2008年05月28日
『サブプライム問題の正しい考え方』
倉橋 透/小林 正宏著 2008年4月25日発行 777円(税込)
まだ画像がありませんが中公新書で先月出た本です。サブプライム問題についての本は何冊か紹介しましたが、本書はよく売れており評価も高いようなので読んでみました。
中公新書は拡大する新書市場において、昔からの装丁と内容を保っています。派手さはないのですが、いぶし銀の味わいがある新書のシリーズです。本書も内容が充実している本でした。
- サブプライム問題とその余波
- 焦げ付いたサブプライムローン
- 国際金融市場への波及
- 日本の住宅金融システムへの示唆
- 今後の見通しと日本の課題
上に記したのは本書の各章のタイトルです。本書のテーマはサブプライム問題ですが、それにとどまらず最近の国際金融や世界経済について、最近話題となっている資源高などのことも述べられており、本書を読むとサブプライム問題のみならず世界経済についても一定の理解が得られます。
新書ですが、サブプライム問題についてあまり遠慮せずに専門用語が使われています。最初に略号表が載っているのも便利です。
サブプライム問題が日本に及ぼす影響や今後の見通しなどについても比較的詳しく乗っています。また日本の住宅金融の歴史などについて触れられているのも参考になりました。
本書は良書だと思うのですが、若干気になったのはやや官を重視する割合が強い点です。著者のお二人がもともと官と関係が深いこともあるのでしょう。タイトルにある「正しい考え方」というフレーズもやや官的な印象を受けます。
たしかにサブプライム問題については、もう少ししっかりルールが規制されていればこれほどの問題にならなかったと思います。おそらく一番の問題は、格付けが正しく行われていなかったことでしょう。格付けがより厳格にされるようにルールを厳しくしておくべきでした。それは官の役割であると思います。
官の役割はルールを整備してゲームを効率化することです。ゲーム自体に参加するのは民と競合するのであまり好ましくないように思います。ゲームのルールをきちんと作るのはゲームに参加して勝つよりも高度な視野が要求されます。
住宅ローンについては市場規模が大きいので、ルールの整備は需要です。サブプライム問題でもわかるように、ささいなルールの不備が大きな経済問題につながります。このことは株式市場にも当てはまると思います。官には効率的な規制を期待したいと思います。