2008年09月13日
『会計的に見る!技術』
本郷 孔洋著 2008年9月24日発行 700円(税込)
著者は長年公認会計士、税理士として仕事をされている方です。本書はタイトルから受ける印象とは異なり、会計の細かい技術的な内容についての本ではなく、会計や経理、中小企業経営などにまつわるエッセイ的な内容の本です。
比較的自由な形で書かれているので、専門家の雑談や講演を聴いているように感じられ、肩の力を抜いて読むことができます。その中に会計を通じて中小企業の経営のヒントになるようなことも書かれています。
著者はキャリアの長い方なので、会計や経理について昔からの変遷が体験的に書かれており、時代の移り変わりを感じることができます。
各章のタイトルは以下の通りです。
- すべての道は会計に通じる!
- 自分の会社を「会計的に見る!」方法
- 社長の言葉を「会計的」に分析してみる!
- 「会計的に見る!」と経営の本質が見える
- ベテラン経理マンからのアドバイス
章のタイトルからもわかるように、会計を中心に全体の話が展開します。ユーモラスな語り口が各所にあるのも印象的でした。
近年会計の話が一般のビジネスパーソンにとって大事になってきているのは、やはり日本経済があまり拡大しなくなってきているからです。昔は会計的に合理性を追求しなくても、少々の不合理は長年にわたる成長が吸収してくれました。
借金をしたとしても、拡大成長とインフレによって借金の返済が今ほどは大きな問題になりませんでした。昔は土地の担保さえあれば融資はスムーズでしたが、最近は借金の返済のみならず借り入れすら容易ではありません。
そのため、合理性のある損益計算書や貸借対照表になるような経営が求められれます。本書のような本が新書で出版されることも、時代の移り変わりを示しています。
本書を読んで初めて知ったことの一つに、税務・会計業界には「Y、K、K、F」という言葉があるということです。それぞれ、役員報酬、交際費、寄付金、福利厚生費だそうで、これらは企業の方で調整できるため管理可能費と呼ばれるそうです。このあたりの考え方は節税と関係してくるようです。
また、著者が数々の優良な会社を見た経験から「会社の利益は交際費と会費に比例する」という法則があるそうです。社長の主体的な人付き合いと勉強は、中小企業経営におけるポイントのようです。
やはり本書のような本の読みどころは、数々の顧問先などとの付き合いで得られた体験が書かれていることです。専門家のメリットの一つに、数多くのクライエントと付き合うことにより特定のクライエントを全体の中である程度客観的に位置付けることができることです。
以前は中小企業についてのそのような話は本に書かれることは少なく、専門家から直接話を聴く機会がないと分かりませんでしたが、最近は本からそのような情報を限られてはいますが得ることができます。