2008年04月08日
『家に帰らない男たち』
松井 計著 2008年3月1日発行 714円(税込)
著者はホームレスの経験がある方で、その時の体験を『ホームレス作家』として出版されています。本書は6人の「家に帰らない男たち」にインタビューして、その内容をまとめたものです。
「家に帰らない男たち」ですが、6人中5人が40歳前後から50歳であり、普通に家庭を築いているところに特徴があります。家に帰ろうと思えば帰れるのですが、なんとなく帰らない男たちです。
インタビューがそのまままとめられた本であり、インタビューの内容について著者が思われたことは、その場の感想のような形で書かれていますが、全体としてまとまった考察はとくにありません。どちらかというと、どことなくユーモラスな文体で淡々と書かれているのですが、それだけに内容に臨場感が出ています。
「帰らない男たち」の多くは、普通に仕事をしていますし、妻との仲が悪くはなく、一人を除いては他に女性がいるというわけではありません。たまに帰ると妻もとくに気まずくなく迎えてくれるようです。生活費も入れていますし、子どものことなどで急に必要とされるときには帰る人たちでしょう。
帰らない原因を考えてみたのですが、帰る必然性がないということなのではないでしょうか。注目すべきは男たちの年齢です。40〜50歳くらいの年齢なのですが、この年齢では子どももそこそこ大きくなって、母親一人でも育てられるようになっています。
つまり男たちは、家庭に常駐しなくてもよい存在になっているということです。妻からすると、住みかが確保された状態で生活費さえ入れ続けてくれれば、必ずしもずっと家にいてもらう必要がありません。むしろ、いつもはいない方がよいということもあるでしょう。たまに会うくらいの方が、かえって会ったときの感じもよいようです。
夫からしても、通勤時間や家に帰ってから妻に気を遣うことを考えると、うちに帰らなくなるのは自然なことなのでしょう。家に帰らずにどこで泊まっているかというと、多くの男たちはサウナを居場所にしているようです。
昔であれば、「家に帰らない男」は、檀一雄の『火宅の人』などに書かれているような家庭崩壊のイメージがありますが、最近では円満な家庭生活も可能になってきているようです。
この現象の根底には、男性が女性化しているということがあるのかもしれません。家庭における夫と妻の役割がはっきりしていれば、家庭においてそれぞれ存在感があるため、どちらかの不在は違和感があったのでしょうが、男性が女性化してくると、父親の存在感がなくなるため、不在でも違和感が感じられなくなります。
本書でインタビューされているのは6人の男たちだけであり、時代の傾向として一般化するには不十分ですが、男女の違いが無くなりつつある時代の流れとは矛盾していません。
本屋で本書の売れ具合を見ていると、それなりに売れているようです。売れるということは、共感する人も多いということでしょう。本書の売れ具合から、夫婦関係のあり方も、少しずつ変化しているということがわかります。









