2008年03月06日
『港区ではベンツがカローラの6倍売れている』
清水 草一著 2008年3月1日発行 756円(税込)
港区ではベンツがカローラの6倍売れている (扶桑社新書 26)
著者は自動車関係のライターをされている方です。本書はタイトルからすると、自動車についての本のように思われますが、サブタイトルに「データで語る格差社会」とあり、車についての記載は全体の一部です。
ベンツ、豪邸、クルーザー、スーパーカー、別荘、カード、外国人、風俗嬢、生活保護などについての格差が書かれており、著者の前書きに、「”面白格差ネタ本”として、読み始めていただければ幸いです。」とあります。
格差本は数多く出ていますが、本書の特徴としては、格差の上の方についての具体的な記述が充実していることでしょう。新書の格差本は、いままではあまり上の世界のことについては書かれていませんでした。また、富裕層についての単行本はいくつか出ていますが、市場分析やマーケティング的な内容が多いように思います。
著者は、格差の拡大については、自由の拡大の結果と思われており、おおむね肯定的にとらえられているようです。格差の下の方でも、それなりに楽しんで何とか生きていけること、上の方は上の方で享楽的に充実して生きていることが具体的に書かれています。
年収5億円ある方の話や、ブラックカードやクルーザーを持つといかにモテるかという話が出てきます。このような話を読むと、男としてはやや残念な感じがしなくもないのですが、一般的な男性が多くの女性と付き合いたいということを、女性が聞いたときに抱く思いと似ているのかもしれません。
著者も書かれているように、格差が拡大しているということは、社会が多様化しているとも言えますが、本書のさまざまな事例を読むと、そのことがよく分かります。ほんの20年前までの固定的な社会が流動化し、新しい何かが生まれているので、それを目の当たりにするのは実に楽しかったということです。
たしかに現在は、後から考えると大きな変革期だったということになるのかもしれません。将来振り返るときには、日本が良い方に向かっていたということになればよいと思います。
格差について本書ほど肯定的に書かれている新書本は、いままでなかったと思います。本書のような本が新書として出たことは、格差についてのとらえ方が、少しずつ社会において変化しているということを示しているのかもしれません。