2008年09月09日
『株とギャンブルはどう違うのか―資産価値の経済学』
三土 修平著 2008年9月10日発行 756円(税込)
株とギャンブルはどう違うのか―資産価値の経済学 (ちくま新書 (743))
タイトルの「株とギャンブルはどう違うのか」についてはほとんど書かれていませんが、サブタイトルの「資産価値の経済学」については非常に詳しく書かれています。
本書でテーマになっている資産は株式ですが、貸借対照表と割引現在価値について理解を深めることにより、株式の資産としての価値を考察する内容になっています。
内容的にはかなりスジがしっかりと一本通っており、貸借対照表と割引現在価値については、初歩的な内容からある程度高度な内容まで順を追って丁寧に解説されています。ファイナンス理論から株式の価値を理解したい人にとってはわかりやすい入門書といえます。
数式やグラフもある程度出てくるため新書にしては難しいかもしれませんが、等比級数の和の公式が理解できれば、ほぼすべての内容を理解することが可能だと思います。
とくにキャピタルゲインとインカムゲインについて統一的にすっきりと解説されているのが印象的でした。キャッシュフローや資産を生み出す存在としての株式会社、そしてその部分的な所有権である株式を根本から理解できると思います。
本書で解説されている内容は、理論的にすっきりしすぎていて現実の株式投資においてはそのまま当てはめることはできませんが、理論を理解しておけば会社を経営している場合などに、ファイナンス理論的な不必要な損をすることは避けられるでしょう。
現代ファイナンス理論に欠けているのは、経済活動における人間の心理面の影響ですが、これは行動ファイナンスが補ってくれます。この両者が統合されないのは、おそらく原理的に統合できないためでしょう。
現代ファイナンス理論には統一的な美しさがありますが、行動ファイナンスはさまざまな考え方の寄せ集めという印象があります。人間の心理が関係してくると統一的な理論にはなりにくいためです。
本書にも統一的な美しさを感じることができますが、本書を読んでマーケットで勝ち組になれるかどうかは別問題です。
株とギャンブルがどう違うかについては、本書では期待値の点から解説されていますが、実際上の一番の違いは時間感覚の差であると思います。ギャンブルは比較的短時間にケリがつきます。そのように考えると、デイトレードや短期トレードはギャンブルと言ってよいと思います。
ただしギャンブルが悪いとは考えていません。ばらつきという意味でのリスクを取ることは、生存上必要なものとして人間の本性に組み込まれているはずです。ギャンブル依存症という疾患がありますが、〜依存症とつくものはほとんどがもともと人間の生活にとって何らかの形で必要なものです。
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この記事へのコメント
統一的理論になりにくい行動ファイナンスは、経済学的な分野ではメジャーにはなれない感じですね。
ところで依存症はなぜ人間に必要なのかが気になりました。
ブログで紹介している本はすべて購入していますが、自分も書店で手にとって買っていない本はたくさんあります。
行動ファイナンスは臨床的な知ともいうべきものなので、メインストリートは歩めないかもしれませんが、そちらの方が現実をよく説明していたりします。
ちょっと自分の表現が不十分で分かりにくかったのですが、人間の生活にとって必要なのは、〜依存症の〜の部分です。例えば、ギャンブル依存症であれば〜の部分はギャンブルとなります。
ギャンブルの本質はリスクを取って富の配分を偏らせることですが、そのようなことは人類の歴史において必要だったのではないかという考えです。








