2008年10月01日
『ドラッカー先生の授業』
ウィリアム・A・コーン著 有賀 裕子訳
2008年9月25日発行 1995円(税込)
著者は3年前に亡くなった世界的に有名な経営学者であるピーター・ドラッカーのお弟子さんです。タイトルに「先生」とついているのはそのためです。ピーター・ドラッカーはとくに日本で人気があり、数多くの翻訳書や解説書が出ています。ドラッカー自身も親日家であり、本書にもいくつか日本に関する話が出てきます。
本書はドラッカーの思想を著者の視点から解説しつつ、著者が授業を受けたときなどのエピソードが数多く綴られています。400ページ近くありボリュームのある本です。
ドラッカーの本が人気があるのは、現実的な経営やマネジメントに即した自己啓発的な色合いが濃いという理由もあると思います。一般の自己啓発書にあるようなギラギラした感じがなく、知的な色合いが感じられます。また、仕事術的なこともよく語られており、実用性もあります。
本書はドラッカーの入門書としても読むことができますし、ドラッカーファンの方はエピソード集として楽しむこともできるでしょう。ただし、本書よりはドラッカー自身の著作の方がやはり面白いかもしれません。
考えすぎかもしれませんが、ドラッカーの弟子の著者は自分の先生を超えたくないという意識的あるいは無意識的な心理が働いているのかもしれないと想像してしまいます。
学問で名を残したい場合、ドラッカーの人生を考えると参考になる点がいくつかあります。
まず必要なのはあまり目をつけられていない分野を開拓することです。ドラッカーの場合は「マネジメントの父」と称されるようにマネジメントの分野です。目をつけている人が少ないほどよいのですが、普遍性があり、後々世の中に受け入れられやすい方が望ましいでしょう。
学問的な業績がある程度あるのは当然ですが、それ以外にも自分の専門と関連のある一般向けの本を書くのがよいでしょう。ある程度の学問的な香りをもたせつつも読みやすさが必要です。ドラッカーの数多くの著作は非常に読みやすく書かれています。
教育に力を入れて弟子を数多く育てる必要があります。弟子は優秀であればあるほどよいでしょう。優秀な資質を持った弟子を集めるためには自分自身が学者として、そして人間として魅力的である必要があります。
弟子は自分の先生の権威が高ければ高いほど、権威ある先生の弟子ということで自分の評価も高くなるため、先生の権威を高めるべく意識的・無意識的に活動してくれます。優秀な弟子に権威付けられた先生の権威はさらに高くなります。著者はそのようには意図されていないと思いますが、本書には結果的にそのような働きがあります。
そして最後に重要なことは長生きをすることです。ドラッカーは95歳と長寿でした。長生きをすると、孫弟子や場合によってはひ孫弟子ができます。孫弟子やひ孫弟子からすると自分の尊敬する先生がさらに尊敬する先生は神格化されたような存在になります。
長生きできなかったばかりに、その人が本来持っているポテンシャルを開花させることができなかった学者の方は数多いことでしょう。とくに文系の学問においてその傾向があり、歴史に名を残したい文系の学者の方は、できるだけ長生きできるよう自分の健康のマネジメントにも気を付ける必要がありそうです。









