2008年03月10日
『パラダイス鎖国』
海部 美知著 2008年3月25日発行 760円(税込)
パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)
アスキー新書の新刊です。今月からタイトルの一部が色つきになって、発売されているそれぞれの本ごとに異なった色が使われています。ごらんのように、本書は「鎖国」という字が緑になっています。シリーズ全体がカラフルで、異なった色遣いが書店で目を引きました。この工夫は効果アリでしょう。
著者はシリコンバレー在住の経営コンサルタントの方です。本書は、ブログ「Tech Mom from Silicon Valley」の内容を発展させた著作のようです。本書を見るまで、「パラダイス鎖国」という著者が作られた言葉は知りませんでしたが、すでに2005年から流行っている言葉のようです。
パラダイス鎖国という言葉の意味は、はてなダイアリーのキーワードによると、
「自分が住んでる国や地域が住みやすくなりすぎ、外国(または他の地域)のことに興味を持つ必要がなくなってしまった状態のこと」
だそうです。本書では、日本がこの状態にあるということをベースに、日本論が展開されています。
著者がパラダイス鎖国に至るストーリーを7つにまとめています。
- 日本はかつて、輸出大国であった
- 日本の企業が海外で競争力を失ってしまった
- 内需主導型になって国内ばかり重視し、産業構造が大きく変わった
- 日本は海外で無視されるようになっている
- 日本はすっかり豊かになり、暮らしやすくなった
- 日本人は、海外にあまり興味を持たなくなってしまった
- 何となく閉塞感がある
ようするに海外での存在感がなくなり、日本人もそれを何とかしようと思っていないことが問題のようです。ちなみに、パラダイス鎖国の先輩がアメリカであることも本書で指摘されています。
処方箋としては、ウェブを利用した「ゆるやかな開国」を提案されています。日本が内側から自発的に変革することがまれなのは歴史が証明しています。少なくとも、多くの国民によほどの切迫感がないと難しいようです。そのような意味で、著者の提案は日本にとっては現実的なのかもしれません。
そのために、方向性としては、多様性を日本に生み出すことが必要と述べられています。このあたりは、ネットと相性がよさそうであり、著者もそれに期待されているようです。そうすると、はっきりとした音頭をとらない変革も可能かもしれません。
このような形だと、変革ということが意識されにくく、気が付いてみたら変わっていたということになりそうであり、そのような「なんとなく」の流れは日本人に合っているのでしょう。
いままで「変人」や「オタク」は日本の組織ではつぶされることが多かったように思います。ネットの世界では、「変人」でも居場所を作りやすく、評価も得られやすいことを考えると、日本は著者の指摘されている方向に流れているようです。
ある程度評価されるようになった場合、そこからさらに発展させるためには、ネットからリアルへの移行がどこかの時点で必要になります。ここのところがスムーズにつながるかどうかがポイントでしょう。
最近はネットで評価を受けることが、その周囲でリアルから関わろうとする人にある程度の利得を保証できるようになってきています。例えば、アクセス数の多いブログのコンテンツを書籍化すれば、ある程度の売上は見込めます。
昔は、「変人」にリアルの世界から関わる人に経済的な見返りを保証するのは難しく、「変人」を発掘するのは、非常にハイリスクな事業でした。ネットの役割の一つに、そのリスクを低下させ、リアルの世界でも通用する「変人」を生んで育むことがあります。








