2008年10月23日

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『「地価」はつくられている』4

濠 壱成著  2008年11月6日発行  840円(税込)

「地価」はつくられている―あなたのその投資、大丈夫? (リュウ・ブックスアステ新書 (053))
「地価」はつくられている―あなたのその投資、大丈夫? (リュウ・ブックスアステ新書 (053))

著者は行政、不動産鑑定、投資銀行業務などの仕事をされていた方で、現在は不動産投資コンサルティングをされてます。本書は、著者の業界での経験をもとに、不動産鑑定の実態について「地価」を軸に解説されています。

前書きに、不動産投資について以下のような正誤問題があります。



  • 「利回り50%」と聞くと、表面利回りだと直感的に分かる。
  • 不動産投資は、キャピタルゲイン狙いである。
  • レバレッジはできるだけ聞かせた方が良い。
  • 景気は早く回復してほしい。
  • 地価は上昇しているときが、投資チャンスだ。
  • 投資する不動産は、必ず、自分の目で品定めをする。
  • 不動産鑑定は、信頼できる。
  • 地価公示は、取引の実態を反映している。
  • ホテルなどの事業性不動産はリスクが高く、投資対象から外している。

これらの問いかけについての答えは、本書を読み進めていくうちに自分なりの理解が得られるようになっていますが、終わりの方にまとめて解説もされています。

やや極端に書かれていると感じることもあるのですが、行政を通じて地価が決められていく様子などはリアルで参考になりました。

不動産鑑定士という仕事は、昔は行政と不動産業界との調整係のような仕事だったようです。行政から仕事が発注されることが多いので、構造上立場が弱くなってしまい合理的な鑑定ができにくい仕組みになっていたようです。

最近は地価も市場で決まるようになってきましたが、やはり銀行や投資ファンドから仕事が発注されることがあるので、鑑定士の弱い立場は変わらないようです。また、不動産の価格がネットの競売などによって市場で決まることもあり、仕事自体が減少する傾向にあるようです。

合理的な価格が形成されにくかったのは、いずれにしても鑑定士の方々の良心の問題ではなく、仕組みの問題です。やはり合理的な鑑定を行うことと不動産鑑定士の利益が一致するような仕組みがつくられないと、根本的な問題は解決しません。

少し事情は違いますが、サブプライム問題も証券の価値を格付け機関がきちんと評価していれば、今のような危機的な状況にはならなかったことでしょう。不動産は単価が高いので、影響が大きくなってしまいます。

現在不動産市場はボロボロと言ってよい状態です。REITや不動産に関係する会社の株価も悲惨な価格になっています。不動産投資ファンドやマンションデベロパーなどはその構造上、ハイレバレッジのバランスシートになっているので、上昇を続けていた不動産市場の歯車が逆回転を始めると行くところまで行かないと止まりません。

会社が潰れさえしなければそろそろ買ってもよいと思われる水準まで株価が下がっていますが、現在ではまだまだ倒産リスクがかなり高い状態です。

いま不動産株を買うのであれば、さらに株価が下落して現在から何分の一にもなる可能性があること、不況が長引いての倒産やエクイティファイナンスによる大幅な株式の希薄化を覚悟して買う必要があります。無難に考えるとしたら、ある程度トレンドの転換が確認できてから買うのがよいのかもしれません。

本書の著者は、これからは不動産投資のチャンスであると書かれています。著者はキャピタルゲインよりインカムゲインを重視されています。チャンスと書かれているのは、不動産が下落すればするほど利回りが良くなるからです。

ただし、本当の不況になってしまうと、家賃が下がったり空き室率が増えたりして、利回りが良くならずに所有物件の価格が下落するという最悪の可能性も否定できません。

いずれにしろ価格が安いときには、あまりよい気分では投資はできないようです。よくない気分の時に投資をしたからといって損をしないとは限りませんが、よい気分で投資できる時に投資をすると、のちのち損をする可能性が高いのはたしかのようです。



investmentbooks at 23:19│Comments(28)TrackBack(0)clip!本--不動産投資 

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この記事へのコメント

1. Posted by flowrelax   2008年10月24日 13:15
bestbookさん、こんにちは。
 いつも興味深い記事ありがとうございます。
 不動産投資をいつ始めようか悩んでいるところですが、今回の記事は参考になりました。
 株価がさらに下がる可能性があること、不動産会社の倒産のリスクを十分考慮しなければならないこと、不動産を取得したとしてもこの景気で満室を維持できるのか?という疑問は、待っていても解消されるものではないかもしれません。
 しかし、個人的には今はもう少し市況を観察しながら不動産のことに関する勉強を続けたいと思っています。
 不動産投資の本で何か良い本があったらご紹介いただけると幸いです。
2. Posted by bestbook   2008年10月25日 01:02
flowrelaxさん、コメントありがとうございます。

不動産については自分も関心はあるのですが、今のところ不動産関連企業に株式投資をすることしか考えていません。これからしばらくは不動産銘柄に投資する10年に一度くらいの好機になるのではないかと考えています。

