2008年07月22日
『あたらしい戦略の教科書』
酒井 穣著 2008年7月15日発行 1575円(税込)
本書自体の装丁は地味ですが、リアル書店では当ブログでも紹介した著者の前作であり処女作である以下のベストセラーと並べられて平積みにされているので非常に目立ちます。
本書はすでに、『404 Blog Not Found』の記事や『マインドマップ的読書感想文』の記事ですでに取り上げられており、いまさらの紹介になってしまいますが、発売されてまだ一週間しか経っていません。本書のようにネット上で話題性の大きい本は、発売されて数日以内に紹介しないと遅れをとってしまうようです。
本書はタイトルからはっきりとわかるように、ビジネスにおける戦略に的を絞って書かれた本です。ビジネス、ビジネス辺縁、ビジネス外の各種知識(ヒポクラテスの四体液説など)を織り交ぜながら、戦略について非常にシンプルな形でまとめられています。
シンプルな形でまとまっているのは、著者がビジネスの現場で活躍されている実務家であるからでしょう。ビジネスの現場では複雑な戦略論を数多く理解して無理に当てはめようとするよりも、シンプルな基本原則から状況に合わせて臨機応変にその場に応じた戦略を創り上げる方がよいようです。
章のタイトルもシンプルあり、内容の大きなまとめにもなっています。
- 戦略とは何か?
- 現在地を把握する---情報収集と分析の手法
- 目的地を決定する---目標設定の方法
- ルートを選定する---戦略立案の方法
- 戦略の実行を成功させる
「現在地=現在」「目的地=未来」などと、時の流れを意識させる説明が面白いと思います。「目的地とは、現在地に依存した「不確定な未来」のことでもあり、本質的に「幅」を持っている」と書かれていますが、このことから、著者がある程度因果論的・運命論的な世界観を持ちながらも、人間の自由意志も存在すると考えておられることがわかります。
著者が書かれている戦略とは、本質的にはいかにして人間の自由意志に則って行動するかということ結びついています。著者が書かれている内容に、自己や他者の心に対する配慮が感じられるのは不思議なことではありません。
本書ではカーナビのたとえがよく出てきますが、カーナビのルート修正の淡々とした愚直さを一つの見本とされています。カーナビの愚直さは人間の自由意志と対極にあるようにも一見思われますが、自由意志の究極の形が自然との融合によるエゴの消失にあることを考えると納得がいくと思います。
著者の本が受け入れられるのは、人間の幸福が増大するような望ましい方向性とビジネスの方向性を一致させようとされているからでしょう。そのような流れは、前作から本作にも滔々と受け継がれているように思います。
本書はビジネスの戦略についての本ですが、読み方によっては人生論としても読むことができると思います。なぜならば、本書で扱われている多くのテーマは、人生のさまざまな局面において応用できるからです。
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この記事へのコメント
実は、本書を脱稿した後、「あまりにもシンプルすぎるのではないか」という不安がありました。もちろん、シンプルであることこそが、汎用性の証明でもありますから、そこは狙っているわけです。
とはいえ、やはりシンプルにすぎれば、それは「何事もバランス」というあたりに行き着いてしまうので、慎重に言葉を選ばないと、完全に空論になってしまうという、想像以上に大変な執筆でした。
詳細に細部をつめて、本書を小さな文字で書かれた400ページの本にすることは、むしろ僕にとっては簡単なことです。詳細ではなく、大局観を語りつつ、しかし大局観を否定するという、アクロバティックな本だと思います。
とにかく、読んでいただけたことが嬉しいです。いずれ、どこかでお会いしたいです。実は、精神科医には知り合いが多かったりします(笑)。
今後とも、よろしくお願いします。
たしかにシンプルに表現するのは、大変だったのではないかと想像します。シンプルであればあるほど、一語一語の重みが強くなりますね。
シンプルになればなるほど、わかる人にはわかり、わからない人にはわからないということになり、本の位置付けが難しくなりそうです。ぎりぎりのところでバランスを取られているように思います。
「小さな文字で書かれた400ページの本」も、そちらの方はそちらの方で読んでみたい気もします。大局観は、囲碁や将棋でも言葉による表現が難しいようです。
精神科医に知り合いが多いというのは、前回の本、今回の本を読むと何となく納得できます。
将来お目にかかれるのを楽しみにしています。










