2008年06月19日

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『金融vs.国家』5

倉都 康行著  2008年6月10日発行  777円(税込)

金融vs.国家 (ちくま新書 724)

まだ画像がありませんが、ちくま新書の新刊です。著者はすでにちくま新書で金融の本を2冊書かれています。

金融史がわかれば世界がわかる―「金融力」とは何か (ちくま新書)

世界がわかる現代マネー6つの視点 (ちくま新書)

著者の前書きによると、この2冊を併読することにより本書の議論に「立体感が生まれてくることもあるだろう」とのことですが、本書だけでも十分にまとまっています。



本書のテーマは国際金融の歴史と現在です。金融史という縦糸と国際金融という横糸がうまく織り込まれており、国際金融史について立体的な理解が得られるようになっています。

金融に限らず、ある専門分野を深く理解しようとすると、その分野の歴史について知っておくことは欠かせません。ある専門分野の勉強をするときは、すでにそうなっていることを身につけることが要求されますが、多くの場合なぜかということについての解説は省略されています。

なぜかという理由まで説明すると学習量が増えるので、効率よく学習するために歴史は省略されがちなのですが、歴史を知っておいた方が、長い目で見ると本質的な理解が深まるため効率が上がります。

本書を読むとよくわかりますが、国際金融の歴史はほとんど欧米の歴史といってもよいようです。これは欧米の発展が金融を発展させたともいえますし、金融力があること自体が欧米を発展させたとも考えられます。欧米では両者の発展は車の両輪です。

日本の金融の問題点や今後のあり方などについても言及されています。日本は発展しましたが、金融の方は国力に比べて発展途上のようです。バブル崩壊以降日本が伸び悩んでいることを考えると、日本の停滞は金融の軽視にあると思われます。

本書では金融の国家的な戦略の重要性について、歴史を振り返りながら述べられていますが、日本においても国家的戦略が必要なのかもしれません。国家的な戦略といっても国が主体となるわけではなく、発展のための環境を整備することです。

最近のアメリカを見ていると、「金融によって発展し金融によって後退する」ように思えます。日本は「物作りによって発展し金融によって停滞する」です。車の両輪のバランスが崩れたときに停滞が生じるようです。

国家の金融は人間の体で喩えると水の働きです。融の字は流体のイメージですね。水は多すぎてもダメですし、少なすぎてもダメです。多すぎもせず少なすぎもしない適度な量を保ちながら、体内をさまざまな形で流れ続けて満遍なく存在する必要があります。



investmentbooks at 23:58│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--世界経済 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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