2008年05月16日

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『セックスレスは罪ですか?』5

エステル・ペレル著   高月 園子

2008年4月25日発行   1890円(税込)

セックスレスは罪ですか?

原書のタイトルは『Mating in Captivity』(囚われの夫婦)であり、日本語のタイトルはもとのタイトルのニュアンスとは異なります。原書では「罪」という概念を軸にはしていませんが、注目を惹きやすいように書名が工夫されているようです。

本書はすでに世界的なベストセラーのようで、現在10ヶ国語以上の言語に翻訳されています。著者のページで各国の表紙を興味深く見ることができます。また、著者がYouTubeに本書と関連する映像をいくつかアップされており、著者の解説を視聴できます。



日本はセックスレス大国と言われますが、本書が世界的ベストセラーになっているということは、この問題は日本に限られたことではないのでしょう。

著者はベルギー生まれの女性で、アメリカでカップルと家族を対象にしたカウンセラーをされており、「エロス研究の権威」と著者紹介に書かれています。本書の内容も表面的には夫婦間のセックスレスですが、その問題を通じてエロティシズムについて考察されています。

著者がカウンセラーをされているため、臨床的な実例が数多く扱われており、記述に具体性があるため、内容がより分かりやすくなっています。

本書に書かれていることを非常に簡単にまとめると、結婚はカップルの絆を安定させるために行われますが、その安定がエロティシズムをなくしてしまうということです。不安定性にはトキメキがあります。利回りの確定した債券よりも、値動きが不安定な株に投資する方がワクワクすることを思わせます。

さまざまなパターンを踏まえて、夫婦間でエロティシズムを取り戻すための工夫が臨床的な観点からもいくつか書かれています。それらの本質は不安定性を利用するということですが、エロティシズムの重要な要素が不確定性にあることを考えると納得できます。

最近は世界的に男性の女性化、女性の男性化が進行しており、男女間の差が減少傾向にあります。結婚は男女が同質化する行為であり、さらに男女間の差を減少させます。性的魅力には同質性と異質性の適度なバランスを必要とするので、男女間の差が減少している現代において、結婚は過度な同質性をもたらすため、エロティシズムが減少するのは避けられません。

本書はカウンセリングなどの工夫によってエロティシズムを取り戻そうとしていますが、カウンセリング自体が女性的な行為です。本書が厳格な一夫一婦制が理想とされるアメリカの臨床家によって書かれていること、著者が女性であることなどのためでしょう。

本書のような本がベストセラーになっていることそのものが、世界が女性化していることを示しています。一夫一婦制は女性性に偏っており、女性的な制度です。本書にあるように、話し合ってカウンセリング的に問題を解決しないといけないということが、まさに時代の流れに「囚われ」ています。

本書はよく書かれている本であると思いますが、前提がすでに女性的であり、女性性を中心とした視点からの本であるということに留意しておく必要があります。

夫の男性性が強ければ、すべてのことを男女間で理解し合おうとは思わないでしょう。性的なことについては男女間の利益が相反するので、もともと理解し合えないのが自然の姿です。理解し合っていないことが夫婦間に不安定性をもたらすため、自然にセックスレスになりにくい構造が出来上がります。



investmentbooks at 23:48│Comments(2)TrackBack(0)clip!本--男女関係 

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この記事へのコメント

1. Posted by えふ   2008年06月07日 00:07
 理解しあってないことが不安定さをもたらし、セックスレスを予防とは、なんだか、皮肉な感じがします。私などは、素朴に理解しようと思ってしまうので。
2. Posted by bestbook   2008年06月07日 01:11
えふさんコメントありがとうございます。

理解すればするほどよいのであればいいのですが、本書によると必ずしもそうでないようです。しかしながら、理解すればするほどよいという場合もあるとは思います。本書に書かれているのはあくまで最大公約数的なことなので。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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