2008年08月27日
『シモネッタのデカメロン―イタリア的恋愛のススメ』
田丸 公美子著 2008年2月10日発行 580円(税込)
シモネッタのデカメロン―イタリア的恋愛のススメ (文春文庫 た 56-2)
著者はイタリア語の通訳や翻訳の仕事を長年されている方です。イタリア人は男女のことにオープンらしいのですが、通訳の仕事をしていると、必然的にその話題を好むイタリア人から男女についての話を数多く聞く機会が多いようで、本書は半分くらいが男女についてのエッセイ、残りの半分はビジネスや通訳のこぼれ話になっています。
本書の最後には、2年ほど前に逝去された著者のご友人であるロシア語の通訳かつ作家であった米原万里さんとの対談も納められています。その対談での米原さん発言によると、本書は「四冊分くらいのネタをギューッと詰め込んでいる」ので(一冊にまとめたのは)「勿体ない」そうです。
米原さんの本は、しばらく前に新書で『米原万里の「愛の法則」』が売れていました。面白い本でしたが、内容がちょっと軽すぎると思ったため本ブログでは紹介していません。
本書が単行本として出たのは3年前、文庫になってからまだ半年なのですが、本書の存在は見過ごしてしまっていました。最近地方に行ったときにそこの書店で見つけました。
地方の書店に行くと、首都圏や地方の大都市の中・大型書店とは品揃えや陳列が異なります。首都圏のそれなりの書店では、売れ線の本が目立つように配置されており、売り上げが最大になるように最適化される傾向にあります。書店間でもあまり大きな違いはありません。
ところが地方の書店に行くと、品揃えや陳列が必ずしも最適化されているわけではありません。そのため、東京とは異なった本が目につき、今まで見過ごしていた本を再発見しやすくなります。地方に行って書店を散策するのは楽しみの一つなのですが、いままで目を通したことがない本との縁が生じるからです。本書もその中の一冊です。
最初にイタリアのプレーボーイによる口説きの原則が出てきます。要約して簡単にまとめると以下のようになります。
- 寝たいという気持ちを決して表に出さない。
- 彼女の容姿に興味がない風を装い、決して容姿はほめない。
- 母性本能を刺激する。これは最後の手段。
これらのことは、口説きの方法としてはそんなに特殊なことではありません。本書の男女間のエピソードは豊富で面白いのですが、女性を口説く具体的な方法の記述になると、著者の強いこだわりが感じられません。やはり著者が女性だからだと思われます。
本書を読んでわかるのは、恋愛における日本人とイタリア人の違いは、日々の生活で男女のことをどれくらい意識しているかの程度の違いから派生することです。
恋愛はどちらかというと非生産的なイメージがあるのですが、少子化が国の力を弱めるとすると、子孫繁栄に結びつく恋愛行動は国の力を上昇させるために重要かもしれません。ただし、イタリアも少子化が著しいようで、単純に恋愛をすれば子供ができるというわけでもないようです。
本書は単に恋愛のことのみならず、男女間のことについては夫婦などのことも含めて幅広く採り上げあれています。さまざまな話が面白いのですが、現在の日本で題材を集めてもこれほど集まらないと思われるところにも両国間の違いを感じます。