2008年05月29日
『なぜ会社は大きくすると潰れるのか』
不破 俊輔著 2008年5月24日発行 1680円(税込)
著者は北海道ナンバー2の建設設備会社社長をされていた方です。本書は著者が長年経営して拡大してきた会社が時代の波に飲まれて破産するまでの経緯について赤裸々に書かれた本です。
決算書や債務の状況などについても数字が詳しく載っており、内面的な苦悩や葛藤も内省しながら描写されています。著者は小説を書かれていたこともあり、文章も読みやすくなっています。
本書を読むまでは設備会社についての業界の位置付けや事情などは全く知りませんでしたが、本書を読んである程度のことがわかりました。
本屋で手にしたときは馴染みのない業界なのでやや取っつきにくいかとも思ったのですが、実際に読んでみると業界について知らなかったことは読み進めるための障害にはならず、むしろ知らなかったことによって逆に興味深く読めたくらいです。
著者の会社は、設備会社、中小企業、地方企業などここ数年の構造改革の影響をストレートに受けた要素をほとんど持っています。また、著者も本書で書かれている内部留保の低さ、自己資本比率の低さなども決算書に克明に表れています。
本書を読んで破産の原因を後知恵で述べることは容易ですが、それはあくまでも第三者の分析に過ぎません。当事者となると見えないことはありますが、当事者にしかわからないこともあります。
本書の読みどころは、破産を経験するまでの社長としての著者の内面がストレートに描かれていることです。不安や恐怖などが描かれているのですが、破産は経験しないにしても、中小企業の経営をされている方であれば日常的に大なり小なりそのような気持ちは経験されており共感できる部分が多いと思います。
家族とのことも詳しく書かれており、多くの家族経営をされている中小企業の方であれば身につまされることでしょう。中小企業が解体するつらさは、身近な人を巻き込んでしまうことにあるようです。
起業や経営については光の部分が語られることが多いのですが、実際の現場では本書に書かれているような陰の部分がほとんどです。会社を経営しようとしている方であればもちろん読んで役立つと思いますが、雇われる方であるとしても経営者の立場が理解できて参考になると思います。
会社の倒産の本としては『社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由』などが有名ですが、本書の内容の方が経営についての派手な部分がほとんどないため現実に近く、多くの会社にとってはより身近に感じられると思います。
本書に書かれているようなことは、程度の差はありますが、日本中で起こっているのでしょう。「構造改革の痛み」と言われますが、本書には著者の人生の想いや苦労が凝縮しているため、本書を読むとその片鱗を感じることができます。
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この記事へのコメント
実は適切なるご指摘をいただき、私としましてはこれ以上のコメントを申しあげるものはありません。私がこの本を書くにあたって「企んだ」ものがほとんど指摘されています。作者としてはあるまじき行為であるかもしれませんが、このように適切なご批評にうれしくなって思わずこの欄に書かせてもらっています。
1年前、偶然にも会社破産の時に、小説で江戸時代中期の蝦夷での事件「ハウカセの大きな石」を上梓しましたが、今は江戸末期の蝦夷を書くべく段取りをしています。また上梓のおり、ご批評いただけたら幸いに存じます。ご批評ありがとうございました。
書評について御評価いただき光栄に存じます。中小企業経営における現場の臨場感あふれた記述を一人でも多くの方に伝えたいため、ご紹介させていただきました。
ご予定されておられる新作につきましては、出版の暁には採り上げさせていただきたいと思います。内容を楽しみにしております。









