2008年09月01日
『悪の会計学』
大村 大次郎著 2008年7月15日発行 1470円(税込)
元国税調査官大村大次郎氏の新刊です。タイトルからは脱税の本のように思ってしまいますが、中小企業向けの節税の本です。「悪」なことについてはあまり触れられていません。
要領のよい人は要領のよくない人からすると「悪」に見えてしまうかもしれません。ルールがはっきりしないところでは、要領のよくない人からよい人に経済的資源が移動するので、経済的資源を目に見えない形で奪われると考えると「悪」なのかもしれません。
本書は読みやすく書かれていますが、同じような内容の中小企業向けの節税本は少なからず出版されています。本書のウリはわかりやすさと著者が税務調査の現場で長年仕事をされていたことによる現場でのエピソードにあります。
本書のような節税本が出版されているということは、本書にあるような節税の方法を取り入れていない中小企業も数多く存在するということです。もしもすべての企業が節税をしているのであれば、本書にはあまり出版される価値がないということになります。
しかしながら、今までの著者の本を含めて節税本は数多く出ており、今後も出版され続けることでしょう。毎年猫の目のように税制に細かい変更があるということもあるでしょうが、本書に書かれている内容を十分に知らない方も多いのでしょう。
本書を読むとわかるのは、税金にはグレーゾーンが多く、そのグレーゾーンをはっきりさせて税金を少なくする方法は自ら求めないと税務署は教えてくれないということです。税務署と納税者は利害が180度対立しているので当然です。
グレーゾーンがあるということは、納税者間でも工夫する人としない人の間に差が生じるということです。税務署と納税者ほどには利害が対立しませんが、納税者間でも長期的には多くの人が節税を始めると競合してしまいます。工夫している人が得をするのは数多くの工夫をしない人に支えられているといってよいでしょう。
本書に書かれていることを皆が皆実行するようになると、税制が変更になって今までの節税は行いにくくなると思われます。なぜならば、国や地方自治体からすると一定の税金はどうしても徴収する必要があるからです。
税制が変更になるとまたグレーゾーンが生じ、目ざとい一部の人が利益を得ます。そうするとまた節税の本が書かれ、方法が皆に広まります。皆に広まると細かい抜け穴が塞がれてしまいます。永遠のいたちごっこです。
結局のところ、情報を知っているかどうかよりも、どれくらい早く情報を仕入れているかが問題です。情報を少しでも早く知って活用する人が利益を得るという資本主義の原則は税金にも当てはまるようです。
税務署は少数の要領よい人についてはその存在を容認しますが、要領のよい人が増えてくるとその存在を許してくれないようです。要領のよい人は少数者であるとすると、要領のよい人が増えるという表現には矛盾があるかもしれません。









