2008年07月26日
『「お金を稼ぐ!」勉強法』
藤井 孝一著 2008年8月5日発行 1470円(税込)
『週末起業』などのベストセラーで有名な著者のの新刊です。タイトルは勉強法の本ですが、勉強自体をいかにして効率よくするかといった内容ではなく、勉強することをいかに実利に結びつけるかという内容です。
二昔くらい前は、就職すればそれなりの給料と昇給が約束され、資格を取ればその業界の独占業務により一定の既得権益が確保されていました。しかしながら、現在では既得権益の部分が削られてきており、自ら工夫をする必要があるため、本書に書かれているような内容は重要性を増しています。
本書に書かれていることを簡単に述べると、勉強するにしてもその内容をどのように稼ぎに結びつけるかを意識して実行する必要があるということです。稼ぎに結びつけるためには、勉強というインプットだけでなく、アウトプットを重視しなければならないようです。
資格試験のために勉強をしていると、本来資格を取るための手段である受験勉強が目的なりがちです。このような手段の目的化は、受験勉強のみならず、人生のあらゆる場面にあります。
例えば、仕事をするにしても、本来は仕事をするための目的があるはずです。お金を稼ぎたいとか、出世をしたいとか、あるいは社会の役に立ちたいとかいろいろとあるでしょう。
あることをしているときは、その上のレベルの目的が本来はあるはずですが、あること自体が目的になってしまうことがあります。資格の勉強は資格を取るためですが、本来の目的を忘れて、点数を上げること自体に過剰な意味づけをしてしまいがちです。
本来の目的を忘れることは問題なのですが、ここで難しいのは、一時的に本来の目的を考えすぎないようにすることも必要な場合があることです。
例えば、資格試験の勉強をしているときに資格試験の上のレベルでの意味を考えすぎてしまうと、資格試験自体が虚しくなってくることがあります。なぜなら、本来資格試験で点数を上げること自体にはもともと意味はないからです。
陸上の選手が100メートルを10秒で走ることに本質的な意味があるのかどうか考え始めた時点で、その選手は意欲をなくしてしまうかもしれません。オリンピックに出るのであれば、速く走ることに対して、一時的にしても絶対的とも言えるほどの意味を感じる必要があります。
何を行っているときもさらに上のレベルでの意味を考えることができます。レベルを上げれば上げるほど本質的な意味に近づけるように思えますが、地に足がつかなくなり、考えすぎて何事もはかどらないことがあります。
要はバランスの問題です。それなりに現在やるべきことに一定期間集中しながら、上のレベルの意味づけをたまに意識することです。どちらかだけに決めれば楽なのですが、楽をすると現実的なバランスが取れなくなります。上のレベルの意味を考えないため圧倒的にバランスが取れないのが天才ですが、天才が幸福かどうかはまた別問題です。
本書では、アウトプットの重要性を強調されています。不完全でもよいからアウトプットは重要だそうです。完全になってからアウトプットをしようするよりも、まずはアウトプットをするのがよいようです。そもそも完全なアウトプットはいくら時間をかけてもできません。
若い人が会社で働く意味は、不完全な状態のままアウトプットをしないといけない状態に追い込んで貰えることにもあります。お金をもらいながら不完全な状態のアウトプットを続けるうちにそれなりに形になってきます。ところが自分で決めることができる裁量が大きすぎると、「完全主義のワナ」にはまってしまい、いつまでたっても現実的な前進ができません。
世の中はいつできるかわからない「完璧な」仕事よりも、ほとんどの場合速やかに結果が出るそこそこの仕事を求めています。いつできるかわからない「完璧な」仕事の可能性に対してはお金は払われませんが、速やかに結果が出るそこそこの仕事に対しては結果に応じたそれなりのお金が払われます。