2008年07月29日

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『一目で見抜く!財務諸表解読法』4

柴山 政行著  2008年7月1日発行  1575円(税込)

一目で見抜く!財務諸表解読法―ざっくり押さえて仕事に役立つ会計の本

財務諸表の解説書は数多く出版されており、最近はわかりやすい何らかの特徴がないと類書との差別化を図るのが難しくなってきています。そのような状況でも、一時期ほどの数ではありませんが、入門書はコンスタントに出版され続けています。

そのような点からすると、会計の入門書は英語の学習書と似ています。英語の学習本が昔から出版され続けており、今でも出版され続けているのは、英語学習というニーズの山における裾野の広さと、高さによる登りにくさにその理由があります。



英語学習についても会計についてもそうですが、一般のビジネスパーソンに求められているのは、そんなに専門性が高いレベルではありません。もちろん高いレベルで身に付けるに越したことはありませんが、初心者向けの本が出版され続けているのは、入門レベルでつまずいている人が多いためであると思われます。

山に登ってある程度の眺望を得るためには、わざわざ頂上まで登り終える必要はありません。3合目くらいまで登ってしまうと、ある程度の視界が開けてくるので、それなりに眺めを楽しむことができます。

会計の知識について、一般にビジネスパーソンがとりあえず目指すべきレベルは、本書で解説されているように、財務諸表を眺めたときに大まかな全体像を得ること、そしてその中で何がわかっており何がわからないのかを把握すること、そしてわからないことについて専門書で調べたり専門家の解説を聞くとある程度それを理解できるようになる程度です。

これは会計の知識に限らず、教養全般について言えることかもしれません。おそらく一般の教育の役割は、広い分野についてその程度のレベルの知識を満遍なくなるべく多くの人に教えることにあると思われます。

ちょっと前置きが長くなりました。本書の著者は公認会計士・税理士をされており、読者が5万5000人のメルマガ『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』なども発行されています。

本書は初心者向けの本であり、本書の際だった特徴を挙げるのは難しいのですが、類書と比較すると株主資本等変動計算書の解説が充実しているように思いました。そのような意味においては、投資家である株主からの視点に役立つ解説も含まれていると言えます。

財務諸表の解説については、初期の理解に必要性の少ない項目は省略されていますが、とくに重要な専門用語については、省略なくしっかりと記載されています。

財務諸表については、個人のものから日本国のもの、そして実際の有名企業のものについて幅広く解読されています。また、ある程度自分で個人事業主となったり会社を設立したりするような視点からも財務諸表の解説がされています。

本書は財務諸表の入門書として非常にバランスよくまとまっていると思います。あえて足りない部分を挙げるとすれば、類書との違いを際だたせるクセやアクの強さかもしれません。

財務諸表の本が数多く出版されているので、そのように感じてしまいますが、入門書を必要以上に多く読んでいるという自分のバイアスがあるかもしれません。



investmentbooks at 21:38│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--会計 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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