2008年02月06日
『サブプライム 逆流する世界マネー』
中井 裕幸著 2008年2月11日発行 1575円(税込)
サブプライム逆流する世界マネー―経済危機が投資チャンスに変わるとき
著者は証券業界でストラテジストをされている方です。本書はサブプライム問題の最中である昨年の11月に、著者が現地であるアメリカで取材された内容を軸にして、サブプライム問題の仕組みと今後の見通しについて解説されている本です。
本書のウリは、アメリカでの関係者に直接話を聴いているところにあります。ちょうど新聞と専門書の橋渡しをするくらいの内容になっています。
著者の結論は次の3つだそうです。
- アメリカ住宅市場の不振は2008年もまだ続く。
- FRBは、金融機関が隠している損失を早く明らかにするべきと考えている。
- アメリカ金融市場が落ち着くのは、金融機関の損失が明らかになってからだが、損失時価の評価は難しい。
結局のところ、サブプライム問題の難しさは損失が確定しないところにあるようです。損失を確定させにくい理由としては、
- 世界中の金融機関が証券化されたサブプライム関連証券を保有しており全体を把握しにくいこと
- 証券自体の価値を確定させにくいこと
の二つが主にあると思います。
確定させてしまえば、証券を買い取り、毀損した資本を埋めれば金融危機にはならないでしょう。価格をつけて市場でやりとりできる状態というのは、まさに金融市場を成り立たせる根幹です。
サブプライム問題がどのようになるかは、さまざまなシナリオがありますが、今のところ確定したものはありません。はっきりしないと皆が思っていること自体が、問題です。
サブプライム問題と絡めて日本の株式市場についても触れられていますが、相対的に割安で安全性の高い日本市場にお金が流れ込んでくる可能性があるかもしれないとも書かれています。
現在の日本市場がバリュエーション的に割安なのは確かですが、最悪のシナリオである世界金融恐慌が起これば、さらに日本市場が暴落する可能性も完全には否定できず、何とも言えないところではあります。そうなったらそうなったで、超割安で買いのチャンスです。