2008年11月09日
『セックス格差社会』
門倉 貴史著 2008年11月24日発行 700円(税込)
![セックス格差社会 恋愛貧者 結婚難民はなぜ増えるのか? [宝島社新書]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/41E6cHs0mcL._SL160_.jpg)
セックス格差社会 恋愛貧者 結婚難民はなぜ増えるのか? [宝島社新書]
門倉貴史氏の新刊です。今回のテーマは、恋愛、セックス、結婚、家族についてであり、いつものごとく豊富なデータとその分析や予測に基づいて、現代の日本社会について経済的に分析されています。
現在の日本において恋愛に関係して話題になっている多くのことについて語られており、本書だけでどのような現象が生じているかが把握できると思います。各章のタイトルは以下の通りです。
- 「出会い」「恋愛」「結婚」と所得格差
- 高収入ホワイトカラーの性愛事情
- 「できちゃった婚」と貧困スパイラル
- 「中年童貞」「負け犬」のエコノミクス
- 人口減少社会とセックス格差
最近の日本社会においては、ワーキングプア、非正規雇用者などの増大により低所得層の人口が増え、そのために非婚化・晩婚化が生じているということはよく聞かれますが、本書の特徴はさらにセックスにおいても格差が生じているということまで突っ込んで書かれていることです。
男女関係における男性のもともとの役割が、経済的資源を女性に提供することにあることを考えると、経済力のない男性に女性がセックスを提供してくれないのは不思議なことではありません。
恋愛はもともとエゴイスティックな関係なので、それなりの価値のものをこちらが提供しないと、相手からもそれなりの価値のものは返ってきません。ビジネスに似ているといえば似ています。
本書では、経済的状況が男女関係に与える影響について考察されていますが、さらに男女関係の変化がいかなる経済的現象を生じ、そして経済的効果を及ぼすかについても具体的に考察されています。結婚情報サービス、化粧品市場、美容整形などです。
また、日本社会におけるセックスの減少についても書かれています。日本がセックスレス大国であるというのは有名な話です。本書に書かれているように、所得が低いとセックスの機会は減りますが、所得が多いとパートナーがいたとしてもセックスの回数は減少するようです。高収入の人も忙しくてセックスどころではありません。
非婚化・晩婚化が進んで、さらにはセックスレスまで加わると、必然的に少子化が進行します。少子化を解決するのであれば、所得問題を解決する必要があるというのが本書の一つの結論です。
本書の記述による問題点は明らかなのですが、それをどのようにして解決するかということは、難しい問題です。個人的には、問題の根本にあるのは高齢化であると思っています。
寿命が延びると、自分が生存するための総コストは上昇しますが、稼ぎはそれほど増えるわけではありません。平均的に見ると、一人一人が高コストな存在になっており、結婚するとさらにコストが倍になります。そしてさらに現代は、子育ても高コストになっています。
現在の日本の状況は、子供に投資すべきお金が高齢者にまわっているということになるのかもしれません。一人一人が利益追求の結果が日本全体にとってはよくないという一例です。
もしも人間の寿命が50歳くらいであれば、現在ある多くの問題は存在しないことでしょう。しかしながら、寿命が短くなることはありません。
一つの解決としては、本書にも書かれているように、移民の形で「若さ」を輸入するくらいです。また、子供を持つことを促進するとしたら、革新的といえるような制度改革をする必要があるでしょう。例えば、子供がいれば一人につき年100万円を補助するといったようなことです。現在の扶養控除程度では焼け石に水です。
ただし人が増えるのが国にとってよいかどうかは、結局のところ、一人一人の生涯を通じた経済的価値がプラスかマイナスかによります。高齢化が進行して一人一人のトータルの経済的価値がマイナスであれば、子供を産むことも本質的な解決にはなりません。子供も時間が経てば高齢者です。
一人一人の経済的価値がマイナスだと仮定して、子供の数を増やすことが本質的な解決にならないとしても、子供の数を増やすことは一時的に平均年齢を低くして、とりあえずの国における人々全体としての活力を一時的高める効果はあるでしょう。その間になんらかの技術革新があるかもしれません。
寿命が短くすることもできず、少子化を改善するのも根本的な解決にならないのであれば、やはり本質的な解決方法としては、高齢者の価値を高めるしかありません。アンチエイジングは時代が要請しているようですが、いまのところ革新的な技術は出ていないと思います。
あるいは他に考えられる解決策としては、ロボットなどによって劇的に生産性を高めるくらいでしょうか。いずれにしても、高齢化社会を皆がハッピーになる形で存続させるつもりならば、何らかの技術革新は必須です。
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この記事へのコメント
おもしろそうな本ですね。
セックスレスと言えば、今日、北村邦夫医師が「男女の生活と意識に関する調査」を発表したニュースを見ました。中にセックスレスの経年推移がありました。年々セックスレスが増えているみたいです。
時間やお金やエネルギーに余裕がないと、他の優先すべきことに、それらが充当されますから、「解決」はむずかしそうですね。「解決」の必要があるかどうかも、よくわからないですけども。
本書は直接的な実用性はあまりないのですが、分析的な点では面白い本です。
ニュース見てみました。厚生労働省もセックスレスに興味を持っているようですね。日本にセックスレスが多いのは、やはり残業などによる過労があるのではないかと思います。外国に比べると「ムードを盛り上げる」環境に乏しいこともあるかもしれません。
お書きの通り、現代社会はセックス以外にエネルギーが向かう対象が多過ぎます。大昔のヒトは、食料を取って、セックスをして、睡眠を取ることで日々が過ぎていたと思います。三大欲求を満たすことだけしか頭になかったはずです。
記事をご評価いただきありがとうございます。セックスレスは若い人のエネルギーがお金を通じて高齢者に吸い取られていることも一つの原因となっていると思います。








