2008年02月17日
『ニッポン経済の「ここ」が危ない!』
竹中 平蔵/幸田 真音著 2008年2月15日発行 1050円(税込)
ニッポン経済の「ここ」が危ない!―最新版・わかりやすい経済学教室
竹中平蔵元大臣と小説『日本国債』などのベストセラーがある幸田真音氏の対談です。竹中元大臣が大臣を辞職してからの日本の現状をどのように見ているかということが、本書の読みどころです。
対談で話している両者の分量は同じくらいなのですが、竹中元大臣の話の方が印象に残る本でした。あまり期待せずに読んだのですが、思っていたよりも面白い本だったと思います。
各章のタイトルを眺めると、おおまかな内容がわかります。
- 構造改革、是か非か
- 金融立国ニッポンへの道筋
- 資産運用の時代と新しいライフスタイル
- 頑張れニッポン
本書を読むと、竹中元大臣が現状を現実的に把握し、その問題を合理的に解決する視点があるということがよく分かります。両方とも今の日本の政治家に求められる能力です。
小泉・竹中コンビの時の日本の株式市場は好調でした。小泉元首相は経済のことはよく分かっていないという評判でしたが、そのことを自覚した上で自分ではよく分からないことをよく分かっている人に任せるということができたという意味で、やはりリーダーとしては優れていたように思います。
マーケットもそのあたりを評価して、当時は日本株が上昇していたのでしょう。現在の日本の株式市場の状態を考えると、やはり現行の日本の政策は外国人投資家からもあまり評価されていないのかもしれません。
結局日本をどのようにすればよいかですが、竹中元大臣がコンパクトに述べているところを書くと、
「私は日本がこれから生きていく道は、金融・情報と文化、観光だと申し上げているんです。」
となるようです。GDPの多くを占めるサービス産業に力を入れるということです。もちろん、モノ作りの重要性も踏まえた上での発言です。
観光に力を入れる根拠としては、世界における五十年観光周期説という説があり、1960年代の次に2010年代の山が来るそうです。日本の観光産業が盛り上がれば、衰退傾向にある地方が活性化するきっかけにもなりそうです。
地方の温泉地などに行って感じるのですが、たしかに地方は観光資源として宝の持ち腐れになっているところがあるように思います。料理もおいしいし、旅館の建物も日本らしい風情があり、サービスも行き届いています。日本人が温泉で癒されるということもありますが、日本らしさを感じたい外国人にとっても、潜在的な魅力が大きいのではないでしょうか。
本書を読んでいて感じたことの一つとして、竹中元大臣は本人も意識されていないかもしれませんが、総理大臣として日本を改善したいということがあるのではないでしょうか。現状の政策への不満、具体的な改善策などもあり、歯がゆさもあるとすれば、将来的に自分が何とかしたいと思うのは自然な流れのような気がします。本書を読んでいると、日本にとってもその方がよいのではないかと思えてきます。