2008年11月01日

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『あなたが私を好きだった頃』5

井形 慶子著  2005年8月4日発行  1365円(税込)

あなたが私を好きだった頃
あなたが私を好きだった頃

連休なので、オフモードで昨日に引き続き恋愛本を紹介します。本書の著者は数日前に『女性の向上心』を本ブログで紹介した井形慶子さんです。『女性の向上心』がよかったので、過去に恋愛本を書かれていることを知り読んでみました。

本書は恋愛の指南書ではなく、著者と一人の男性をめぐる個人的な恋愛の物語です。テクニカルな視点では書かれていませんが、恋愛における女性の心理が繊細な筆致で描写されています。女性は共感できるでしょうし、男性は女性を理解する助けになるでしょう。



本書は恋のはじまりから、愛情の成熟の過程、別れから再会の予感に至るまで、揺れ動く恋愛中の女性の心理が美しく描かれています。おそらく女性が真面目に恋愛をしているときは、本書の著者のようには表現はできないかもしれませんが、心情的には本書にあるような気持ちがあることでしょう。

本書からは女性の愛情の繊細さや美しさの情感が伝わってきますが、繊細さや美しさが深いほど、男性はある種の怖さを感じてしまうかも知れません。自分の内にある男性性が、繊細で美しい女性性を壊してしまうのではないかという関係性の危うさに対する怖れです。

本書はすべてのページに女性性が溢れています。おそらく女性性の表現が本書のテーマなのでそのことは当然なのですが、本書で描かれている彼も女性の世界から見た男性です。

女性の世界から見た男性は異質な存在なので、本質的に理解する対象ではありません。これは男性の世界から見た女性についても言えます。男女はお互いの世界から眺めるとそれぞれ異質な存在同士であり、そこに恋愛の喜びと悲しみがあります。

本書でも女性である著者が、何とか彼を理解しようとされていますが、あくまで女性の視点から理解しようとされています。男女間の付き合いにおいては、自分の性の視点からのみ異性を理解しようとするのは自然なことです。

しかしながら、そのように自然な状態における理解においては、目に見えない壁が存在するため、いつまで経ってもお互いに理解し合うのは困難です。

その壁を越えようとしたら、女性であれば女性の見方から男性を理解するのではなく、男性の視点を理解する必要があります。繰り返しますが、女性の視点からのみ男性を理解するのではなく、男性の視点そのものの理解が必要です。

一般的にこれは難しいことです。このことと比べると、自分に馴染んだ世界から相手を理解しようとすることはそんなには難しくありません。しかしながら、これでは本当に相手を理解することはできないでしょう。

自分の馴染んだ世界からいったん抜け出して相手の世界そのものをまるごと理解して受け入れようとするのは、心理的にも非常な困難があります。この困難なことをお互いができるようになったとき、あるいはできなくとも努力しようとするとき、男女は本当の意味において愛し合えているといえるのではないでしょうか。



investmentbooks at 23:51│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--男女関係 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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