2008年09月19日
『ブログ論壇の誕生』
佐々木 俊尚著 2008年9月20日発行 798円(税込)
毎日ブログを書いていると本書のような本は書店で自然に手が伸びてしまいます。著者は『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』の佐々木俊尚氏です。
本書はほとんどが月刊誌『諸君!』に2007年8月号から2008年9月号まで連載されていた「ネット論壇時評」の原稿が元になっており、ここ1年くらいにネットに関連して議論のあった諸問題が幅広く論じられています。
本書は全部で15章ありますが、その前にテーマが大きく4つに分けられています。
- ブログ論壇はマスコミを揺さぶる
- ブログ論壇は政治を動かす
- ブログ論壇は格差社会に苦悩する
- ブログ論壇はどこへ向かうのか
全体的にブログを中心に話が進んでいるのはたしかなのですが、ブログと直接関係の薄いネット上の話題についても採り上げられています。例えばウィキペディアやニコニコ動画に関係していることです。
本書でさまざまな角度から分析されているように、社会に対するブログの影響が大きくなりつつあるのは間違いありません。ブログがない時代に読書が好きだった人の多くは、現在ブログも読んでいることでしょう。
テレビをよく視ている人があるタレントのファンであれば、そのタレントがブログを書いていると読みたくなるのが自然な心理です。
1日の時間は有限なので、本を読んだりテレビを見たりする時間は必然的に減少します。だからといって本を全く読まなくなったり、テレビを全く見なくなったりするということは、おそらくないでしょう。
ネットの影響により出版業界もテレビ業界も下降トレンドにありますが、おそらくどこかで適切な配分に落ち着くことでしょう。ネットは既存のメディアの時間的なシェアを奪いますが、既存のメディアがすべてなくなってしまうようなことはしばらくはないと思います。適切な配分に落ち着いたときには相互に補完し合うような関係になっていることでしょう。
ただし、長期的には例えば紙の書籍が残るかどうかについては何とも言えません。現在も電子書籍端末はありますが、以下のような理由でまだまだ紙の書籍に優位性があると思います。具体的には、
- バラバラとめくることができない
- 書き込みが難しい
- コンテンツが少ない
最初の二つは技術的に解決できそうです。コンテンツは端末の普及に伴って充実してくることでしょう。
電子書籍の優位点としては、
- コストがあまりかからない
- 保存に場所を取らない
- 検索しやすい
などが挙げられます。低コストは作成についても流通についても販売についてもあてはまります。保存に場所を取らないことも低コストに含まれるかもしれません。
過去においては印刷物から情報を得ていたもので現在もっとも電子化されているものは、おそらく企業の業績についての情報ではないでしょうか。個人投資家で印刷されている有価証券報告書を手に入れようとする人はほとんどいないことでしょう。
本書にはブログからの引用も多くあり、最後に付録として著者が選んだ著名ブロガーリストがあります。全部で200近いブログがありますが、それぞれ内容が濃く、これらのうち日々いくつか目を通すだけでもそれなりの時間がかかります。
大型の書店に行くと膨大な書物があるため、そのうちのほとんどの本は人生が終わるまでに目を通せないと考えて人生の有限性を実感させられますが、ネットをしていると時間が知らないうちに過ぎてしまうことが多いため、一日の時間の有限性を感じます。
ネットと既存のメディアが対立的に論じられやすいのは、両方とも人の時間を消費すること、一日のうちで人が使える時間が有限であることにその原因があるようです。









