対数が減少する分、必ずしもよいタイミングでないかもしれません。

本書はサブタイトルにもあるように、ファイナンス理論によって個人投資家がマーケットで勝てない理由を説明している本です。ある程度の数式も出てきますが、本書の内容の理解に、数式の厳密な理解は必ずしも必要ありません。



本書の一番の目的は、日本における金融資産の運用が間接投資から直接投資に変わるにあたって、個人の株式投資などが推奨されるような風潮になっていますが、そのことについて警鐘を鳴らすことです。中途半端にやるならやらない方がよいようです。

一般の人が安易に株式投資市場に参入するのは、羊が狼の群れのなかに放り出されるようなものだそうです。著者も業界に長くいた方ですが、ご自身では株は買われないそうです。

本書で主に説明されているのは、効率的市場仮説、債券と株式の本質的な違い、PERの本質、ROEと企業価値、デリバティブ、コーポレート・ガバナンス、外国証券投資、ヘッジファンドとリスクなどについてです。いずれも伝統的なファイナンス理論に基づいて解説されており、ファイナンス理論を知らなければ、歯ごたえのある内容になっています。

個人投資家は基本的には市場に勝てないとしていますが、それでも最後に一応の戦略が以下のように書かれています。

  1. インデックスファンドを侮ってはいけない
  2. 株式は、インフレに対するヘッジ手段となる
  3. 長期投資が有利であることを自覚する
  4. 銘柄選択に自分のポリシーを持つ
  5. 個人投資家の優位性を活かす
  6. デリバティブが組み込まれた商品を買わない
  7. 外貨建て商品を安易に買わない
  8. 分散投資の効果を狙う
  9. あらゆる情報に敏感になる
  10. チャートを見ただけで投資しない

個人的には、市場の状態がよくないときにインデックスを買うのがよいのではないかと思います。市場がよくない状態がわからない場合は、ドルコスト平均法でインデックスを買い続けるのがよいかもしれません。

本書は理論的な本なので、現実にそのまま適合しないとは思いますが、理論的な原則を知っておくのは必要です。病気の治療もそのままガイドライン通りに行くことは少ないのですが、まずはガイドラインとその理論的な背景を知っておく必要があります。

また、本書は一般的に誤解されやすいことを中心に書かれているため、投資における常識を理論的に見直すためにも役に立つ本です。

株式投資は経済や市場心理の勉強になるので、たとえいくらかの損をしたとしても授業料と考えて参加してもよいのではないでしょうか。高すぎる授業料がいやであれば、少額の参加でもよいでしょう。ある程度の否定的な体験をするにしても、新しいことは役に立ちます。



investmentbooks at 23:55│Comments(2)TrackBack(0)clip!本--ファイナンス理論 

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この記事へのコメント

1. Posted by 後田亨   2008年02月06日 20:02
はじめまして、「生命保険の『罠』」を書いた後田亨です。

その節は、「我が意を得たり!」と感じる講評を書いていただき、深く感謝しています。いろんな場面で「暴露本」呼ばわりされるたびに、”お気に入り”に登録した、こちらでのコメントを読み返し、「自分は、至らないところも多いけど、根本的にはけして間違っていない!」と意を強くしてきました。本当にありがとうございます。


ところで、今日、拙著に私の勉強不足から、一般の方々に誤解を招く記述があったことが判明しました。

訂正のための正式なコメントを出すには、今少し時間がかかりそうです。が、後日でも、上記のアドレスから弊社のブログにアクセスしていただければ幸いです。


以上、今日、取り上げられたテーマとは無関係ですが、期日を遡って書き込みをしても、貴殿に読んでいただけないかも?と思い、ここに書かせていただきました。ご了解ください。
2. Posted by bestbook   2008年02月06日 22:09
著者よりコメントいただきありがとうございます。

ブログの書評について評価もいただきありがとうございます。著者よりそのように言っていただけると、紹介させていただいてよかったと思います。

紹介した御著書には、ブログにも書きましたが、情報提供を越えた「想い」が伝わってきました。そのような本を紹介できる機会を与えていただき感謝しております。

訂正の件は了解しました。ブログを読んでいただいている方々にも、紹介した手前、訂正を報告する方がよいと思いますので、コメントが出ましたら、ブログの記事でも書かせていただきます。

コメントにつきましても事情了解しました。わかりやすいように、このコメントの自分の名前から『生命保険の「罠」』の記事にリンクを張っておきます。また、記事の方からもこちらにリンク張っておきます。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
このブログについて
2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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