2008年03月28日
『続ける力』
伊藤 真著 2008年3月30日発行 756円(税込)
続ける力―仕事・勉強で成功する王道 (幻冬舎新書 い 4-1)
昨日に引き続いて幻冬舎新書の新刊です。アマゾンの画像は昨日と同じように、まだアップされていません。著者は司法試験の受験指導で有名な伊藤真氏です。過去に『夢をかなえる勉強法』『夢をかなえる時間術』などのベストセラーがあります。
最近は新年度が始まる時期なので、書店での勉強法や仕事術の本の平積みや特設コーナーが目立ちます。この時期決意を新たにする方は多いと思いますが、継続の難しさはご存知の通りです。本書はタイトルの通り、「続ける」ということをテーマにしている本です。
勉強や仕事において継続することは重要ですが、お金を借りる場合や男女関係においても継続は重要です。継続できる能力は、金融においては「信用」として評価されますし、男女関係においては「愛」として評価されます。
銀行はどれくらい確実に継続してお金を返し続けてくれるか、女性は男性がいかに毎日自分に与え続けてくれるかで相手を評価します。返済や与え続けることの確実性により、債権の価値や男性の価値は変動します。つまり継続性は価値そのものです。
毎日1000円ずつ10年間貯金をすることを決意したとしましょう。割引率を3%として計算すると、その貯金をすることの現在価値は約321万円になります。これは決意が石のように固く、100%確実に貯金が続けられると仮定した場合の話です。
もしも自分の意志が強ければ、10年間毎日1000円貯金すると決意した瞬間に321万円が創り出されることになります。でも、10年経たないと321万円を手に入れることはできないのではと思う方も多いことでしょう。
もしもお金を持っている他の人から絶大な信用があれば、10年間毎日1000円をその人に返すという条件で、ポンと321万円をすぐに受け取ることができるかもしれません。これは321万円の借金をするということですね。
その人がポンと321万円を出してくれるかどうかは、継続して返し続ける信頼性、つまり「信用」で決まります。信用がそれほどない場合でも、10年間毎日1000円を返し続けるという条件で、200万なら出してくれるという人はいるかもしれません。返し続けてくれるかどうかが不確実なため、そのリスクを負担する分が差額の121万円となっています。
何が言いたいかというと、「続ける力」は直接金銭的価値に変換できるということです。そしてその金銭的価値は長年の間には、大きな差が生まれるということです。
借金の場合は他者に対する信用ですが、勉強や仕事を続けるということは自分自身に対する信用です。本書は「続ける」ということについて書かれていますが、以上のように考えると、自分自身に対する自分の信用をいかに高めるかということについて書かれている本とも言えるでしょう。
自分自身に対する自分の信用を高めることができると、その結果として他の人は自分に対する信用を自然と高めてくれることでしょう。あることを成し遂げた人が他の人から信用されやすいのは、すでに自分についての信用が確立されているからです。何かを成し遂げることは、成し遂げたこと自体に価値はありますが、それ以外に他者からの信用を創り出すという価値もあります。
他の人に対する信用を高めるためには、まず意志を強くすることや継続する仕組みを作るなどして、自分自身に対する信用を高める必要があります。本書には、試験勉強を中心として、著者の長年の受験指導や社会経験において活用されている「続ける」ための考え方やノウハウが詰まっています。自分に対する信用を高めたい人にとって、得るところが大きい本です。
トラックバックURL
この記事へのコメント
どういうことでも、続けることが一番の難関なのでしょうか。
男女関係でも、切るのは簡単かもしれません。
ご紹介のおかげで、読んでみたくなりました。
習慣にするまでは難しいのですが、人間の行動には「慣性の法則」といったものが働くため、いったん習慣になったことはほぼ自動的に継続します。習慣化してしまえば続けることは難しくはないのですが、習慣化するまでが大変です。
男女関係も、いったんつきあいが始まると同じように自動的に継続しますが、うまくいかない場合も継続しやすくなりますので、「慣性の法則」は諸刃の剣です。
やらないということはやらないことを継続しているということなので、結局人間にとって難しいのは「変化する」ということではないかと思います。続けるのが難しいというより、続ける習慣を作るために自分が変わるのが難しいようです。