2008年02月23日
『自分探しが止まらない』
速水 健朗著 2008年2月29日発行 735円(税込)
著者はフリーランス編集者・ライターをされている方です。団塊ジュニアである1973年生まれであり、本書の内容は、著者の生まれた時代に大きな影響を受けているようです。
本書のテーマは「自分探し」です。歴史的なこと、社会現象的なことなど数多くの事柄について、具体的に詳しく述べられておりいろいろな点でよくまとめられている本です。
「自分探し」は自己啓発本とも深い関係があります。自己啓発本については非常に有用なものであると思いますが、あくまで啓発であり、啓発された後に具体的に何らかの行動をすることが重要です。
自己啓発の役割は、何かをはじめるエネルギー、そしてはじめた後のモチベーションの維持にあります。自己啓発は方便であって、それ自体をビジネスとする以外は目的とはなり得ません。
本書ではどちらかというと、「自分探し」について否定的に書かれているように思うのですが、これは著者が1970年代生まれという「失われた世代」に属していることもあるように思います。
この世代は、本書でも数多くの自分探し的な事柄が紹介されていますが、自己啓発的なものに数多くさらされてきました。それにもかかわらず、啓発された後に社会で具体的に行動に移す機会が与えられてきませんでした。
本書の最後にある参考文献を見ると、著者も数多くの自己啓発的な本を読まれたことが分かります。おそらく最初は、自己啓発を肯定的に捉えられていたのではないかと推測します。
「自分探し」は意識しようがすまいが、実はほとんどの人が行っています。人が何らかの行動をするのは、よりより自分を求めているためです。現状に完全に満足していれば、何かの行動をしようとは思わないでしょう。
「自分探し」で陥りやすい罠は、自分を探す場合は内側だけを探求しても普通は見つからないことです。また、思考だけでも一般的には見つけることができません。
自分を探すのであれば、他者を含んだ外界と関わり、具体的に行動する必要があります。なぜならば、自己は単独に他者から離れた状態で独立して存在するものではありませんし、思考のみならず身体もまた自分だからです。本当の自分の一部だけについて関わるだけでは、自分の全体はわかりません。