2008年08月11日
『本当はすごい私』
苫米地 英人著 2008年8月6日発行 1365円(税込)
苫米地氏の新刊です。自己啓発書ですが最近氏が語ってきたことの集大成とも言える内容になっています。集大成ですが、非常に簡潔に述べられており、「抽象度」が高くなっているようです。
本書のメッセージは10の言葉にまとめられており、その言葉が書かれたカードが巻末に切り離して使えるよう付属しています。
最近の著者の本は資本主義的な価値観に対する警告的な内容が目立つのですが、本書にもそのような記述が少なからず登場します。本書が資本主義の仕組みを通じて世の中に供給されていることはやや皮肉な感じもしますが、現在の世の中ではやはり最も効率的な方法なのかもしれません。
本書を読むと著者が一見資本主義を否定しているようにも思われるのですが、実際は単に否定しているのではなく、資本主義的な価値観にとらわれることに対して警告をされているのでしょう。
いつもながら、著者の主張の背景には仏教的な考え方がありますが、仏教はもともとアナーキズムやニヒリズムにつながりやすい宗教です。お金を増やすことを是とし人間の欲望を原動力とする資本主義と仏教とは潜在的には対立しやすい構造があります。
仏教的には金銭欲も心の執着になります。執着は苦の原因なので、無くなることが心の平安にとっては望ましいのですが、皆が一斉になくしてしまうわけにもいきません。もっともすぐにそうはならないでしょう。
極端な話、すべての人が明日出家してしまうと生存を維持するのに困ります。おそらくこの世のあり方としては、ある程度資本主義的な生産に携わる人々、そして少数の執着心をなくそうとする人々の適正な割合の範囲があるはずです。
本書の内容に共感する人が多くいるとしたら、おそらく資本主義的な欲望を追求する人々の割合が適正範囲から多めに偏っているため、その割合を修正する自然の働きによるものでしょう。
本書に書かれているように、地球上で生産されるカロリーは全人類が必要とするカロリーを上回っています。それでも地球上から飢えや貧困が無くならないのは、分配が効率的になされていないからです。そして分配が効率的になされていないのは、人間の不安や欲望によって配分がゆがめられているからでしょう。
将来的には地球上の分配の効率が劇的に向上することによって、飢えや貧困に苦しむ人がいなくなるかもしれません。本書で著者が目的にされていることの一つは、人間の心を変えることによって地球上の資源の分配効率を上げることであると思われます。









