2008年12月05日
『千年投資の公理』
パット・ドーシー著 鈴木 一之監訳 井田 京子訳
2009年1月3日発行 2100円(税込)
千年投資の公理
著者:パット・ドーシー
販売元:パンローリング
発売日:2008-12-05
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本書は原書も今年出ており、原書でも新しい本です。原書のタイトルは『The Little Book That Builds Wealth: The Knock-Out Formula for Finding Great Investments』であり、日本語訳のタイトルの「千年投資」のニュアンスはありません。「Little Book」とあるように、本書は簡潔に書かれています。
本書はパンローリング社から出ています。パンローリング社は投資の専門書を数多く翻訳出版しており、以前は専門的な内容のものが多かったのですが、最近は本書のように入門的な書籍にも力を入れているようです。
本書の著者は、アメリカの投資リサーチ会社Morningstar社でリサーチの仕事をされている方です。本書は、どのような視点から投資企業を選び出すかについて書かれている本です。
本書での銘柄選択におけるキーワードは「堀」です。経済的な「堀」があるため、他社が事業に参入できないような企業を選択するべきであると書かれています。
本書で例に挙げられている数多くの企業は、アメリカの企業なので馴染みがないものが多いのですが、考え方は日本の企業でも同じなので、十分参考になります。
「堀」は優位性をもたらしますが、以下のようなものだけでは十分ではないようです。ここは落とし穴に陥りやすいところです。
- 優れた製品
- 大きな規模
- 効率経営
- 優れた経営陣
これらのものはあれば望ましいのですが、必ずしも長期的な優位性を保証するものではありません。しかしながら、これらを銘柄選択の基準にしている方も少なくないようです。
著者によると、構造的な優位性をもたらすものは以下の四つのいずれかです。
- 無形資産
- 顧客の乗り換えコスト
- ネットワーク構造
- コストの優位性
これらは、前記の四つと比べると、長期的な優位性をもたらすそうです。前記の四つはわかりやすいものでしたが、これら四つは一見しただけではわかりません。
投資においては、皆にわかりやすいものはあまり利益をもたらしませんが、わかりにくいものは利益の源泉となりやすいのかもしれません。問題は、いかにしてこれらわかりにくいものを見つけるかですが、それが本書のテーマです。
本書はPER、PBR、PSR、ROEなどの基本的な指標についても解説されていますが、あくまで紹介程度であり、どちらかというと銘柄選択における定性的な観点からの本です。定量的な記述は少ないのですが、その重要性については繰り返し述べられています。
株式投資の本は、企業の事業のあり方についても学べる本があります。とくに成長株についての本に多いのですが、本書にはそのような要素もあると思います。