2008年11月07日
『スティーブ・ジョブズの流儀』
2008年10月22日発行 1890円(税込)
アップルの創業者であり、アップルコンピュータの現CEOであるスティーブ・ジョブズについての本です。評価の幅が広いジョブズの人となりを、なるべく偏りがないように解説しつつ、モノ作り、マーケティング、経営などについて解説されています。
全部で8つの章から成りますが、章末にその章から得られたビジネスでのヒントが「スティーブに学ぶ教訓」として簡潔にまとめられています。この部分だけでも要点はつかめますが、やはり本文も読む方が要点の内容もよく理解できます。
最初に買ったパソコンがマックだったので、本書に書かれている当時のことも興味深く読めました。最初のパソコン以後はウインドウズにしましたが、たしか4〜5年はPerformaという機種を使っていました。よくフリーズしたのが懐かしく思い出されます。
ジョブズはそのカリスマ的なキャラクターとともに数々の逸話があります。否定的なことがセンセーショナルに書かれることもありますが、本書ではそのようなタッチはなく、iMacやiPodなどの大ヒットがなぜ売れたか、その理由がジョブズの仕事への取り組みと関連づけて分析されています。
やはり秘訣は細部へのこだわりのようです。本書のいたる所でジョブズのこだわりぶりが尋常ではない様子が具体的に述べられています。細部へのこだわりは商品についてはもちろんのこと、マーケティングについても当てはまるようです。
本書を読んで感じたのは、こだわりの強さが今の時代ほど力を持っている時代はないということです。昔はこだわりの良品を作ったとしても、大量生産もできず、販売できる範囲も限定されていました。
ところが現代では、いくらでも大量生産ができ、世界中に売りさばくことができます。iPodが世界中で利用されていることからもそれは明らかです。
こだわりを追求できる人にとっては、よい時代になったといえるでしょう。昔であれば、地域のそこそこ成功した職人として人生を終えなければならなかったかもしれませんが、現在では莫大な富を獲得するチャンスがあります。
ただし、こだわりがあればよいといっても、競争が世界的なだけに、並のこだわりでは成功はおぼつかないようです。こだわるのであれば、本書にあるように徹底的にこだわる必要があります。起業するのであれば、心の底から好きなことを追求するようにすすめられるのはそのためでしょう。
また、こだわるといっても世界的な成功に結びつけるのであれば、組織全体でこだわる必要があるようです。個人でできることには限界があるので、組織全体で一丸となって取りかからないといけませんが、そのためには圧倒的なこだわりを持ったリーダーが必要です。
iPodの成功は、個人的なこだわりをアップルという会社全体のこだわりにジョブズが変換できたことによるのでしょう。
日本にはこだわりのモノ作りの伝統はあります。実際、本書でもアップルが日本の技術を日本に学びに来たエピソードが出てきます。しかしながら、日本からはiPodは生まれませんでした。
実際にソニーのmp3プレーヤーを使ってみて思うのですが、性能的にはiPodよりも上のように思わなくもありません。しかしながら、マーケティング的には圧倒的に負けています。
この違いはやはり経営者のカリスマ性の違いも関係していると思われます。マーケティングにおいて商品の存在感は非常に重要ですが、その存在感は会社や経営者によってもたらされます。
本書でもソニーについてはいくつかのページで言及されており、ソニーは現在も海外で会社のブランド力があることがわかります。ウォークマンの大ヒットなどによって作られた存在感が残っているのでしょう。しかしながら、現在は経営者の存在感はないようです。
人物としての存在感を出すということは日本人には不得意な分野なのかも知れません。その不得意な点を商品の品質のよさでカバーしているのでしょうが、マーケティング的に莫大な損をしている可能性があるかもしれません。









