2008年07月25日
『サブプライム後の新資産運用』
中原 圭介著 2008年7月26日発行 1575円(税込)
サブプライム後の新資産運用―10年後に幸せになる新金融リテラシーの実践
『株の勝ち方はすべて外国人投資家が教えてくれる』やこのブログでも紹介した『株式市場「強者」の論理』など株式投資や資産運用について、明快な語り口の著作を多く出されている中原圭介氏の新刊です。
本書は270ページ程度とやや厚めですが、60以上もの図が用いられているため、読みやすい仕上がりになっています。本書の内容を一言で述べるとしたら、「相場のトレンドに乗る」ということになるかと思います。
語り口は明快ですが、一般的な資産運用本が無条件に常識としている内容を、一歩掘り下げた内容になっています。通常の資産運用本で推奨されていることが多い国際分散投資と長期資産運用についても、無条件には受け入れるべきでないと書かれています。
また、金融工学のみに基づいた資産運用についても批判的に書かれています。今までの世界的な金融危機が金融工学で防げなかったのみならず、金融工学が原因となっていることが多いためです。
そのようなことを踏まえた上で、いかにして世界経済、市場、相場を読み解いてその流れに乗るかということをテーマにされています。世界経済や日本経済などの状況について、どのような指標を参照すればよいかということもシンプルかつ明快に書かれています。
また、ポートフォリオの組み方についても、年齢などのリスク許容度の違いも参考にして、わかりやすい形でまとめられています。
著者は、少子高齢化のため日本経済は縮小するとされており、資産運用の防衛面では外貨預金を、積極的なリターンを求めるためにトレンドに乗った株式投資を勧めています。外貨預金に力点があるのが、資産運用面での本書の一つの特徴です。
最後に日本経済が生き残る道についても提言されています。
- 移民の受け入れによる諸制度の改革
- メタンハイドレートによる資源国として復活
- 資産運用を促進する税制、法人税の減税
この中では移民の受け入れが一番難しいかもしれません。賛否両論も多いことでしょう。
トレンドに乗ることは相場の本では書かれていることがありますが、資産運用の本ではあまり強調されていることがありません。トレンドが存在するかどうか、そしてそれを予測できるかどうかはまた別の問題ですが、資産を大きく増やしている人が結果的にしろトレンドに乗っていたことはたしかです。