2008年11月19日
『2時間でわかる外国為替』
小口 幸信著 2008年11月30日発行 777円(税込)
2時間でわかる外国為替 FX投資の前に読め (朝日新書 144)
著者は外国為替について過去に何冊か本を書かれており、それらの本が面白かったので、今回の本も読んでみました。
本書はタイトルからは入門書のように思えますが、ある程度詳しい話も書かれているのでFX投資を始める前だけでなく、すでに始めている方にも役に立つと思います。また、FX投資をしていない方でも、グローバル化された世界経済について通貨を通じて理解する助けになると思います。
著者は長年ディーラーをされていた方なので、豊富な現場感覚に裏打ちされた実践的な話を本書で読むことができます。たとえば、以下のような話は興味深かいと思います。
「私の経験では、収益力のあるディーラーはほぼ例外なく論理的ではありません。寡黙か、饒舌なら支離滅裂のことがほとんどです。一方、収益力のないディーラーほど話が論理的で、しかも明快でわかりやすい。」
やはり相場は理屈だけでは難しいようです。むしろ理屈に反するか、あるいはそれを超越しないといけないのかもしれません。
ただし、相場を論理的に説明する存在も必要だとは思います。画を描くことのできない美術評論家の方も、評論自体が独自の世界を築いて存在意義がある場合があるのと同じです。
本書は3部に分かれています。
- 為替の基本を知る
- プロの「技」を知る
- 投資のコツを知る
実践的なことに力点が置かれているのがわかりますが、基本的な知識についてもメリハリが効いている解説があります。先物の裁定取引など、すぐにはわかりにくいところほどより丁寧に説明されています。
本書では、「「投機の為替」を誘発する八つの変動要因」が以下のように挙げられています。
- 取引のフロー
- 経済指標
- 金利
- 安全性
- 経済政策
- 政治
- ポジションの傾き
- チャートポイント
どのようなときに相場が動くかということですが、例のごとく恋愛で考えてみましょう。相場が動くことを男性に対する女性の気持ちが動くことで考えます。
1.取引のフロー
どのような方向に全体の流れがあるかということです。他の女性がモテている男性は、より魅力的になり女性の気持ちが動きやすくなります。モテがモテを誘発します。
2.経済指標
年収などや資産などです。一般的にそれ以外の条件が同じであると、年収が上がるとモテやすくなります。経済指標と同じで、明らかになる前に織り込まれていることも多いのですが。
3.金利
金利が上昇した、あるいはしそうな通貨は買われやすくなります。男女関係における金利は、男性が女性にどれくらい定期的に奢ってくれるかです。これも奢ってくれそうな期待で男性がモテやすくなります。
4.安全性
男性の安全性にはいろいろな意味がありますが、わかりやすいところでは、健康、真面目さなどがあります。女性にとってのリスクが少なくなり、男性の価値が上がります。
5.経済政策
男性がお金をどのように稼ぐか、そして稼いだお金をどのように使ったり投資したりするかです。男性の経済政策が効率的だと、女性は鋭く観察しています。ギャンブルにはまっている男性はあまり好まれません。
6.政治
男性がどのように対人関係を築いたり維持したりするかです。一般的に友人が多い男性は女性から好まれる傾向にあります。
7.ポジションの傾き
これはやや難しい概念ですが、相場で他の参加者がどのようなポジションを取っているかによって決まります。多くの人が同じポジションを取っている場合は、かえってその逆方向に動きやすくなります。多くの女性からモテている男性に対しては、かえって自分から身を引いてしまう女性もいるかもしれません。
8.チャートポイント
ファンダメンタルではなく、過去の値動きそのものから将来の流れを予測することです。男性の価値に関係なく、女性が自分のこころの動きを重視して判断することに相当します。たとえば、気持ちが盛り上がりつつある男性については、より盛り上がりやすくなります。これは上昇トレンドを意識しているからです。
最後に相場で「「どうしたら上手くやれるか」の16ヵ条」があります。これも一つ一つ男女関係に応用できますが、ちょっと長くなりすぎるのでここでは省略します。
相場と男女関係は、不確定なものを確定させるという点で共通点があるため、一方を他方から考えると参考になるようです。