不動産投資でよかったと印象に残っている本は、『世界の不動産投資王が明かす お金持ちになれる「超」不動産投資のすすめ』がまず思い浮かびます。

不動産投資で成功する人は、やはり不動産が好きな人のようです。個人で不動産投資をする方の本も数多く出ていますが、ほとんどの方は不動産が好きで細かい点までこだわりがあることを本を読んで感じます。
3. Posted by flowrelax   2008年10月25日 18:14
bestbookさん、お返事ありがとうございました。

不動産関連企業への株式投資ですか。確かにそういう手もありますね。

本のご紹介ありがとうございました.”世界の不動産投資王が明かす お金持ちになれる「超」不動産投資のすすめ”読んでみたいと思います。

bestbookさんのブログはいつも勉強になるような内容が書いてあるのでとても助かります。

今回も貴重なコメントありがとうございました。
4. Posted by bestbook   2008年10月26日 01:28
現在の市場の状況で不動産関連企業に投資するのは、数年で10倍になる可能性もありますが、数週間で倒産して株価がゼロになるリスクもあります。

そのように考えると、現在不動産株に投資するのはコールオプションを買うことに近いといえるかもしれません。

レバレッジを効かせて不動産投資をするとマイナスの可能性もありますが、株式投資だと損失が最大限でも株式の購入価格に限定されるのが利点です。

ブログお褒めいただきありがとうございます。続ける励みになります。
5. Posted by spled   2008年12月28日 17:28
5 不動産投資も株式と実物に分かれます。
「地価はつくられている」を読みましたが、
実物投資への魅力が書かれています。
賃料収入、つまり現金収入は、これからの時代、
魅力があるように思います。
非常に、勉強になります。
6. Posted by bestbook   2008年12月29日 01:15
spledさん、コメントいただきありがとうございます。

たしかにこれからはお書きの通り、不動産への直接の投資が以前よりも魅力を増してきそうですね。

実質的な利回りが10%を超えるような物件がたくさん出てくると、金利も安いことですしチャンスかもしれません。
7. Posted by 不動産流通政策を!   2009年01月24日 20:12
まったく不動産が動いてない。
金融が死んでしまった。
経済の失速。
過去最悪の不況が到来。

不動産が動き出さない限り、不況は続いていく。
8. Posted by bestbook   2009年01月24日 23:31
不動産流通政策を!さん、コメントありがとうございます。

不動産が動き始めると、景気が回復しているサインと見なせるように思います。今のところ、動き出す気配はありませんが、早くそのような時が来て欲しいものです。
9. Posted by キャッシュの時代   2009年02月10日 21:06
4 現金があれば、ネット15%の物件も。
ラブホは25%のものまで出てきた。
現金主義の時代に戻ったようだ。
発生主義、実現主義と、契約・取引が複雑化した現代、社会のシステムも見直す時期に来たのかもしれない。
10. Posted by bestbook   2009年02月11日 22:56
キャッシュの時代さん、コメントありがとうございます。

お書きの通り、現在はキャッシュはキングですね。今回の金融危機と景気後退をきっかけに、社会のシステムが大きく変わる時期になっているのかもしれません。
11. Posted by 光二   2009年02月19日 07:06
5 今年の地価公示は見ものだと思います。
3月決算で倒産、失業が急増する時に、発表されるため、景気に与えるインパクトは大きいと思います。
しかし、この本を読んで思ったのですが、国は、下落させることは仕方がないとして、政策的に大きく下落させないのではないかと思います。
マインドが落ち込んで、不況が一段と酷くなることを恐れて。
実際の地価は、半値以下になっているにも関わらず。
12. Posted by bestbook   2009年02月20日 01:42
5 光二さん、コメントありがとうございます。

地価公示はマイナスらしいことがある程度分かっているとしても、実際に発表されるとお書きの通り強いインパクトがあるかもしれません。GDPと似ています。
国は工夫をしてくるかもしれませんが、取り繕ったとしても実際の価値が低下していれば、残念ながら、いつかはそのツケを払わないといけないことになりそうです。
13. Posted by kenbook   2009年02月27日 00:03
bestbookさん、こんにちは。

いつもブログを拝見して勉強させていただいています。

本書は不動産鑑定の負の側面を暴露する内容とはいえ、表現が過激で、週刊誌のように危機意識を煽る記述が目立ちます。

もっとしっかりした不動産関連の本を読みたいのですが、何かおすすめはありますでしょうか?

これからもブログの更新を楽しみにしております。
14. Posted by bestbook   2009年02月28日 01:37
kenbookさん、はじめまして。コメントいただき、ありがとうございます。

たしかにお書きの通り、本書はセンセーショナルな書き方が目立ったように思います。

最近のしっかりとした不動産関連の本であれば、手軽なものであれば本ブログでもすでに紹介した『失敗に学ぶ不動産の鉄則』です。やや本格的なものでは、まだ紹介はしていないのですが、『地価融解―不動産ファイナンスの光と影』です。どちらも日本経済新聞社から出ています。
15. Posted by kenbook   2009年03月01日 16:11
bestbookさん、こんにちは。

本のご紹介ありがとうございます。

早速チェックしてみます。

今後ともよろしくお願い致します。
16. Posted by kenbook   2009年03月01日 16:14
bestbookさん、たびたび失礼します。

FXについて知りたいのですが、

おすすめはございますか?

