2008年06月20日
『投資で浮かぶ人、沈む人』
松田 哲著 2008年7月2日発行 1155円(税込)
著者は外国為替の現場で長年仕事をされている方です。今まで書かれた本はほとんどが外貨取引の本ですが、本書のテーマより大きく世界のマネー大きな流れです。
著者がマネーの動きをつかむときに指標にされているのは、「為替」「株」「金利」「物価」の4つしかないそうですが、これから動きは以下のようになると予想されています。
- 為替はドル安円高
- 株は上昇
- 物価は上昇
- 円金利は上昇
- ドル金利はそれほど上昇しない
インフレになって、とくにドルの価値が低下するようです。株もインフレに強いので上昇となっていますが、購買力の低下によりすぐには上昇しにくいようにも思います。先日もニュースでありましたが、カップ麺を値上げしたところ売り上げが大きく低下しています。
本書は理論的な解説もあるのですが、全体的に感覚的・直観的な印象を受ける本です。おそらく著者がディーリングの体験を長くされていることもあるのでしょう。
著者のマネーに対する哲学的な洞察も述べられており、そのあたりも直観的で興味深いところです。
「マネーの一つひとつの動きは、偶然生じる。しかし、その動きを貫く大きな流れの結果を俯瞰してみれば、それは必然である」
ちょっと運命論的な感じもします。人に置き換えて考えるとわかりやすいと思います。
「人の人生の一つひとつの出来事は、偶然生じる。しかし、その出来事を貫く大きな流れの結果を俯瞰してみれば、それは必然である」
運命を信じる人であれば納得しやすいかもしれません。もっと運命を信じる人であれば、人生の一つひとつの出来事も必然であると見なすかもしれません。
運命論的に人生を考える人が将来の流れを読んで予測するように、著者もマネーの流れを読んで予測されています。ヘーゲル流にやや大げさな表現すると、マネーを通じて「世界精神」を理解しようとされています。
本書は、読み手が感覚的・直観的なものをどれくらい重視するかによって評価が分かれるかもしれません。個人的には本書のような本は読んでいて面白いですし、投資の意志決定において一つの参考意見にもなります。