2008年04月11日
『部長の経営学』
吉村 典久著 2008年4月10日発行 777円(税込)
まだ画像が取得できません。タイトルからは、最近売れている『はじめての課長の教科書』を思い浮かべますが、本の主旨はかなり異なります。
『はじめての課長の教科書』は現場における話でしたが、本書は株式市場における株主と企業の関係に対して、中間管理職である部長の役割を提案する内容になっています。
本書では、企業のそもそもの役割、日本企業の現実、同族企業などについて述べられていますが、著者がそれらの分析を通じて最終的に言いたいのは、従業員サイドの代表である部長が、経営者の任免に関与するべきであるということです。
近年、株主の力が世界的に強くなってきており、企業が短期的な利益を出すことに対する圧力が強くなってきています。企業が本当に価値があるものを創り出して、世の中と調和して息長く存在するためには、ある程度長期的な視点も必要とされます。
業界内における新たな価値については、現場の人たちがよく知っており、企業が長期的な視点に立つためには、部長を代表とする現場の声を取り入れる必要があるということです。
上場企業における同族会社の多さ、そして同族会社の経営的な優位性について実際の数字を用いて実証されていますが、このことについてはやや意外な感じがする方もいると思います。企業が長期的視点に立つことの利点を、同族企業の優位性から導く流れになっています。
経営者からすると、株主という外部と従業員という内部の両方からプレッシャーを感じるため、より重圧を受けることになるかもしれませんが、経営者の本来の役割は両者の調整にあります。
内側からの圧力がある方が、経営者も株主に状況を伝えやすく、かえって株主に対する理解を得られやすくなるということも考えられます。
本書にあるのは、過去の日本企業のあり方、最近の株主資本主義の折衷案ともいえる提案ですが、現実的な物事の真理は両極端の中間にあることが多いことを考えると、本書の提案は、今後の企業の方向性を示していることになるのかもしれません。