2008年06月01日
『イスラム金融入門』
門倉 貴史著 2008年5月30日発行 777円(税込)
イスラム金融入門―世界マネーの新潮流 (幻冬舎新書 か 5-2)
一時的に体調を崩していたため、更新が遅れました。イスラム金融についての本はすでに数冊出ていますが、入手しやすい新書では本書が本邦初となります。著者は経済ブックメーカーの門倉貴史氏です。氏の著作は数字が豊富な各論に持ち味がありますが、本書も同様です。
イスラム金融は利子がないことが特徴ですが、それ以外にも投資対象がイスラム教の教義に沿っているかどうかなども重要であり、本書では最初の総論でそのあたりも含めてイスラム金融の仕組みがわかりやすく解説されています。
各論については、イスラム金融の有力国であるMEDUSA(マレーシア、エジプト、ドバイ、サウジアラビア)を中心に述べられています。それら以外の国についても簡単ではありますが、幅広く取り扱われています。
紹介されている国々は、国名については馴染みがありますが、日本に住んでいると具体的にイメージが湧きにくい国々が多いと思います。これはイスラム教文化圏とキリスト教文化圏はあまり交わりがなく、日本はキリスト教文化圏の国々との交流が深かったことによります。
イスラム金融は投機的なお金の動きを歓迎しないようであり、サブライム問題の反作用としてイスラム金融が脚光を浴びつつあるということもあるのでしょう。
人間の欲望に基づくマネーのパワーはイデオロギーの壁を崩壊させましたが、宗教の壁も崩壊させつつあるのかもしれません。イデオロギーは一方が他方を飲み込む形になりましたが、宗教の場合はどうなるのでしょうか。
おそらく、どちらかが他方を飲み込むという形にはならないのではないでしょう。適度な緊張を持った対立関係を維持しつつ、文化的な交流が活発になるということになるのではないでしょうか。
イスラム金融が重要ということになってくれば、イスラム文化圏の文化についての理解を深めようという動きも盛んになることでしょう。世界の歴史上も、商業的な交流が文化の交流を活性化してきました。
本書を読んで印象的だったのは、イスラム教徒の数です。世界の人口の四分の一はそれなりに多いと思いますが、日本においても26万人、700人に1人の割合で存在するのは思ったより多い印象を受けました。
イスラム教は一夫多妻、キリスト教は一夫一婦制ですが、その違いが長年の後生物学的にいかなる差を各集団にもたらすかも興味深い問題です。一夫多妻制は資本主義的であり、一夫一婦制は社会主義的です。社会制度が資本主義的な集団が婚姻については社会主義的なところが不思議なところです。何らかのバランスを取っているのかもしれません。
本書はイスラム金融の理解のみならず、イスラム教国の理解を通じて世界経済の新潮流についての洞察を深めることができる本です。馴染みのない国についての各論が多いため、すべての人にとって読みやすい本ではないかもしれませんが、読んでおくと世界経済についての理解を深めることができます。








