2008年11月15日
『女はなぜキャバクラ嬢になりたいのか?』
三浦 展/柳内 圭雄著 2008年11月20日発行 777円(税込)

女はなぜキャバクラ嬢になりたいのか? (光文社新書 376)
ベストセラー『下流社会』三浦展氏が共著者の一人になっている本です。本書ではキャバクラ嬢を軸に、社会学的なアンケート調査とインタビュー調査を行った結果とその分析について論じられています。読み物として面白いというより、調査結果とその分析が興味深い内容の本です。
キャバクラ嬢が世相の切り口として選ばれたのは、男性のみならず、女性も仕事としてキャバクラ嬢に興味を持っていることがアンケート調査から判明したためのようです。
本書でアンケート調査の主な対象になっているのは、「ジェネレーションZ」(Z世代)と名付けられた15〜22歳の若者であり、ケータイのメルマガを通じて調査が行われたようです。そのため結果はややバイアスがかかっていることも考えられますが、結果は興味深いものがあったようです。
調査の結果では、「Z世代女子がなりたい職業、やってみたい仕事」の第9位にキャバクラ嬢、ホステスがランクインされていました。複数回答可であり、全体の22.3%に当たります。5人に1人と考えるとちょっと驚きですが、「やってみたい仕事」なので、気軽に答えているというのもあるのでしょう。また、テレビドラマなどの影響もあるようです。
ちなみに第1位は歌手、ミュージシャン、第2位は音楽関係、第3位は雑貨屋だそうです。
本書はさまざまな角度からキャバクラ嬢になりたい女性の性質について分析されており、その調査結果は経済的な観点から世相を読み解く上で興味深いと思います。ちなみに専業キャバクラ嬢の月収は45万円。兼業キャバクラ嬢は29.1万円、学生キャバクラ嬢は13.9万円だそうです。
本書で収入について調査対象となった専業キャバクラ嬢の平均年齢が21.1歳であることを考えると、他の普通の収入では得られないくらいの高収入です。もともと経済的に満たされていないということがあるようですが、キャバクラで働く目的は、学費や貯金などのためと、経済的にしっかりしている面もあるようです。
最後にキャバクラ嬢になりたい女子が増えている理由が分析されていますが、結論としては、バブル崩壊後の日本社会の構造変化によるものと推測されています。本書の以下の提案がおそらく本書で著者が最も言いたいことです。
「もし、若い女性がキャバクラ嬢になりたいなんて嘆かわしい、どうにかせねばならぬ、解決策はないのかと言う人がいらしたら、私としては道徳教育の強化などではなく、男女ともに正社員を増やすことが効果的であると申し上げておく。」
キャバクラ嬢という仕事は、女性性を男性に売ってお金を得る仕事です。日本社会では経済全体のパイがあまり拡大しない状態が続いており、高齢者がその拡大しないパイの取り分を増やし続けているため、若い世代のパイは縮小し続けています。
全体のパイが少なくなると、社会的に弱い人から配分が少なくなります。若い人に非正規雇用者が増えているのはそのためです。配分される資源が少なくなっているという点においては、文明の発達以前における長年のヒトの社会の状態に戻っています。
現在でも発展途上国の多くの国々ではそのような状態のままです。女性が資源の配分を直接得られるようになったのは、豊かになった最近の先進国においてであり、そのようなことはヒトの長年の歴史を考えると例外的です。
おそらく大昔は資源が不足しているのが当たり前であったことでしょう。資源が不足している状態でヒトは長年過ごして進化を続けてきたはずです。
そのような状態においては、女性は男性に女性性を提示することにより男性からなるべく多くの資源を手に入れることが生存に不可欠だったはずです。そのため、そのような振る舞いは男女双方にとってそれぞれに心地よさがあったことでしょう。
経済的資源のパイの取り分が少なくなった現代において、キャバクラで働きたがる女性が少なくないのは、ヒトの長い進化の歴史を考えると不思議ではありません。特殊な形ではありますが、女性が長年にわたって続けてきたことのエッセンスを再び行っているだけだからです。








