2008年07月20日
『「まだ結婚しないの?」に答える理論武装』
伊田 広行著 2008年7月20日発行 882円(税込)
「まだ結婚しないの?」に答える理論武装 (光文社新書 362)
昨日紹介した橋田壽賀子さんの本とは、真反対ともいえる内容の本です。橋田壽賀子さんの本は、封建的夫婦生活のススメともいえる内容でしたが、本書は結婚そのものに対する見方をとらえ直す内容になっています。
結婚のあり方を見直す過程においては、当然のことながら封建的な男女のあり方に対する反省や、フェミニズム的な考え方も述べられています。本書では、「結婚の幻想」について、以下の通り大きく8つに分けられています。
- 結婚するのはあたりまえ
- 結婚すれば幸せになれる
- 結婚には妥協も必要
- 結婚すればいろいろ楽になる
- 結婚すれば寂しくない
- 子供が欲しいなら結婚するしかない
- 結婚は理屈じゃない
- 女の幸せは仕事(自立)より結婚
さらに具体例が細分化され、結婚を勧める周囲の人のあらゆる発言に反論することができるようになっています。反論の具体例については、細かい字で網羅的に書かれているため、すべてに目を通すのは根気が必要とされる感じもしました。
著者は男性ですが、本書はどちらかというと女性の視点で書かれています。結婚しないことが肯定されやすくなったのは、時代的にとくに女性にとって結婚の価値が下がってきているからです。
「女の幸せは結婚にある」と言われ続けた昔の女性が結婚により幸せになることができたかどうかは定かではありませんが、結婚しなかった女性は社会的・経済的に確実に不利な状況に追い込まれました。
幸せは相対的に決まる要素もあることを考えると、昔の結婚した女性が結婚しなかった女性と自分を比べて、ささやかな幸福感を感じたことはあったかもしれません。
昔の女性にとって結婚は経済的価値の高いものでした。女性にとっての価値が高ければ、女性も男性に与えられたものを帰さないといけないという返報性の心理が働くため、女性から「尽くしてもらった」男性にとっても結婚の価値は高かったことでしょう。
しかしながら、最近は女性にとっての結婚の経済的価値が下がっているため、結婚の価値もそれに応じて下がっています。女性にとっての価値が下がれば、男性にとっての価値も下がります。
経済的なことについて考えてみると、例えば、日本経済が悪化すると、それに応じて悪化する理由がいくらでも見つかり語られるようになります。株も値下がりすると、売り込まれる理由はいくらでも出てきます。理由があってその状況が生じる面はありますが、状況に応じて理由も生じます。
本書であえて結婚しなくてよい理由が数限りなく語られるのは、結局のところ、結婚自体の価値が下がってきているからです。昔は結婚の価値が高かったので、結婚する理由をいくらでも語れました。本書における結婚の是非に対しての昔と今の考え方の対立は、結婚自体の価値の差から生じています。
本書でも少し書かれていますが、著者は人間のスピリチュアルな側面を重視されています。本書のような本を書かれたもの、その価値観が大きな影響を与えているように思います。
スピリチュアリティの本質は、エゴをなくすことによる「自己」と「他者」の融和、融合です。世にある恋愛、結婚の多くはエゴを満たすためなので、著者の価値観と真っ向から対立します。
今までは経済的な合理性に覆い隠されて、男女の深い結びつきにおける結婚の虚偽性がわかりにくくなっていましたが、結婚の経済的合理性が以前よりも減少しつつある現代日本においては、スピリチュアルな存在である男女が結びつくことの本質的な意味を再考しやすくなっていると考えることもできます。
本書を単なる結婚しない理由を説明する「言い訳集」として用いるか、結婚における男女の結びつきの本質的な意味を考えるためのテキストとして用いるかは読者次第です。読み方によっては自分の心を深く見つめ直さないといけないので、つらい感じがすることもあるかもしれません。
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この記事へのコメント
bestbookさんの読みはおもしろいと思いました。私は本書をまだ読んでいませんけども、伊田さんの従来の主張からすれば、結婚している男女を前提とする制度やシステムを変えていこうということではないかと思うのですが。
お書きになっているとおり、本書では結婚制度にとらわれないより自由な社会を提案されているようです。
著者は根底に人間のスピリチュアリティな側面を重視されているように感じましたので、記事の通り書かせてもらいました。
現代は男女のあり方が変わりつつある大きな転換点になっているのかもしれませんが、もう少し時代が進まないと、はっきりとしたことは見えてこないようです。








