2008年03月20日

この記事をクリップ! Yahoo!ブックマークに登録 このエントリーを含むはてなブックマーク

『さらば財務省!』5

高橋 洋一著  2008年3月18日発行  1785円(税込)

さらば財務省!―官僚すべてを敵にした男の告白

本書は、すでに本日池田信夫氏のブログで紹介されています。著者はもともとは大蔵省の官僚で、小泉政権の構造改革の時に竹中元大臣の下で政策スタッフとして働かれていた方です。本書では、著者の半生を振り返りながら、構造改革の渦中でいかに「抵抗勢力」である官僚や政治家と格闘したかについて詳しく述べられています。

やはり注目すべきなのは、著者が大蔵省に入省した中では、東大法学部出身ではなく、数学科出身であるということでしょう。



本書でよく話題となるテーマとして、著者が合理的に問題を解決する方法を提案したとき、周囲の官僚から理解が得られないことが多かったということがあります。あくまで一方の立場からの主張ですが、著者が本書で書かれていることを読む限りにおいては、著者の話は合理的で同意できる場合がほとんどです。

しかしながら、優秀なはずの官僚にはほとんど理解されませんでした。それどころが否定的に思われてしまうことがほとんどだったようです。著者はこのことを不思議がられていますが、これには以下のような理由が考えられます。

  • 文系と理系の思考法の違い

霞ヶ関の官僚は東大法学部を頂点としたピラミッド構造であり、ほとんどが文系出身者です。理系は問題を解決するとき、問題自体の解決を優先しますが、文系は問題の解決そのものよりも、問題に付随する政治や人間関係を重視します。圧倒的多数を占める集団の思考法がその集団における主流になるのはしかたありません。

  • 官僚が(数理的には)優秀ではない

東大法学部出身の方は優秀であるとは思いますが、理系の優秀な人と比べるとそれほどずば抜けた能力があるわけではありません。いくら財務省に入省するような方でも、同世代の理系のトップと比べると、数理的な能力は落ちると思います。もともとの素質に加えて、高校・大学でのトレーニングの有無の問題があります。本書でも、著者の数理的な話が官僚に理解されない話がよく出てきます。

  • 官僚の既得権益を侵害している

著者の政策は官僚の既得権益を侵害する内容が多く含まれます。著者が特殊法人をキャッシュフロー法で分析する話が出てきますが、官僚一人一人の価値を同じようにキャッシュフロー法で考えると、著者の行っていることは、官僚一人一人の現在価値を下げる方に作用しています。自分の現在価値を下げる人を嫌わない人はあまりいないでしょう。もしもスムーズに改革を進めるのであれば、下がった分を埋める必要があります。

著者にしても野口悠紀雄氏にしても、理系で大蔵省出身の方が書かれる内容は合理的で納得できることが多いのですが、内部からは異端扱いされるようです。

理系的な思考法だけが優れているとは思わないのですが、国の財務運営は理系の数理的合理性も必要とされる分野です。なにしろ扱う数字の額が、数兆円・数十兆円単位で膨大で、数十億円・数百億円単位の大きな額を扱っているファンドマネージャーでさえ比べものになりません。不適切に処理された場合のマイナスは数兆円単位になる可能性があります。

財務省の官僚の半分くらいは、数理的な才能のある理系の出身者にする方が人材の適正配置になるのではないでしょうか。もちろん、政治的な微妙な調整は文系的な適性も必要なので、すべて理系的な人材を配置しても偏りが出てくるとは思います。あくまでバランスの問題であり、現在の官僚の人材が文系に偏りすぎているということです。



investmentbooks at 22:42│Comments(4)TrackBack(0)clip!本--日本経済 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by 中島悟   2008年03月21日 00:35
>官僚が(数理的には)優秀ではない
東大法学部出身の方は優秀であるとは思いますが、理系の優秀な人と比べるとそれほどずば抜けた能力があるわけではありません。

数理的に優秀であるはずの理工系の大学教官や理工系出身であることが経営陣昇進の不文律であるような日立?のような会社の行動様式は極めて不合理です。医者の集団も同様でしょう。合理的行動を意識的に実践しているのはMBA取得者などはないでしょうか。ちなみに東大では数学科のレベルは高くない(優秀な人は文一と理三に集まる)ことも考え合わせると、なんといっても高橋さんのパーソナリティが一番の要因だったと思います。
2. Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文   2008年03月21日 01:30
bestbookさん、こんばんは。

理系文系で以前から疑問に思っているのが、ビジネス書系ブログの管理人さんの理系率の高さです(私はコテコテの文系)。
私のブログ界隈でも、理系の方が非常に多い気がします。
もっとも、ネットという時点で、理系率が高いのは当然ですかね。
ちなみに橋本大也さんは政経学部なんですが、あの方を文系というのは・・・(汗)。
3. Posted by bestbook   2008年03月21日 22:27
中島さん、はじめまして。
コメントいただき、ありがとうございます。

組織を数理的な人だけで固めてしまうと、別の意味でうまくいかないと思います。人材のバランスを取る必要がありますが、そうすると、経営陣どうしでの調整が大変そうです。

最近はやりの言葉で言うところの「地頭のよさ」、私利私欲の少ない人柄、さらにそのような人がリーダーシップを取れるシステムなどが、組織の発展には必要と思います。

本書の著者には最初に二つはありましたが、本書を読む限りでは、最後に恵まれなかったようです。
4. Posted by bestbook   2008年03月21日 22:45
smoothさん、コメントありがとうございます。

たしかに自分も理系です。理系の中では、文系的な要素の強いジャンルですが(汗)。理系の多さについては、おっしゃる通り母集団の問題もありますね。

ビジネス書が好きな方は、理系でも文系的要素が強い方が多いのではないでしょうか。文系の方は理系的要素が強い方が多いかもしれません。もともと文理の両刀使い的な要素の強い方が多く、仕事の偏りのバランスをビジネス書で取っているのでしょう。

もともとコテコテの方は、文系理系とも仕事以外の本はあまり読まれないかもしれません。

橋本大也さんは文系ですか。あそこまでいかれると文理を超越しているように思います。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
プロフィール
bestbook
家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
このブログについて
2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
ブックマークに登録
このブログをソーシャルブックマークに登録
このブログのはてなブックマーク数
アマゾン検索
月別アーカイブ
QRコード
QRコード
あわせて読みたい
あわせて読みたいブログパーツ