2008年11月17日

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『ゴーン道場』4

カルロス・ゴーン著  2008年11月30日発行  735円(税込)

ゴーン道場 (朝日新書 143)
ゴーン道場 (朝日新書 143)

 

朝日新聞の夕刊「be」に一年にわたって連載されていたコラムが新書になったものです。カルロス・ゴーンさんにビジネスについてや、職場や家庭での人間関係について質問をし、それについてゴーンさんが答えるという内容です。

字も大きくページ数も少なめであり、内容も平易な日本語で書かれているので、肩肘を張らずに読むことができます。夕刊は女性を意識して紙面が作られているせいか、女性が興味を持ちそうな質問が多いように感じました。



女性が興味を持ちそうな質問としては、たとえば以下のような問いがあります。

  • 女性が成功するか否かは何で決まる?
  • 女性社員の重要性について教えて下さい
  • 夫を仕事のプレッシャーから解放してあげるには?

男女関わらず、家庭を持っている人に役立ちそうな質問もあります。

  • 娘の異性に対する選択眼をどう育てる?
  • 子どもにお金の価値を自然に学ばせる方法とは?
  • よい夫婦関係を持続する秘けつは?

もともとは仕事がテーマなので、職場についての質問が多いのですが、人間関係を重視されているゴーンさんだけあり、対人関係についての質問が目立ちます。

  • 女性の部下の心を開くには?
  • 中間管理職が、上司も部下もうまくコントロールするには?
  • 優秀な人材をどう選び、どう育てる?

全体的な印象として、ゴーンさんの答えは正統的な直球勝負という印象を受けました。全体的に非常に明瞭です。

本書全体から感じるのは、メッセージのわかりやすさです。ゴーンさんは、おそらく実際の仕事でもかなりわかりやすい形で社員にメッセージを伝えているのでしょう。

本書を読むと、リーダーの役割はメッセージをみなにわかるような形で伝えることであるということがわかります。会社にとってのメッセージの意義と意味がわかりやすければ、社員がそれらを共有でき、さらにはやる気を出して、全体のパワーが増幅されます。

リーダーの役割は、磁石のようなものです。磁石があると全体を一方向に整えることができます。その方向が正しい方向であるということが大前提ですが、全体が同じ方向を向くと、加算された全体のベクトルが大きくなります。

現在の日本に欠けているのは、そのようなリーダーです。小泉政権の是非については賛否があると思いますが、全体の方向が整列された傾向に向かっていたので、国に活気はあったように思います。

最近、定額給付金についての議論が盛んです。全体的にあまり評判が芳しくないと思うのですが、一番の問題は日本にとっての長期的な意義が今一つ伝わってこないからです。意義があればわかりやすいように説明するべきですし、わかりやすく説明できるような意義がなければ、最初からしないほうがよいと思います。

おそらく多くの国民は、どのような意味や意義があるのかわからずにお金をもらって一時的に嬉しいよりも、少々つらい思いをしてもよいので、長期的に日本がよくなりそうな政策を望んでいるのではないでしょうか。

高度経済成長の時代は、いまよりも全体の生活水準ははるかに低かったはずですが、日々よい方向に成長しているという実感があり、日本全体に活気がありました。同じようなことは現在ではちょっと難しいと思いますが、当時の所得倍増計画というメッセージはわかりやすい明瞭なメッセージでした。

人間が活き活きするのは、現在多くを持っていることではなく、将来多くを持てる期待を持って頑張っているときです。定額給付金を配るのは、人間が活き活きする方向と逆の流れを作っているように思います。



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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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