2008年08月01日
『わが友、恐慌──これから日本と日本人の時代が訪れる8つの理由』
松藤 民輔著 2008年7月30日発行 1470円(税込)
わが友、恐慌──これから日本と日本人の時代が訪れる8つの理由
著者の前回の新刊を紹介してから一ヶ月も経っていませんが、また新刊が出ました。ペースがアップしていますが、著者の本はよく売れているのでしょう。ポジショントーク的な意味合いもあるのかもしれません。
本書は、今までの本の中で著者の人生におけるエピソードが一番多くなっており、読み物としては一番読みやすいと思います。過去の業界での話や、海外の投資家との交流の話が今までの本より豊富です。その分、最近の相場の具体的な分析についての量は少なくなっています。
恐慌は著者のライフワークのようであり、15年前から恐慌が来るのを待っておられたそうです。著者は、現在のサブプライム問題に端を発する世界的な金融危機をこれからの恐慌の入り口であると見ています。
恐慌について、著者は単なる不況ではなく、世の中が革命的に変化する過程において生じるものととらえておられ、否定的ではなくむしろ肯定的に評価されています。
著者の本を読まれた方にはいまさらここで書く必要はないと思いますが、著者は金鉱山の会社のオーナーであり、著者の会社の鉱山には現在の相場で3000億円相当の金があるそうです。著者の予測では、金の市場価格はこれからさらに倍以上になるようなので、著者の予測が当たるとすると、将来的には6000億円以上になります。
今後著者が予測されているように、金融恐慌になれば金の価格はさらに上がります。著者が主張されていることと、著者の相場のポジションは一致しています。
著者が書かれていることには、以前から一貫した主張があります。アメリカの衰退、中国の混乱、日本の復活です。著者が予測されている今後の恐慌を経て、世界の勢力図が変化することも予想されています。
著者の予測にはさまざまな想いが詰まっています。その想いの部分が著者の本を面白くさせているのですが、理性のみで相場を語る人にはついていけないと思われることもあると思います。
未来のことはわからないので、著者の予測がどうなるかについては何とも言えないのですが、もしも外れることがあるとすると、想いの部分が過剰であったためということになるのかもしれません。
シンガポールに移住したジム・ロジャーズにしてもそうですが、相場で大きなポジションを持つ投資家は人生のポジションと相場でのポジションが一致しています。アメリカやドルの今後についての予測は一致していますが、原油や中国の将来については、両者の見方が真反対ともいえるほど異なるのは興味深いところです。