2008年05月24日
『闘う経済学』
竹中 平蔵著 2008年5月31日発行 1575円(税込)
まだ画像がありませんが、竹中元大臣の本です。経済学部のテキストにも使われている旨がオビに書かれています。サブタイトルに「公共政策論入門」とありますが、著者の大臣時代の実務経験を元に、経済を政治の場でいかに展開するかについて書かれています。
経済理論の数式も少し出てきますが、全体的に講義での語り口で明快に書かれているため、あまり読みにくさはありません。数式を理解しなくとも、本書の大部分は理解できるようになっています。
各章のタイトルは以下の通りです。
- ケインズ的常識と闘う
- 「増税論」と闘う
- 金融危機と闘う
- 失業と闘う
- 役人と闘う
- ”既得権”と闘う
- 抵抗勢力と闘う
- 千変万化の政治と闘う
- 権力と闘う
本書を読むとわかるのは、著者が大臣としてされたことは、経済理論を理解した上で、いかに人間の欲望、不安、恐れと「闘う」行為をされたかということです。政治家として在職中のエネルギーのほとんどは闘いに費やされたことがよく伝わってきます。
難しいのは、著者が闘った相手も逆の立場に立つと著者と同じように闘っていることです。問題なのはお互いがそれぞれ自分の立場がそれなりに「正しい」と信じて闘っていることです。
著者は経済の合理性・効率性を拠り所として、著者の相手は既得権やしがらみを「正しさ」の拠り所としています。関係者でなければ、著者の立場での合理性・効率性の方が正しいと思うことでしょう。
問題なのは、闘わないといけないことになっていることです。本当の名人は、闘わないといけない状況にしない人ですが、そのような状況が果たして存在するのかどうかは一つの問題ですが、現実的には闘いは避けられないことでしょう。
著者の経験された闘いは、結局のところ人間の中にある理性と情動の闘いであると思います。政策は理想的には理性で決められるべきものだと思うのですが、現実がそうでないところに闘いが存在してしまう理由があります。
政策を人間の情動的側面と切り離して考えることができるかどうかが問題の本質ですが、難しでしょう。政治の成り立ちが一人一人の国民にあるので、最終的には各個人が政治についてどれくらい理性的な判断ができるかにかかっています。
政治の存在意義は人間が純粋に理性的な存在でないため、情動的な部分を調整することにあることを考えると、政治は本来的に闘いの要素をなくすことはできないのかもしれません。本書のテーマが闘いになるのは不思議ではありません。
今後必要なのは、国民一人一人が理性で判断する割合を増やすことでしょうが、経済学的な思考はそのために役立つと思います。本書はその思考法を学ぶのによい本であると思います。








