2008年06月03日
『円安バブル崩壊』
野口 悠紀雄著 2008年5月29日発行 1680円(税込)
野口悠紀雄氏の新刊です。週刊ダイヤモンドに2007年4月から2008年3月にわたって連載されたものがまとめられたものです。毎年連載がまとめられたものが出版されていますが、一年という時の流れの速さを実感します。
タイトルに「円安バブル」とありますが、為替、景気、金融、IT、地域間格差、年金、税金、政策などの日本経済における重要な諸問題について、いつもの語り口で幅広く論じられています。
ここ数年の景気回復は「超金融緩和」による「円安バブル」のためであり、構造改革によるものではないというのが、以前からの著者の主張です。日本の産業構造を根本的に変更しない限りは、真の景気回復にはならないということです。
年金にしても、地域間格差にしても、根本的な問題に取り組まない限りは本当には解決しません。いままでのこのシリーズを読まれている方には、今回の本でも本質的に新しい考え方はないのですが、時事的なテーマに応じて微妙な調整があるので、そのあたりを興味深く読むことができます。
ここ数年の著者の本はだいたい読んでいるのですが、日本の経済問題に対する根本的な提言に大きな変化はありません。著者の話が同じというより、日本の政策に大きな変化がないため、提言を変えようがないといったところでしょう。
本書に出てきますが、著者がテレビで細かいことを話そうとすると、あまり細かくてわかりにくい話はしないように言われるそうです。政策に根本的な変化がなく、著者が本質的に同じことを書き続けておられるのは、結局多くの人に著者の考えが伝わっていないからなのでしょう。
そう考えると、日本の経済の諸問題の根本的な解決は、いかにして多くに人に経済的な合理性とか効率性の重要性を伝えることができるかにかかっているのではないでしょうか。
著者が同じような媒体で繰り返し同じことを書かれても、その媒体を読む人の集団に大きな違いはありません。著者の話を読んでいる人は繰り返し読んでいるでしょうし、読んでいない人は読んでいないままでしょう。わかりやすいところだけをわかろうとする人間の性質にかかわってくるので、なかなか難しいところです。
トラックバックURL
この記事へのコメント
ブログ拝見しました。テーマが絞られていて読みやすいですね。たまに訪問させていただきます。今後ともよろしくお願いします。