FXについてはまったく知識がないのですが・・。

もしございましたらご教示ください。
17. Posted by kenmook   2009年03月01日 17:01
kenbookさんへ

この本は新書で性格の違うもんだよ。
しっかりするとかしないとかの話じゃないよ。
18. Posted by bestbook   2009年03月02日 00:32
>kenbookさん

FXについては、自分で行ってないのであまりよい提言はできないかもしれませんが、『はじめての人のFX基礎知識&儲けのルール』がよいと思います。

FXはゼロサムであり、レバレッジをかけることも多く、単純そうですが決して易しくはないと思っています。


>kenmookさん

たしかに本によって性格がありますね。
本書は本書で面白く読めたので、紹介させてもらいました。お書きの通り、一冊の本ではすべての要素は満たせないようです。
19. Posted by kenbook   2009年03月02日 01:42
bestbookさん、ありがとうございます。

早速チェックしてみます。

ありがとうございました。
20. Posted by kenbook   2009年03月02日 21:24
kenmookさん

『「地価」はつくられている』は新書だからしっかりした内容でなくてもいい、とは考えにくいですね。
新書でも非常に素晴らしい本は多くあります。


bestbookさん、
『はじめての人のFX基礎知識&儲けのルール』を読みました。

非常に勉強になりました。

確かにFXはハイリスクなのですが、
通常のギャンブルと違い、あくまでもゼロサムなので、趣味程度で楽しむのにはいいかなと思っております。

今後も更新を楽しみにしています。

ありがとうございました。
21. Posted by bestbook   2009年03月02日 23:28
>kenbookさん

読まれるの早いですね。

お書きの通り、FXは趣味としては面白そうです。時間に余裕があったらやってみたいところです。

FXはゼロサムと書いてしまいましたが、厳密に考えると、手数料や買値と売値の差だけコストはかかります。通常のギャンブルよりは割がよいとは思いますが。
22. Posted by booker   2009年03月16日 22:52
kenbookさん

自分の好みで選べば良いじゃん。
暴露系、ハウツー系など。
言ってることがおかしいぜ!
大丈夫か?
23. Posted by 地価 光二   2009年03月21日 13:34
5 地価は上がってないと経済の成長はないと思う。
地価下落期=不況
こんな方程式が見えてくる。
確かに、地価上昇期は景気が良い。
極端に上昇している時はバブル。

本にもあるが、地価政策が最高の景気・経済対策だと思う。
24. Posted by bestbook   2009年03月21日 23:47
5 地価光二さん、コメントありがとうございます。

地価と景気は連動性が強いようですね。
不動産政策は景気にとっても、国民の生活にとってもポイントであると思います。

今後の政策を期待したいものです。
25. Posted by 不動産鑑定士です。   2009年03月22日 20:57
この本、業界内では超有名に。
まじめにやっている鑑定士もいるが、実際、言われた価格を書くケースは多い。
職業専門家としての倫理感はあるが、生活のためには仕方がない。
民間評価も公的チェックを取り入れる必要はある。
しかし、建築士もそうだが、情報化社会、やりにくい時代になったもんだ。

しかし、ファンド評価はやりすぎた。
バルクで10件以上が150万円で依頼が来る。
断ればゼロ。次の仕事もない。
希望100億円の価格を出さざるを得ない。
でも出せば150万円と、次回の仕事が確約される。
やらないわけには行かないだろう。
公的評価も少なくなり、ファンドも消滅。
サラリーマン鑑定士も年収500万円あれば良いほう。
暴露されても仕方がないが、鑑定士ではなく、元役人というのが始末が悪い。
カラクリが明確に分かってしまうではないか。

国家3大資格も淘汰の時代ってところか。
資格で食う時代は、終わったな・・・。
26. Posted by bestbook   2009年03月22日 22:36
不動産鑑定士さん、コメントありがとうございます。

本書にはお書きになられているような業界の内情が書かれていましたね。

時代の流れとして、不動産鑑定士に限らず資格があっても営業の力がないと生き残りが難しい時代になってきているようです。
27. Posted by 資格マニア   2009年05月30日 21:49
4 姉歯、不当鑑定・・・。
資格者も受難の時代。
不況は資格が人気になるが、規制緩和後の今、食えない難関資格が如何に多いことか。
資格に逃げようとすると、後で泣きを見ることも・・・。
28. Posted by bestbook   2009年05月31日 04:31
資格マニアさん、コメントありがとうございます。

資格については取得した後の営業やマーケティング力が勝負になるようですね。それらがあると、資格はやはり力になるとは思います。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
このブログについて
2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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