2008年10月14日

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『波乱の時代 特別版―サブプライム問題を語る』5

アラン・グリーンスパン著  山岡 洋一訳

2008年10月7日発行  525円(税込)

波乱の時代 特別版―サブプライム問題を語る
波乱の時代 特別版―サブプライム問題を語る

本書は約1年前に出版されたグリーンスパン前FRB議長による『波乱の時代(上)』『波乱の時代(下)』の原書ペーパーバック版に新たな書き下ろしで追加されたエピローグのみを翻訳したもので、わずか60ページ強の小冊子です。

原書ペーパーバックが出版されたのは、今年の9月で本書の内容は今年6月までの情勢が踏まえられています。小冊子ながら、前議長が現在の金融市場とサブプライム問題についてどのように考えているかのエッセンスがほとんど表現されていると思います。



前議長は経済を効率的に発展させるための市場というものの働きと価値に多大な信頼を寄せていましたが、本書でも主張は変わりません。また、バブルを防ぐことはできないと考えていることは本書からもわかります。

サブプライム問題については、数年前から問題であるとの認識はあったようですが、途中でその流れを止めるのも難しかったと述べられています。

前議長に対して今回のサブプライム問題の原因を求める意見もありますが、前議長が問題をある程度認識していたとすると、前議長にとってはサブプライム問題の後で非難されるか途中で非難されるかの選択だったのかもしれません。

ただし、バブルを途中で認識するのは難しいという前議長の考えからすると、現在のような状態になるのは必然であったと考えることもできます。

市場の働きを信奉するからには、バブルは必然的に生じ、途中でバブルを認識できなければバブルはいつかは破裂するので、問題はいかにバブルが破裂した後の処理を進めるかにあります。

本書でもその処理方法が書かれていますが、現在の世界全体を巻き込んだ処理はほぼ前議長が書かれている通り進行しているように思います。60ページ程度の小冊子ながら、本書には日本についての記述が二回も出てきます。もちろん、バブル公開後の遅々として進まなかった破綻処理を反面教師にするという文脈においてです。

日本の政治家は日本の「成功」を参考にして欲しいと言っていますが、おそらくアメリカは「失敗」を参考にしているとしか考えていないでしょう。最終的に処理ができたという点においては「成功」なのかもしれませんが、一番重要な点が迅速性であることを考えると、日本の事例は失敗としか言いようがなさそうです。

本書から伝わってくるのは、サブプライム問題がこれほどの世界的な金融危機を生じたにもかかわらず、前議長が市場の価値を信奉していることです。市場の意義はミクロ的に見ると個々人が管理されることなくリスクを取りながら経済全体の効率性を高めることにあると思いますが、マクロ的に眺めると市場制度自体がバブルが生じてはじけるリスクを取りながら経済全体のダイナミズムを保つことにあるようです。

おそらく前議長が一番心配しているのは、今回の一件で市場に過剰な規制がかかることにより資本主義のダイナミズムが損なわれてしまうことでしょう。

市場に限らず、完全にものごとをコントロールしようとすることは、ものごと自体の生き生きとした感覚を失わせてしまいます。恋愛でもそのことは同じであり、関係をコントロールしようとしすぎるとかえって楽しみの本質が失われてしまいます。

何事でもコントロールしようとしすぎるとよくないのは、そもそも自然が完全にはコントロールできないものだからです。ヒトは完全にはコントロールできないものと対するときに精神的な高揚感が生じ、もっとも力が発揮されるように進化してきているはずです。本書からは根底にそのような考えを読み取ることができます。



investmentbooks at 23:45│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--世界経済 

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都内在住30代。10代より1日1冊のペースで本を読んでいます。以前は文学、哲学、思想、宗教関係の本を読んでいましたが、株式投資をきっかけに、ここ数年はビジネス書などを読み込んでいます。本の知恵によって、世の中が少しでもよくなればと思います。
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2006年12月開始。
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